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砂漠で盗賊と砂嵐とオアシスとにめぐりあう偶然

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 こうして私たちの旅は、おわった。

 もう何も考えたくないし感じたくもない。

 気がついたとき、私たちは、砂が地面の四方を埋めていて、壁を全部ボロボロの幕で覆われている、一緒になんか臭いものが袋に入って置いてある場所にいた。

 どこなの?ここ?

 「わんべぼんなぼぼにばるぼよ!」

 口をふさいでいる布もなんか臭い!着ていたガウンもコートも盗られちゃったみたいだし、なんでこうなるのよ!最悪!どういうわけで私だけがこんなところ?オジサンとお子様は?そもそも何があってこうなるのよ!

 おかしいな、と思い返してみる。

 ついさっき、のできごとだ。間幕をあけて私は叫んだ。『いったいいつ、私が、あなたの娘になったって言うのよ!』。…いうのよ、じゃなくて言うんですか?だったっけ。…とにかく、細かいところはいいからその後のことを。

 それで顔を出したらオジサンがいて、馬車が止まってて、…止まってた?パカラパカラいってたのはいつ?ああ、その前か。中でお子様と話をしてて、お子様が私のことをって言っちゃって。恥ずかしそうな顔がかわいかったなぁ…。でも、そうか、その時にはもうパカラパカラは聞こえてなかった!

 で、何が起きたの?顔を出して…。

 「気がつきましたか?大丈夫ですか?ずいぶんと大きな音がするくらい殴られてたみたいですけど、痛くないですか?」

 背中側からお子様の声がした。びっくりして急いで振り向こうとしたんだけど、どこをどうロープで結ばれているんだか体がピクリとも動かない。

 「そっちこそ大丈夫なの?なんか動けないからそっち向けないけど、どこか痛くされたり傷ついたりしてない?」

 「僕は、大丈夫です。…ありがとうございます。」

 「オジサンは?いるの?そっち?」

 「いいえ、あの方はここにはいらっしゃいません。外で今、ここの首長と交渉しに行っています。」

 交渉?あの黒装束で?いったい何の交渉をしてるって言うのかしら。まずは私とお子様をここから出すのが先でしょう?この縛ってあるロープを外すのが先なんじゃないの?

 「あまり暴れないでくださいね。今暴れられたり大声を出されたりすると全部台無しになりますから。」

 お子様が真剣にそう言った。…いったい何が起こっているんだろう。

 「詳しいことは後ほどお話します。今言えるのは、僕たちは砂漠の民に襲われて拉致らちされている状態です。砂の上を疾走する真っ黒な馬車というのが、彼らにはあまりにも不吉なものにでも見えたんでしょう。昼夜を問わず一週間、東に向かって疾走しているように見えたはずですから、確かにそう見えてもしかたなかったかもしれません。」

 ん?話がよく見えない。一週間?昨日の夜に野営して、今日まだニ三時間しか馬車で移動してないはずでは?

 「あんた、またどっちかの道具を使ったでしょう。」

 「僕じゃあありません。たぶん、あの方が使われていたんだと思ってます。」

 「なんでよ?だってあっちの道具について、あんたまだ何にも説明していないじゃん?」

 「説明はさせていただきましたよ。出発の準備ができたときに、あの方に聞かれたので使い方は教えてあります。」

 テントをたたんで、埋まってた馬車を出して、あの後か!?そういえばあの時私、馬車の中で肌荒れ対策とか日焼け対策とかしてたんだった。それで急かされずにできてたんだ、乙女タイム。
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