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──5──メイド

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「……聖女様はまだこもっておられるのか?」

「……はい……お食事は取られているのですが、それ以外は誰も近づかせては下さらなくて……」

「部屋で何をされているのだ?」

「……何も……
 ただベッドに座って目を閉じておられます」

「……はぁ~……困ったお方だ。
 こちらがどれだけの労力を使って呼び寄せたかも理解しては下さらないとは……」

「まだお若く、家族と引き離されたことにショックを受けておられるのではないでしょうか……」

「若いと言っても16だと聞いている。この国では12で独り立ちする者も居るというのに……
 『神の国』というのは随分子供を甘やかして育てるんだな」

「…………」

「聖女召喚が成功した事は他国にも大々的に宣言している。聖女様には一刻も早く活動を始めて頂き、そのちからを世界中に証明して頂かなければならない。
 お前たちは聖女様と近い年齢の女子だからとわざわざ集められたのだ。早く聖女様の心に寄り添い、情を持って聖女様の背中を押すのだ。頼むぞ」

「はい。心得て居ります」


 宰相はそう言って去っていった。
 聖女付きとして王城に上がったばかりのメイドは緊張から汗をかいていた手のひらを周りにバレない様にスカートで拭うと張り詰めていた息をゆっくりと吐いた。

 荷が重い……

 それが彼女や、彼女と同じ様に聖女と同じ年齢だからと集められたメイドたちの気持ちだった。

 聖女様は召喚された日からずっと部屋から出ようとはせずに、人ともほとんど話をしない。
 ずっと何かを考えている様で、話しかける事すらもはばかられる。

 何よりその警戒心が解けない。
 同い年のメイドですらそれなのだ。どうにか懇意になろうと頑張っている第二王子は部屋にすら入れて貰えない。聖女様が会いたくないと言えばそれが優先されるのだ。
 腹を立てた第二王子は周りのメイドに当たり、それが怖くて一部のメイドは泣いていた。
 
 それもこれも、召喚されて来たのに我が侭に自分の我を押し通す聖女の所為……

 美しくも、可愛くもない、聖女様と呼ぶには相応しくない外見の『我が侭少女』に、同い年なのに既に働いていてそれでいて外見だって聖女には負けていないメイドたちは、直ぐに聖女を不満に思った。




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