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 狭い世界の中で両親と限られた使用人としか顔を合わせない、会話をしない妹は、『わたくし』をずっと意識していた様です。

 『姉』という存在が、妹からすると『特別』な存在となっていたのかもしれません。

 わたくしが、ただ自分の人生を歩いている中、妹はそれさえも不満に思うようになってしまっていた様でした。

 父は妹から「お姉さまばかりズルい!!」と言われて困っているとわたくしに話してきました。
 そんな事を言われてもわたくしも困ります。

「では今からわたくしと妹の立場を入れ替えますか?
 わたくしは別に構いませんよ?
 

 そう言ったわたくしの言葉に、父は青褪めて沈黙してしまいました。
 わたくしとしては本と食料さえ別邸に運んで下されば本当に監禁されても良いと思っているのですが、そんな事をしたところで事態が何も好転しないと父もきっと分かっているのでしょう。
 昔の、幼児だった妹の我が儘を全て叶えて上げられていたようにはもうできないのです。
 今更、妹がどれだけ騒いだところで、『今の妹』を人様の目に触れさせる事は、侯爵家当主である父にはできないでしょう。

 そうしてやっと、やっと父は気づくのです。

 自分たちが妹の為に、としてきた事が全て、
 今の妹の我が儘を叶えられなくさせてしまっている事に……

 お姉さまズルい!!
 お姉さまばかり!!

 わたくしから両親の愛情を全て奪っていった妹は、今は『わたくしをうらやむだけの存在』となってしまっていました。
 しかし幼児ではなくなってしまった今、いくら妹がわたくしをうらやみ、わたくしの物を欲しがったところで、妹にはどうする事もできないのです。

 溶けた氷が、元の形へと戻らないように…………
 
 
 
 
 
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