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22>>婚約披露パーティー
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マリリンとティオレイドの婚約を知らせる為のパーティーがアーゼン侯爵家にて開かれた。
勿論主役はティオレイドとマリリン。そして親族関係となるアーゼン侯爵家とドーシュ伯爵家だ。
カリンナの婚約者であるロッシュ・テラン男爵令息とその家族も呼ばれている。ロッシュの両親は高位貴族の集まりになどそうそう参加した事がない所為かとても緊張した面持ちだったがロッシュの兄は意外と平然としており、その婚約者となる為に一緒に来ていた男爵令嬢が緊張の為に若干青白くなっているのを横で優しく支えて上げていた。それを見たカリンナは『さすがロッシュ様のお兄様』と心の中で小さく称賛した。
ロッシュは婚約者をエスコートする為にずっとカリンナの側に居る。
マリリンたちを祝う為に、と云うより『両家の婚約』を祝う為に集まった人たちに、次期ドーシュ伯爵の伴侶の顔を知ってもらう機会でもあった。
パーティーは順調に進み、挨拶の終わった人たちがそれぞれ立食形式のテーブルの周りで談笑などを始めた頃、カリンナが扇を広げて口元を隠して少しだけロッシュの側に寄った。
「ん?」
カリンナの動きに小首を傾げたロッシュがカリンナを見る。そんなロッシュの顔を見る事なくカリンナが今日の主役が居る方向を見ながら小さな声で囁いた。
「そろそろですわ。
……わたくし、ちょっとティオレイド様の所へ行きますわね」
「そろそろ?」
「えぇ、……式の準備中のマリリンにニレの実の果実水を差し入れましたの。あの子、何の躊躇いもなく飲んだそうですわ」
「ニレの実って確か……利尿作用があるからこういう催し物の前には飲まない様にって、子供の頃に教わる、アレ?」
ロッシュが困った顔で笑う。それに釣られる様にカリンナも扇で口元を隠しながらロッシュにだけ見える様に苦笑した。
「えぇ、貴族なら誰でも知っているアレですわ。あの子は『出す方が悪い』と言いそうですけど、『飲まない選択』を取るのが淑女なのにほんと、困った子ですわ……
でもまぁ、そのお陰でわたくしのしたい事が出来るのですけれど」
そんな話をしている視界の先で、マリリンはティオレイドに小さく頭を下げてそそくさと会場から居なくなった。
その後ろ姿を確認してカリンナも動く。
「ではロッシュ様。
少しだけ……嫉妬して下さいませね」
そんな事を言って妖艶に微笑んで見せるカリンナをロッシュは眉尻を下げて見送った。
「嫉妬か~……
カリンナが先に色々教えておいてくれるから、嫉妬する間もないんだよなぁ……」
ティオレイドの元へ行くと言うカリンナの頭の中にはティオレイドなど隅の方にしか居ないだろう。それもメインのマリリン在りきだ。
それが分かっているのに嫉妬するのは難しいなぁと思うロッシュだった。
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マリリンとティオレイドの婚約を知らせる為のパーティーがアーゼン侯爵家にて開かれた。
勿論主役はティオレイドとマリリン。そして親族関係となるアーゼン侯爵家とドーシュ伯爵家だ。
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ロッシュは婚約者をエスコートする為にずっとカリンナの側に居る。
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パーティーは順調に進み、挨拶の終わった人たちがそれぞれ立食形式のテーブルの周りで談笑などを始めた頃、カリンナが扇を広げて口元を隠して少しだけロッシュの側に寄った。
「ん?」
カリンナの動きに小首を傾げたロッシュがカリンナを見る。そんなロッシュの顔を見る事なくカリンナが今日の主役が居る方向を見ながら小さな声で囁いた。
「そろそろですわ。
……わたくし、ちょっとティオレイド様の所へ行きますわね」
「そろそろ?」
「えぇ、……式の準備中のマリリンにニレの実の果実水を差し入れましたの。あの子、何の躊躇いもなく飲んだそうですわ」
「ニレの実って確か……利尿作用があるからこういう催し物の前には飲まない様にって、子供の頃に教わる、アレ?」
ロッシュが困った顔で笑う。それに釣られる様にカリンナも扇で口元を隠しながらロッシュにだけ見える様に苦笑した。
「えぇ、貴族なら誰でも知っているアレですわ。あの子は『出す方が悪い』と言いそうですけど、『飲まない選択』を取るのが淑女なのにほんと、困った子ですわ……
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少しだけ……嫉妬して下さいませね」
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「嫉妬か~……
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