5 / 11
──5──メイド
しおりを挟む
-
「……聖女様はまだ篭っておられるのか?」
「……はい……お食事は取られているのですが、それ以外は誰も近づかせては下さらなくて……」
「部屋で何をされているのだ?」
「……何も……
ただベッドに座って目を閉じておられます」
「……はぁ~……困ったお方だ。
こちらがどれだけの労力を使って呼び寄せたかも理解しては下さらないとは……」
「まだお若く、家族と引き離されたことにショックを受けておられるのではないでしょうか……」
「若いと言っても16だと聞いている。この国では12で独り立ちする者も居るというのに……
『神の国』というのは随分子供を甘やかして育てるんだな」
「…………」
「聖女召喚が成功した事は他国にも大々的に宣言している。聖女様には一刻も早く活動を始めて頂き、その力を世界中に証明して頂かなければならない。
お前たちは聖女様と近い年齢の女子だからとわざわざ集められたのだ。早く聖女様の心に寄り添い、情を持って聖女様の背中を押すのだ。頼むぞ」
「はい。心得て居ります」
宰相はそう言って去っていった。
聖女付きとして王城に上がったばかりのメイドは緊張から汗をかいていた手のひらを周りにバレない様にスカートで拭うと張り詰めていた息をゆっくりと吐いた。
荷が重い……
それが彼女や、彼女と同じ様に聖女と同じ年齢だからと集められたメイドたちの気持ちだった。
聖女様は召喚された日からずっと部屋から出ようとはせずに、人ともほとんど話をしない。
ずっと何かを考えている様で、話しかける事すらも憚られる。
何よりその警戒心が解けない。
同い年のメイドですらそれなのだ。どうにか懇意になろうと頑張っている第二王子は部屋にすら入れて貰えない。聖女様が会いたくないと言えばそれが優先されるのだ。
腹を立てた第二王子は周りのメイドに当たり、それが怖くて一部のメイドは泣いていた。
それもこれも、召喚されて来たのに我が侭に自分の我を押し通す聖女の所為……
美しくも、可愛くもない、聖女様と呼ぶには相応しくない外見の『我が侭少女』に、同い年なのに既に働いていてそれでいて外見だって聖女には負けていないメイドたちは、直ぐに聖女を不満に思った。
-
「……聖女様はまだ篭っておられるのか?」
「……はい……お食事は取られているのですが、それ以外は誰も近づかせては下さらなくて……」
「部屋で何をされているのだ?」
「……何も……
ただベッドに座って目を閉じておられます」
「……はぁ~……困ったお方だ。
こちらがどれだけの労力を使って呼び寄せたかも理解しては下さらないとは……」
「まだお若く、家族と引き離されたことにショックを受けておられるのではないでしょうか……」
「若いと言っても16だと聞いている。この国では12で独り立ちする者も居るというのに……
『神の国』というのは随分子供を甘やかして育てるんだな」
「…………」
「聖女召喚が成功した事は他国にも大々的に宣言している。聖女様には一刻も早く活動を始めて頂き、その力を世界中に証明して頂かなければならない。
お前たちは聖女様と近い年齢の女子だからとわざわざ集められたのだ。早く聖女様の心に寄り添い、情を持って聖女様の背中を押すのだ。頼むぞ」
「はい。心得て居ります」
宰相はそう言って去っていった。
聖女付きとして王城に上がったばかりのメイドは緊張から汗をかいていた手のひらを周りにバレない様にスカートで拭うと張り詰めていた息をゆっくりと吐いた。
荷が重い……
それが彼女や、彼女と同じ様に聖女と同じ年齢だからと集められたメイドたちの気持ちだった。
聖女様は召喚された日からずっと部屋から出ようとはせずに、人ともほとんど話をしない。
ずっと何かを考えている様で、話しかける事すらも憚られる。
何よりその警戒心が解けない。
同い年のメイドですらそれなのだ。どうにか懇意になろうと頑張っている第二王子は部屋にすら入れて貰えない。聖女様が会いたくないと言えばそれが優先されるのだ。
腹を立てた第二王子は周りのメイドに当たり、それが怖くて一部のメイドは泣いていた。
それもこれも、召喚されて来たのに我が侭に自分の我を押し通す聖女の所為……
美しくも、可愛くもない、聖女様と呼ぶには相応しくない外見の『我が侭少女』に、同い年なのに既に働いていてそれでいて外見だって聖女には負けていないメイドたちは、直ぐに聖女を不満に思った。
-
40
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~
日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。
田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。
成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。
「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」
彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で……
一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。
国王や王女は気づいていない。
自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。
小説家になろうでも短編として投稿してます。
偽物の女神と陥れられ国を追われることになった聖女が、ざまぁのために虎視眈々と策略を練りながら、辺境の地でゆったり楽しく領地開拓ライフ!!
銀灰
ファンタジー
生まれたときからこの身に宿した聖女の力をもって、私はこの国を守り続けてきた。
人々は、私を女神の代理と呼ぶ。
だが――ふとした拍子に転落する様は、ただの人間と何も変わらないようだ。
ある日、私は悪女ルイーンの陰謀に陥れられ、偽物の女神という烙印を押されて国を追いやられることとなった。
……まあ、いいんだがな。
私が困ることではないのだから。
しかしせっかくだ、辺境の地を切り開いて、のんびりゆったりとするか。
今まで、そういった機会もなかったしな。
……だが、そうだな。
陥れられたこの借りは、返すことにするか。
女神などと呼ばれてはいるが、私も一人の人間だ。
企みの一つも、考えてみたりするさ。
さて、どうなるか――。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。
【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる