11 / 23
11>> どこかで気づいていた
しおりを挟むわたくしとカハル様の学園卒業を目前にして、カハル様とセッドリー様がダンジョンで亡くなった。
ダンジョンに潜っていた別の冒険者が血のついたカハル様の服と散らばった髪、セッドリー様の荷物と思われる物を見つけて冒険者ギルドに連絡した。直ぐに捜索隊が作られたものの2人を見つける事は出来なかった。
カハル様とセッドリー様がその日から学園には戻って来なかった事から、魔物に食べられてしまったんだろうと結論付けられた。
わたくしはどうしても諦めきれずに自分の足でダンジョンに行こうとしたけれど、何の訓練もしていない貴族の令嬢をそんなところに入れてくれる訳もなく、皆に止められて、ただただ泣きくれるしか出来なかった。
遺体の無い死。
アリシュアと共にわたくしはカハル様とセッドリー様の為に泣いた。
死んでいないと思っても涙はとめどなく流れた。
アリシュアはセッドリー様から貰ったネックレスを握りしめて、わたくしの腕の中で泣いた。
魔物に食べられて遺体の無いままに死を迎える人はこの世界には多いと、その時初めて耳にした。
空の棺が運ばれて、カハル様のご実家のシェイロズ侯爵家とセッドリー様のご実家のミロセリー伯爵家の葬儀は同時に行われ、2人の墓は隣に並べられる事となった。
「……馬鹿な子たちだ。
だが、夢に生き、夢に死んだ2人は、貴族の中でしか生きられない私たちよりも自由だっただろう。
冒険の中で死ねたのだ……男としては羨ましいものだな……」
カハル様のお墓の前で呟かれたシェイロズ侯爵当主の言葉に、わたくしの目からはまた涙が流れていた。
わたくしには理解の出来ないその『夢』を、どう称賛すればいいのでしょうか……
カハル様に“置いていかれた”という気持ちが湧き上がり消えていく……
それでもどこかでわたくしは……こんな未来が来るんじゃないかと少なからず思っていた自分に気付いていた…………
あの2人の選ぶ未来を……
そこにわたくしは居ないんじゃないかという焦りにも似た悲しみを…………
5
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
嘘の日の言葉を信じてはいけない
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
仮面の兵士と出来損ない王子
天使の輪っか
BL
姫として隣国へ嫁ぐことになった出来損ないの王子。
王子には、仮面をつけた兵士が護衛を務めていた。兵士は自ら志願して王子の護衛をしていたが、それにはある理由があった。
王子は姫として男だとばれぬように振舞うことにしようと決心した。
美しい見た目を最大限に使い結婚式に挑むが、相手の姿を見て驚愕する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる