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第1章 MAXコーヒーが繋いだ奇跡

第13話 てんで性悪キューピッド真理恵たん(電話時の真理恵side)

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 家に帰ってきた私はあの時驚愕したのを覚えている。

 まこPさんが嬉しそうに差し出した名刺…

 忘れるはずがない。

 だってその写真は…

 私が撮影したものだから。

 もう6年も前の事。

 まだ私も独身だった頃。

 旦那がまだ彼氏だった頃。

 彼女が、まだ心から楽しんでコスして笑ってはしゃいで

 一緒に活動していた頃。

☆☆☆
 
 彼女は高校の先輩だ。

 一つ年上の先輩だ。

 私はまだギリ20代だ。ここ大事。テストには出ないが覚えておかないとち○こもいじゃうゾ(あやねる風に)

 高校の頃、私達は演劇部と裁縫部を掛け持ちしていた。

 そして共通の趣味、コスプレと好きな声優の話で盛り上がっていた。

 演劇で使う衣装を裁縫部で作り、コスプレで使う衣装や小物を裁縫部で培った技術と知識で製作していた。

 旦那と出会ったのも演劇部でだった。

 部員達でタイタニックごっことかやっていて、その時事故で本来両手で身体を支えるところを、旦那が私の両胸を掴んで、あまつさえちょこっと揉んできやがったのが出逢いだ。

 そりゃぁ両手で往復ビンタをしまくったさ。頬がタコみたいになるまで何往復も。
   他の部員達も混ざって蹴ったりしてたっけ。

 でもそれがきっかけで仲良くなり、3人で行動する事が増えた。

 ちなみに旦那が3年、友紀さんが2年、私が1年だった。ついでに言うと旦那は部長でもある。

 って私の惚気話は別に良い。スピンオフとかあったら語られるんじゃない?

 
 その年の冬にコミケでコスプレデビューしたのがきっかけで、旦那が卒業した後も3人でつるむ事が多かった。

 あのマ○チの写真を撮ったのは友紀さんが23歳、私が22歳の時のスタジオ撮影での時のものだ。

 旦那の仕事先の付き合いで、柳橋にある某ウィッグ屋がやっているスタジオを借りた時のものだ。

 友紀さんがマ○チ、私があかりでいったん着替えてレミィ、旦那が浩之ちゃん。

 他にも友紀さんが翠○石、私が蒼○石、旦那が雛苺で薔薇乙女合わせとかもした。

   あの頃は楽しかった。私達がカップルで友紀さんは一人だというのに嫌な顔せず、三人で一セット、誰が欠けてもいけないくらい仲良しだった。

 
 その柳橋での撮影の翌年私達は結婚した。

 友紀さんも結婚式・披露宴と3次会と最後自宅までの送迎をしてくれた。

 友紀さんはお酒に弱く披露宴では少ししか飲んでないし、3次会はソフトドリンクしか飲んでなかった。飲酒運転になっちゃうからね、タクシーだよ?後で払うと言ってるのに頑なに受け取らないの。

   幸せになる門出の日なんだから奢られてなさいと。
   両親に頼まれていたらしい、バカップルだからこうなった時面倒見てやって欲しいと。

 そんな結婚式の日の話。
   3次会まで付き合った中で友紀さんを紹介して欲しいという男が現れた。

 いつかのイベントで知り合い、何度か一緒に合わせをしたことがあったので、友人の多くなかった私達は友人枠として招待していた。

 友紀さんも彼氏欲しいとか、結婚良いな~とか言っていたので、良い人いたら紹介しますと言った事があった。事実ブーケの一つは友紀さんが受け取っている。

 
 だから深く考えずにそいつを友紀さんに紹介してしまった。

 同じコスをする間柄だった故に、お互い警戒心が薄れていたんだと今なら言える。
 本当に、それが失敗だった。


 数ヶ月後再び会った友紀さんは別人のように変わっていた。

 旦那に対しては大丈夫だったけど、知らない男を見ると恐怖で震え、身体がちょっと触れると吐いてしまう。

 過呼吸を起こしたり、失神して倒れてしまう事もあった。

 どうにかして聞けた事は、あの時紹介した男が元凶だという事。

 貞操だけは守れたものの、乱暴されたのだと。

 
 それから克服出来るよう協力を申し出たが、尽くを断られた。

 そしてついには直接会う事も拒否された。

 私のせいではないと言われたけど、私のせいだと言われた方が救いだった。

 何も出来ないのがもどかしいし悔しいし悲しい。


 どうにかしたい気だけが逸り、旦那に相談するもしばらくはそっとしてやるべきだと言われた。

 そんな時偶然あいつを見つけた。

 もちろん問い詰めた。ぶん殴った。あそこも蹴った。涙目になっていたがしらん。

 監き…はしてないけど、とある場所に呼び出したあいつはついには白状したのだ。

 そして馬鹿にも証拠を残していた。

 デジカメで撮影した写真と動画…

   申し訳ないとは思っていたが、はっきりさせるためには確認しないわけにはいかなかった。


   
 確かに入れてはないけど…

 処女である友紀さんが男性不信と恐怖に陥るには充分過ぎた。

 念のためコピーを取り警察に駆け込んだ。

 でも本人ではないし、例え本人であっても、裁判とかで嫌な思いをするのは女性側だと言われるとそれ以上は踏み出せなかった。

 それでも何とかしなくちゃと思い、あいつの会社(前に会社の名刺を貰っている。)に告発しようとした。

 無謀だとは思いつつも、コスプレキャバクラで働いていた時に、あいつと同じ会社の結構偉い人が客で来ていたことを思い出した。

 名刺を確認すると同じ会社の同じ事務所の人間だった。

 もうお店は辞めているが、店長(女)にボカシつつ事情を説明し、その上司が客で来たら連絡を貰えるように頼む事に成功した。

 あとは簡単、上司が客で来た時にだけ臨時出勤という形をとり、ヘルプに入りあいつの事を暴露した。

 動画は流石に見せなかったが写真を見せると、それまで楽しく酔っていた上司は怒りで素面に戻っていた。
   本日の飲食代は自分が持つからどうにかしてもらえないかと頼んだ。
   飲食代の件は断られたが、問い詰めると言ってくれた。

☆☆☆ 

 その後、あいつが懲戒解雇になったのを上司から報告を受けた。

 少し気が楽になった。でもこれは私の自己満足。

 友紀さんが癒される事はない。

 あれから年月だけが過ぎた。

 それだけが原因とはいえないけれど、私も不安定になった。

 そのせいか中々子供が出来ない。旦那は気にするな、そういうのは天からの授かりものだ、お前のせいじゃないと言ってくれている。

 
 そして今日。

 まこPさんが友紀さんの名刺を見せてきた。

 昨年も貰ったと言っていた。

 嬉しくて泣きだしそうだった。

 複雑な表情になっていただろう。旦那がそっと方に手を置いてくれると落ち着いた。

 やっと、前向きになれたんだと。

 
 戦利品の整理をし片付けが終わり、夕飯を食べた後に友紀さんに電話してみる事にした。

 今ならきっと電話に出てくれる。

 そして案の定電話に出てくれた。

 「もしもし、あ、ゆきりんさんお久しぶり。ちょっと大丈夫?」

 どの口がこんな軽く言えるんだか。

 
 「今日コスプレ広場で旦那とその仲間達で合わせしてたんだけど…」

 
 
 「その一人が貴女の名刺を持ってたんだ……コス復帰したんだね。」

 なにそれ、せっかく前向きになってるところに思い出させるような事を。

 だから声が少し震えているのを理解する。

 それからはお互い謝っていた。誰のせいでもない、許さないのはあいつただ一人だと。

 お互い電話ごしで泣いた。

 

 落ち着いたところで聞いてみた。

 今は女性ばかりの職場にいる事、家族や元の知り合い以外では会社の数少ない男性社員くらいなら普通に接する事が出来ると。

 昨年一度冬コミに参加したら、コスという仮面を被れば以前程でないにしろ発作は起こさないようにはなれたと。

 そこで一人喰いつきの良い人に出会ったと。

 その作品のそのキャラが大好きらしく、思わず声をかけて撮影させて欲しいと言われたとの事。

 ただ、態度や対応が余りに爽やかで嫌な気はしなかったのを覚えてると。

 そうしたら今年はその本人がコスをした状態で撮影していいか聞いてきてびっくりしたと。


 しかも女装コスで今日が初めてらしいと。

 あれ?これ確定じゃね?まこPさんのことじゃね?九割型まこPさんでしょ。

 そういやどうして今年声をかけてきたのが昨年の人と同一人物だとわかったんだろう?聞きそびれたな。

 普通コスしてたら中々気付けないと思うけど。ま、いつか聞けばいいか。

 「友紀さん、その人の事気になるんですか?」

 電話先で慌てたのか、携帯を落とした音が聞こえた。

 「どどど、どうしてそう思うの?」

 いや、そのどもった言葉を聞ければ答えを聞けたも同然ですよ。

 「後輩の勘です。応援してますよ。また前みたいに一緒に合わせしたいですね。」

 そういった時、私の中で薔薇乙女の構図が決まった。まこPさんに水銀燈をやらせよう。友紀さんに真紅をやらせよう。

 「うん。実はローゼンの真紅の衣装作ったんだよ。前に翠やったから違う子やれたらなって思ってて。」

 にやり。

 「年明けたらどこかスタジオとってやりたいですね。あ、その時今のメンバー私と旦那含めて5人なんだけど…」

 「あ、うん、多分過度な密接がなければ先輩(旦那)以外の人も大丈夫かなと思う。」

 「では、また歳あけたら旦那を交えて考えてみるね。それでは良いお年を。」

 「よいお年を。」

 最後は以前のように普通に先輩後輩として会話出来ていたと思う。

 多分、短い時間だけれど、まこPさんが溶かしたんだと思う。

 これは女の勘。

 うまくいけば…


 
☆☆☆☆☆


 まこPさんに電話をかける。

 あわよくば色々聞こう。

 あ、うん。なんだろう。この人自覚してないけどかなり好いてるぞ。

 今は尊敬するレイヤーとしての方が強いけど、これは異性としてもあるぞ。

 「まこPさん、貴方、彼女の事どう思ってるの?」

 ストレート過ぎたかな?

 「笑顔を見たいと思ってます。」

 なんだよそれ、おい童貞、意味わかんねぇよ。
 それはなんだ、30年後も君の笑顔を隣で見ていたいよとかいうアレか。

 あれ?
 まこPさん、結構見えてんじゃん。理由聞かない辺りは紳士だし。
 友紀さんの心の病を感じ取れてるってことじゃないの?
 ジャブを打っときましょうかね。

 「そう、ごちそうさま。貴方はそのままで良いと思うよ。また近いうちにイベントかスタジオか誘うと思うけどもしよかったら参加してね。」

 言うだけ言って電話を切り考える。 

 年明けてから薔薇乙女合わせ決行しよう。

 さっきも決めたけど、まこPさんの水銀燈に友紀さんの真紅。絡みもあるよ。てへっ

 旦那にはきらきーやってもらいましょうかね。


 みゅいみゅいさんに翠やってもらって、白米さんに蒼星石を、私はカナやってうざく攻めよう。

 まぁ一応希望は聞くけどね。水銀燈と真紅以外で。

 しかし全員揃わないのが悔しいな。
 
 もう一人の犠牲者は…ね。妹いるじゃんね。

 化粧して可愛い服着るのも、コスプレするのも変わらないよね。

 まずは旦那説得するか、賄賂も必要になるかもだし。

 こうして真理恵主催、薔薇乙女合わせが計画されるのだった。

 別名、まこPさんとゆきりんさんを触れ合せよう計画。

 自称性悪キューピッド爆誕の瞬間だった。

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