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わたくしの前世はこの世界とは別の世界に生きていました。
年号は昭和に平成に令和……
ラジオにテレビにネットにスマホ……
あぁスマホ……わたくしのスマホはどこ……
魔法が無いのに不自由がなく、むしろ今の世界よりも断然栄えていて自由。
情報に溢れ、その筋の専門家でなくても朧気な知識なら呆然と生きていても耳に入ってくるような世界だった。
わたくしがどんな人物だったかまでは解らない。一人称で覚えている記憶には当然ながら『私』は居ない。鏡があまり好きではなかった? 読書が好きで、タブレット画面を見てる場面ばかりが残る少し残念な前世の記憶。
それでも『今の私』にはとても有益な知識で……、生きる価値なしと思っていた自分の考えを変えるだけの威力は十分にあった。
『水しか操れない?』
『水』が操れれば十分じゃない。
目が覚めたわたくしは突然そんな風に考えられるようになっていました。
水魔法の『水』にこれと言って決まった縛りなどはありません。
それなのにこの世界の人たちは水魔法を『水を生み出す』か『雨を降らせる』か『川を穏やかにする』か、そんな使い方しかしていないのです。
水なんて、火よりも身近にある物なのに……
「人間は6割が水だって事は、この世界の人は知らないのよね…………」
わたくしは手にした器の中でスープを色んな形に変化させながら、これからこの力をどうやって使おうかしらと考えを巡らせた。
……夕飯を食べて台所で使った食器を水魔法でパパッと流したら手も濡れなくて楽になったわ。洗剤も要らない食洗機とか最高じゃないかしら。
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わたくしの前世はこの世界とは別の世界に生きていました。
年号は昭和に平成に令和……
ラジオにテレビにネットにスマホ……
あぁスマホ……わたくしのスマホはどこ……
魔法が無いのに不自由がなく、むしろ今の世界よりも断然栄えていて自由。
情報に溢れ、その筋の専門家でなくても朧気な知識なら呆然と生きていても耳に入ってくるような世界だった。
わたくしがどんな人物だったかまでは解らない。一人称で覚えている記憶には当然ながら『私』は居ない。鏡があまり好きではなかった? 読書が好きで、タブレット画面を見てる場面ばかりが残る少し残念な前世の記憶。
それでも『今の私』にはとても有益な知識で……、生きる価値なしと思っていた自分の考えを変えるだけの威力は十分にあった。
『水しか操れない?』
『水』が操れれば十分じゃない。
目が覚めたわたくしは突然そんな風に考えられるようになっていました。
水魔法の『水』にこれと言って決まった縛りなどはありません。
それなのにこの世界の人たちは水魔法を『水を生み出す』か『雨を降らせる』か『川を穏やかにする』か、そんな使い方しかしていないのです。
水なんて、火よりも身近にある物なのに……
「人間は6割が水だって事は、この世界の人は知らないのよね…………」
わたくしは手にした器の中でスープを色んな形に変化させながら、これからこの力をどうやって使おうかしらと考えを巡らせた。
……夕飯を食べて台所で使った食器を水魔法でパパッと流したら手も濡れなくて楽になったわ。洗剤も要らない食洗機とか最高じゃないかしら。
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