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11>> どこかで気づいていた

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 わたくしとカハル様の学園卒業を目前にして、カハル様とセッドリー様がダンジョンで亡くなった。

 ダンジョンに潜っていた別の冒険者が血のついたカハル様の服と散らばった髪、セッドリー様の荷物と思われる物を見つけて冒険者ギルドに連絡した。直ぐに捜索隊が作られたものの2人を見つける事は出来なかった。
 カハル様とセッドリー様がその日から学園には戻って来なかった事から、魔物に食べられてしまったんだろうと結論付けられた。

 わたくしはどうしても諦めきれずに自分の足でダンジョンに行こうとしたけれど、何の訓練もしていない貴族の令嬢をそんなところに入れてくれる訳もなく、皆に止められて、ただただ泣きくれるしか出来なかった。

 遺体の無い死。

 アリシュアと共にわたくしはカハル様とセッドリー様の為に泣いた。
 死んでいないと思っても涙はとめどなく流れた。
 アリシュアはセッドリー様から貰ったネックレスを握りしめて、わたくしの腕の中で泣いた。

 魔物に食べられて遺体の無いままに死を迎える人はこの世界には多いと、その時初めて耳にした。
 空の棺が運ばれて、カハル様のご実家のシェイロズ侯爵家とセッドリー様のご実家のミロセリー伯爵家の葬儀は同時に行われ、2人の墓は隣に並べられる事となった。

「……馬鹿な子たちだ。
 だが、夢に生き、夢に死んだ2人は、貴族の中でしか生きられない私たちよりも自由だっただろう。
 冒険の中で死ねたのだ……男としては羨ましいものだな……」

 カハル様のお墓の前で呟かれたシェイロズ侯爵当主の言葉に、わたくしの目からはまた涙が流れていた。

 わたくしには理解の出来ないその『夢』を、どう称賛すればいいのでしょうか……

 カハル様に“置いていかれた”という気持ちが湧き上がり消えていく……

 それでもどこかでわたくしは……こんな未来が来るんじゃないかと少なからず思っていた自分に気付いていた…………

 あの2人の選ぶ未来を……

 そこにわたくしは居ないんじゃないかという焦りにも似た悲しみを…………


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