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第四章 決戦に向けて

7 みんなでポーカーゲーム

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神族の強い力をできる限り振り絞って使ったことで、宇宙に出て三日目の午前中まで部屋で休んでいた。

午後になり、あと十二時間後にはアデンに到着していると思うと、この旅をこのまま終わらせるのが嫌になってきた。

ハルトライト高校の修学旅行は一年生の一学期にあり、僕はもう二度と行けない事が決定しているので、いまここでその代わりにしたい気持ちもあった。

何よりこれから長期で会えなくなるアデリーさんと、今のうちに思い出を作りたい。僕ができる最後のお節介かもしれないし、どうにか楽しんでもらいたい。

そういう事で、全然敵に襲われそうもなくて暇そうな知り合いの部屋を巡って、誘ってみた。

それから僕の部屋に戻って待っていると、誘っていない方も含めて来てくれた。

ずっとどこかで僕を護衛していたらしいエリック様の奥様クロさんも来てくれて、ノア様も来てくれた。そうしたら、この戦艦にいたと初めて知った幽霊のロック様もついてきた。

ロゼマイン様とフィルモア様も来てくれて、最後にベルタさんとアデリーさんも来てくれた。

この大人数ですることといえば、これしかない。トランプゲームだ。

しかし、どう人を分けるか悩みどころだと思えた。

僕が悩んでいる間に、ロゼマイン様とフィルモア様が座ったテーブルに呼ばれた。

僕が加わると、ウィルさんもやって来た。これで残りのクロさんとノア様とアデリーさんとベルタさんは、もう一つのテーブルについた。

ロック様は見えない人たちもいるのでただウロウロしていて、イツキは不機嫌なので不参加。

ホルンさんは僕のテーブルのトランプを配る係に。そしてオーランドさんは、ベルタさんのいるテーブルでトランプを配る係に落ち着いた。

僕はババ抜きとか七並べぐらいしか知らないから、それでもしようかと思っていたんだけど、ウィルさんの提案でポーカーゲームをすることになった。

「ウィルさん、僕はルールを知りません」

「ええ。それでも大丈夫です。その方が実験に好都合です」

「実験って?」

「ロゼマイン様とフィルモア様を相手に、シャムルル様の運や能力がどれだけ太刀打ちできるかという実験です。シャムルル様の能力は未だ未知数ですので、ここでまずは基本的能力を調べましょう」

「ええ? うん……でも知りません」

「教えます」

ウィルさんは、五枚あるカードを組み合わせて、ロイヤルストレートフラッシュという手を教えてくれた。エースをトップにキング、クイーン、ジャック、十のカードが揃い、全部同じ模様であることを言うらしい。

ポーカーの中で一番華やかで強い手……役だという。これを、最初に配られた五枚のうち、自分の番が来たらいくらでもいいので捨てて新しいカードをもらい、そのロイヤルストレートフラッシュという役のカードを集めればいいという事らしい。

とりあえず何となく理解したところで、ゲームを始めてみた。

最初の数回は、よく分からないうちにロゼマイン様とフィルモア様が勝った。僕は何の役もできない。

いつ出来るんだろうと思っていると、ホルンさんが最初に配ってくれた五枚のカードのうち、三枚がさっき教えてもらったロイヤルストレートフラッシュに当てはまるものだった。

なので僕の番の時に、二枚捨ててホルンさんに二枚もらった。そうしたら、ロイヤルストレートフラッシュができた。

「うわー、出来ましたよ! これ、僕の勝ちですか?」

「はい、そうですよ」

ホルンさんが笑って答えてくれた。ウィルさんが、ノートに何か書き込んでいる。

ロゼマイン様とフィルモア様も笑ってくれる。僕は手加減をされたかもしれないと思い始めた。

再びゲームを繰り返した。数度なんの役もできなかったところで、またチャンスが来た。

今度は三度カードを捨てて違うカードをホルンさんから貰ったら、ロイヤルストレートフラッシュができた。

何故か、後ろのテーブルから強い視線を受ける。

やっぱりノートに何か書いているウィルさんが言った。

「スリーカードを教えますよ。ほら、こっちは簡単でしょう?」

「三つが同じ数字なんですね。分かりました」

僕はそれも覚えた。

そして何度かゲームを繰り返すと、三度スリーカードができて、一度ロイヤルストレートフラッシュができた。

「なるほど……」

ウィルさんが何か真剣に悩みつつ、何か書いているノートを見て呻いた。

まだ続けてゲームをしていて、三つのカードが揃って役になるなら、二つが揃ったり四つが揃ってもいいんじゃないかと思えるようになってきた。

すると、すぐに二枚の同じ数字のカードが来た。

「ウィルさん、これは役ではありませんか?」

「ワンペアです。一番弱い役ですよ。そのワンペアを二つ集めて、ツーペアを目指してみてください」

「はーい」

取りあえず言われたので、次のゲームでツーペアなるものを集めてみた。

何故か、みんなが微笑ましい感じで笑う。

「四つ同じ数字でもいいんですよね?」

「ええ。フォーカードです」

ホルンさんが言ってくれたから、次はそれを目指した。二度目のゲームで達成できた。

そこで一時休憩となり、僕はホルンさんにお茶とマドレーヌをもらった。

それを食べる僕の前で、ロゼマイン様とフィルモア様とウィルさんが、熱心に話をし始めた。

「最初に最高の手しか知らない時、それ以外の役はワンペアですら作れませんでした。けれど教えるとすんなり作れましたし、ランダムに出現するようにもなりました」

ウィルさんがノートを見ながら言う。

それにロゼマイン様が返した。

「つまりはこの場の運命を、シャムルル様は最初から手中に収めていたという事ですね。ロイヤルストレートフラッシュしか知らず、あとの役は存在しないことにされました。ただ、私たちが黙って他の手を作り勝つことは出来ました。無意識の部分に、他者が存在していれる隙間があります。他者も、シャムルル様より弱いとはいえ、独立した力を持つために同じ場に存在できたのです」

次にフィルモア様が言った。

「まず、このカードゲームのルールを全て知らないと定義して、無の世界をつくりました。その無の状態から一個の物の存在を許し、二個目の存在も教えられて存在を許可し、三つ目は偶然ではなく、新しい物を考えて創造したようです。シャムルル様の知識が満たされたので、新たな存在を生み出しこの場にあることを許可したのです」

ウィルさんは、それを聞いてため息をついて言った。

「そして最後のフォーカードは、三つ目のツーペアと発生は同じものの、教えられた知識をより発展させて生み出した新しき物、という解釈もありえます。無から有の許可、新たな創造に発展の能力は、宇宙開びゃくを可能にする力ですよね」

ロゼマイン様もそこでため息をついた。

「力弱き者の遊びではなく、力ある者の創造の歩みの前では、私たちですら脇役であり形無しとなります。ただ、新たな生命体を生み出す際には、この力が無くてはいけません。心強い限りです」

ロゼマイン様とフィルモア様が、ニッコリ笑いかけてきた。

「えーと、いつからその話になりましたか?」

分からないので僕は聞いた。

「最初から、少しばかりです」

ホルンさんが笑顔で答えてくれた。悪いけど分からない。

ウィルさんがそこで、疲れが出ている感じで言った。

「ところで今更ですが、手を抜いておられた訳ではありませんよね」

「三人とも力を行使せず、しかし手を抜かずに挑みましたよ」

ロゼマイン様が、今度はウィルさんに微笑みながら言った。

「そうですか。では有意義な観察結果が得られました。ご協力ありがとうございます」

「いえ、我らも勉強になりました。楽しんでいますよ」

ロゼマイン様は、本当に楽しいらしくてまた笑ってくれた。

みんなで楽しみたい僕の作戦は、半分は成功していると感じた。

あと半分のアデリーさんが気になり、隣のテーブルを覗き込んだ。

ノア様は、いつもの笑顔をくれた。

「シャムルル様、こちらのテーブルでポーカーゲームをしませんか?」

「いいんですか?」

混ぜてもらおうと行くと、ベルタさんが席を譲ってくれた。

クロさんはそんなに笑ってくれないものの、アデリーさんはニッコリ笑ってくれた。

オーランドさんがカードを切って、四人に一枚ずつ渡してくれた。

五枚集まったところで、ノア様が僕の学校生活について質問してきた。

この一ヶ月と少しばかりの学校生活がとても楽しいものだから、僕は話すのに夢中になってポーカーの方に集中しなかった。

アデリーさんとも色々と話し、楽しいなあと思っているうちに、ゲームが十回終わって僕は一度も勝てていなかった。

「集中力が重要のようですね」

ノア様の言葉で、今回僕も問題に気付いた。ゲームだけじゃなく、勉強だって集中してやらなければ覚えられないものだ。

僕の弱点も思い出させてもらえたポーカーゲームを終える時、せっかくなのでスマホで記念撮影して終了した

このみんなが揃って笑顔で写っている写真、いつかミンスさんに見せてあげたいと思った。
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