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第8話 ノックとおかえりなさいませにゃ。

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 GWに入る前に新たな部員、というかマネージャーが2人入った。

 一人は見習いでヤジとノッカー担当だと言い張っているけど。

 早速今日の練習から参加する事になった。

 「オラオラー、テメーラ腰落とせー」

 ちなみに今のは恵の声である。
 でも自己紹介で言うだけあってノックは上手かった。

 正面の打球から少し動かないと取れない打球、これギリギリ取れないけどグラブに当てたら凄いという打球まで。

 それなのに何故だか俺にだけ……

 難しい打球しか来ない。
 それもかなり強い打球。

 完全に後ろに抜ける打球は少ないが、あちこち走らされてしんどい。
 鬼か。鬼コーチなのか。恨みでもあるのか。

 「あ、ぁ。す、すまん。」
 なんてしょぼくれちゃったら強く言えないじゃないか。
 良かれと思ってやってる事に文句はないさ。
 ないけれども、なぜ俺だけ……
 このまま練習していたら守備○とか鉄壁守備とか付くのか?

 次の球が俺の顔めがけて飛んでくる。
 あ、やべぇと思った時には構えたグラブに収まったが。
 勢いを殺し切れずそのまま俺の鼻に当たる。

 「うぉっ」
 「あ……」
 
 赤いモノがグローブに付着している。
 鼻血……

 止血のために俺は一旦下がる。
 その様子を見た恵は放心状態だった。

 「あー気にするなよ。こんなん練習してたらよくある事だ。」
 鼻を押さえているため声がくぐもる。
 その後どうにか持ち直しノックを続けたが、どこか元気がなくなっていた。
 その証拠に最初のヤジは飛ばなくなっていた。


 ノックが終わり部員達は引き上げてくる。

 止血のため引いていた俺はそのまま終了となった。
 いつまでも上の空の種田の元に行き……

 「らしくねぇな。元気ハツラツ、きついヤジが取り柄だろ。監督だってたまにやるんだから気にするなって。」
 そう言いながら「ポンッ」と背中を叩くと。

 「ひゃんっ」

 という可愛い声が聞こえた。
 今のは種田からか……?

 「今の……」
 「わ、わー。な、なんでもない。なんでもないっつってんの。ぶっコロすぞ。」

 顔が赤いのは照れてるのか?
 「そのくらいのほうがお前らしい。」

 「な、なんだよ。お前だけ地獄の千本ノックしてやっからな。」

 「あんなこえー打球ばっか千本は勘弁だ。」



 初日はこうして終わった。
 最初にしては上々ではないだろうか。
 正直監督の負担が減れば、やれる事が増える。
 部員が多いわけではないけど、分担して他の練習も出来る。

 少しずつかもしれないけど、チームの底上げが期待出来ると感じていた。


 火・木は練習がない。
 勉強もしろという学校からのメッセージらしい。
 曜日の指定はないのだが、各部活平日は3日までと決まっている。
 一時期の練習過多で倒れてしまったり最悪命を落としたりという、全国における過去の事例から取り決められていた。
 
 
 GW前最後の木曜日、練習がないため図書室で勉強をし、帰りに本屋へ寄って今日発売のラノベを購入するため二つ隣の駅まで出かけた。

 一度家に帰ってからだとめんどいので学生服のまま。
 電車通勤ではないため、都度切符を購入。

 10分で2駅先へ到着した。

 駅から歩いて数分のところに目的の本屋はある。
 ラノベコーナーへ行くと目的の本はあっさり見つかった。
 「紺色ブルマーは滅びない・3」「妹がブルマーに穿き替えたら男子全員にモテて困ってます・2」「ヤンキーがデレてもヤンデレって言うんです」
 以上3冊を購入。
 3つ目のはなんか無意識に……
 脳にあの女の事が浮かんだからではない。


 少し読んでから帰ろうと思い喫茶店でも入ろうと辺りを見渡した。

 すると見慣れない怪しいお店を発見。
 「ねこみみメイド喫茶・アニスミア」

 へーこんな片田舎にそんな店が出来たのか、せっかくだし行ってみるか。
 モモタロウへのネタのためにも。

 こういう店初めてだから緊張するんだよ。


 「お帰りなさいませにゃ……ごしゅっごしゅっ……しゅぽー」

 店に入るなり現れた店員は、ねこみみにねこしっぽにねこのにくきゅうを着けたメイド服を着た種田恵だった。



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