7 / 10
7
しおりを挟む
「春菜ちゃん、もう大丈夫だよ。ありがとう」
僕は抱擁を続ける春菜に言った。
「飯島さん。私は飯島さんのお役に立てたでしょうか?」
春菜が抱擁を続けながら尋ねてきた。
「ああ。僕は春菜ちゃんのおかげで救われたよ」
僕は正直に答える。
「嬉しいです。飯島さんにそう言ってもらえて。おかげで悔しさを解消することができました」
「悔しさ?」
「私、悔しかったんです。飯島さんがツライときに何もしてあげられなかったことが悔しかったんです。あの事件のあと私はすぐに転校してしまったんです。北海道に。だから飯島さんのお母さんのことは最近知ったんです。知ったとき悔しかった。飯島さんは私を救ってくれたのに私は飯島さんが一番ツライときに何もしてあげられなかったことがすごく悔しかったんです」
春菜がそんな悔しさを抱えていたなんて。
「私は少しでも早く飯島さんの彼女になりたかった理由のひとつは悔しさを解消したかったからなんです。飯島さんのお役に立って悔しさを解消したかったからなんです」
「そうだったんだ」
「はい」
「僕が中二病だった時期にしたことは無駄ではなかったんだね」
「はい。全然無駄じゃないです。誰かのために一生懸命努力することに無駄じゃないんです。それが中二病的行動でも無駄じゃないんです。価値ある行動なんです。その証拠に私は救われました。飯島さんの中二病的行動が価値ある行動だったから私は救われたんです。だから私は飯島さんのお母さんも救われていたと思うことができたんです」
「母さんも救われていたんだ」
「はい。息子が私のために頑張ってる。だから私も病気に負けずに頑張ろう。そう思うことで救われていたと思います」
「母さんは余命よりも三ヶ月も長く生きたんだ」
「飯島さんの行動にお母さんが救われていた証拠だと思います」
「母さんはいつも笑顔でいてくれたんだ」
「それもお母さんが救われていた証拠だと思います」
「僕は母さんに失望されてると思っていたんだ」
「失望するわけありません。愛する息子が自分のために頑張ってくれているのに失望するわけないじゃありませんか?私だったら絶対失望なんてしません。飯島さんのお母さんだって失望しません。もし飯島さんのお母さんが失望するような人だったら飯島さんは私を救ってくれるような人にはならなかったと思います。飯島さんのお母さんが優しい人だったから飯島さんも人助けができる優しい人になったんだと思います。そんな優しいお母さんが飯島さんに失望するわけありません」
「そうだよな」
「はい。そうです」
「母さんは優しい人だった。誰よりも優しい人だった。そんな優しい母さんが僕に失望するわけないよな」
「はい」
「僕は馬鹿だよな。そんなこともわからなかったなんて」
「そうです。飯島さんは馬鹿です。だから放っておけないんです。そばにずっといてあげたくなるんです。こうして抱きしめていてあげたくなるんです」
「春菜ちゃんのほうが大人だね」
「はい。私は大人です。小学生ですけど、中身は大人です。だから私を春菜ちゃんって子供みたいに呼ばないでください。春菜って呼んでください」
「わかったよ。春菜」
「はい。私は飯島さんのことを誠さんって呼びますね」
「いいよ」
「誠さん」
「何?」
「愛してます」
「うん。僕も春菜を愛してる」
「愛してるならキスをしてください」
「いいよ」
「ホントにしてくれるんですか?」
「してあげるよ」
「嬉しい」
「目を閉じて」
「はい」
春菜は目を閉じる。
僕はキスをする。春菜のおでこに。
「今はこれが精一杯」
「嬉しいです。この日のキスを私は一生忘れないと思います」
「うん。春菜。帰ろう。家まで送るよ」
「はい。誠さん、神社の出口まででいいので手を繋いでもらえないでしょうか?」
「いいよ」
「ありがとうございます」
僕たちは手を繋ぐ。今の僕たちを見た人たちのほとんどは年の離れた兄妹だと思うだろう。
僕はそう思う人達にこう言ってやりたいと思った。春菜は僕の彼女だ、と。
そう思えるくらいに僕は春菜のことを好きになっていた。
だから僕は春菜と手を繋いで歩くことが純粋に嬉しかった。
僕は抱擁を続ける春菜に言った。
「飯島さん。私は飯島さんのお役に立てたでしょうか?」
春菜が抱擁を続けながら尋ねてきた。
「ああ。僕は春菜ちゃんのおかげで救われたよ」
僕は正直に答える。
「嬉しいです。飯島さんにそう言ってもらえて。おかげで悔しさを解消することができました」
「悔しさ?」
「私、悔しかったんです。飯島さんがツライときに何もしてあげられなかったことが悔しかったんです。あの事件のあと私はすぐに転校してしまったんです。北海道に。だから飯島さんのお母さんのことは最近知ったんです。知ったとき悔しかった。飯島さんは私を救ってくれたのに私は飯島さんが一番ツライときに何もしてあげられなかったことがすごく悔しかったんです」
春菜がそんな悔しさを抱えていたなんて。
「私は少しでも早く飯島さんの彼女になりたかった理由のひとつは悔しさを解消したかったからなんです。飯島さんのお役に立って悔しさを解消したかったからなんです」
「そうだったんだ」
「はい」
「僕が中二病だった時期にしたことは無駄ではなかったんだね」
「はい。全然無駄じゃないです。誰かのために一生懸命努力することに無駄じゃないんです。それが中二病的行動でも無駄じゃないんです。価値ある行動なんです。その証拠に私は救われました。飯島さんの中二病的行動が価値ある行動だったから私は救われたんです。だから私は飯島さんのお母さんも救われていたと思うことができたんです」
「母さんも救われていたんだ」
「はい。息子が私のために頑張ってる。だから私も病気に負けずに頑張ろう。そう思うことで救われていたと思います」
「母さんは余命よりも三ヶ月も長く生きたんだ」
「飯島さんの行動にお母さんが救われていた証拠だと思います」
「母さんはいつも笑顔でいてくれたんだ」
「それもお母さんが救われていた証拠だと思います」
「僕は母さんに失望されてると思っていたんだ」
「失望するわけありません。愛する息子が自分のために頑張ってくれているのに失望するわけないじゃありませんか?私だったら絶対失望なんてしません。飯島さんのお母さんだって失望しません。もし飯島さんのお母さんが失望するような人だったら飯島さんは私を救ってくれるような人にはならなかったと思います。飯島さんのお母さんが優しい人だったから飯島さんも人助けができる優しい人になったんだと思います。そんな優しいお母さんが飯島さんに失望するわけありません」
「そうだよな」
「はい。そうです」
「母さんは優しい人だった。誰よりも優しい人だった。そんな優しい母さんが僕に失望するわけないよな」
「はい」
「僕は馬鹿だよな。そんなこともわからなかったなんて」
「そうです。飯島さんは馬鹿です。だから放っておけないんです。そばにずっといてあげたくなるんです。こうして抱きしめていてあげたくなるんです」
「春菜ちゃんのほうが大人だね」
「はい。私は大人です。小学生ですけど、中身は大人です。だから私を春菜ちゃんって子供みたいに呼ばないでください。春菜って呼んでください」
「わかったよ。春菜」
「はい。私は飯島さんのことを誠さんって呼びますね」
「いいよ」
「誠さん」
「何?」
「愛してます」
「うん。僕も春菜を愛してる」
「愛してるならキスをしてください」
「いいよ」
「ホントにしてくれるんですか?」
「してあげるよ」
「嬉しい」
「目を閉じて」
「はい」
春菜は目を閉じる。
僕はキスをする。春菜のおでこに。
「今はこれが精一杯」
「嬉しいです。この日のキスを私は一生忘れないと思います」
「うん。春菜。帰ろう。家まで送るよ」
「はい。誠さん、神社の出口まででいいので手を繋いでもらえないでしょうか?」
「いいよ」
「ありがとうございます」
僕たちは手を繋ぐ。今の僕たちを見た人たちのほとんどは年の離れた兄妹だと思うだろう。
僕はそう思う人達にこう言ってやりたいと思った。春菜は僕の彼女だ、と。
そう思えるくらいに僕は春菜のことを好きになっていた。
だから僕は春菜と手を繋いで歩くことが純粋に嬉しかった。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前。でも……。二人が自分たちの間違いを後で思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになる。
のんびりとゆっくり
恋愛
俺は島森海定(しまもりうみさだ)。高校一年生。
俺は先輩に恋人を寝取られた。
ラブラブな二人。
小学校六年生から続いた恋が終わり、俺は心が壊れていく。
そして、雪が激しさを増す中、公園のベンチに座り、このまま雪に埋もれてもいいという気持ちになっていると……。
前世の記憶が俺の中に流れ込んできた。
前世でも俺は先輩に恋人を寝取られ、心が壊れる寸前になっていた。
その後、少しずつ立ち直っていき、高校二年生を迎える。
春の始業式の日、俺は素敵な女性に出会った。
俺は彼女のことが好きになる。
しかし、彼女とはつり合わないのでは、という意識が強く、想いを伝えることはできない。
つらくて苦しくて悲しい気持ちが俺の心の中であふれていく。
今世ではこのようなことは繰り返したくない。
今世に意識が戻ってくると、俺は強くそう思った。
既に前世と同じように、恋人を先輩に寝取られてしまっている。
しかし、その後は、前世とは違う人生にしていきたい。
俺はこれからの人生を幸せな人生にするべく、自分磨きを一生懸命行い始めた。
一方で、俺を寝取った先輩と、その相手で俺の恋人だった女性の仲は、少しずつ壊れていく。そして、今世での高校二年生の春の始業式の日、俺は今世でも素敵な女性に出会った。
その女性が好きになった俺は、想いを伝えて恋人どうしになり。結婚して幸せになりたい。
俺の新しい人生が始まろうとしている。
この作品は、「カクヨム」様でも投稿を行っております。
「カクヨム」様では。「俺は先輩に恋人を寝取られて心が壊れる寸前になる。でもその後、素敵な女性と同じクラスになった。間違っていたと、寝取った先輩とその相手が思っても間に合わない。俺は美少女で素敵な同級生と幸せになっていく。」という題名で投稿を行っております。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる