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第三章 国葬式と即位式

5 ポドールイと馬の神

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1・

ポドールイという国は、あまたの国がある宇宙文明の中でも特に特殊とされている。

宇宙文明に安定をもたらした神が楽園を消し去り、そこから旅立ったポドールイ人たちは、今暮らしているのとは違う星に移住して、そこを母星と定めた。

闇の属性を持つといっても、争いのなかった楽園生まれの彼らは穏やかな性質を持っていた。

種族的特徴として優れた予知能力を持ち、神経は細やかで人並み外れた共感力を持つ。だから同族間で争うことなどなく、戦争を一度として起こさず、神の時代の記録と生活を数万年も護り続けた。

その平和で調和した国に惹かれたのか、自分では一族を生み出すことの出来なかった馬の神がポドールイに頼ってきて、共に暮らすようになった。

闇の中で化け物になって正気を失う性質を抑えたいポドールイ人にとり、光と炎の馬の神の同居は天の助けだった。

時折フラフラと出歩くものの、ポドールイに帰ってきてくれる馬の神のことを、ポドールイ人たちは自分たちの神と思い崇めるようになった。

時代が経過し、宇宙から害意を持つ人間たちが訪れるようになった。ポドールイ人たちは彼らを撃退しつつ、息を潜めてただ隠れて暮らすようになっていった。

同じ頃、ユールレム王国が宇宙に進出して、とても遠方にあったポドールイ人たちの母星を発見して交流するようになった。

ユールレムの王族とポドールイ人は一部の祖を同じくする為に、ユールレム人を仲間として受け入れた。

けれどポドールイという特殊な一族がいる星の存在が外部に知られてしまい、より多くの侵略者たちがやって来るようになった。

ポドールイ人の中でも弱い者は、奴隷として攫われてしまった。

けれど奴隷として働くことなどなく、宇宙船に乗せられとじ込められた闇の中で化け物に変身して、自分を攫った賊を皆殺しにして宇宙をさまよう宇宙船の中で死ぬか、返り討ちで殺されるか、わずかに残った理性で自分で死ぬしかなかった。

そういう悲劇が繰り返されて怒ったポドールイ王は、ユールレム以外と国交断絶した。

穏やかだった性質を歪めるまでに他者を排斥して、受けいれない時代が続いた。

そしてバンハムーバ王国が、ポドールイ母星周辺までようやく勢力圏を拡大した頃、馬の神はポドールイ王に外に出るように促した。もう少し、他の者を信じた方がいいと。

けれど神の時代の価値ある情報と力のある宝を持つポドールイ王は、それらを守り抜くために馬の神の意見を突っぱねた。

両者は最後に酷い喧嘩をして、馬の神はポドールイから追い出された。

行く当てのなくなった馬の神は、知り合いのいたバンハムーバの龍神の神殿を頼った。

ちょうど、龍神様が一人もおられない時代だった為に、馬の神は龍神様の代わりにバンハムーバ王国の守護者となった。

神を奪われる形になったポドールイ側は、王が追い出したといっても貴重な存在を失ったことでバンハムーバ人たちを恨んだ。

そうして数千年もの間、民間の交流も含めて二国間の関係は冷え切った。

しかしほんの少しだけ、事故が原因だったりユールレム人が連れて来たという理由でバンハムーバ人がポドールイを訪れることもあったという。

時間が経過して、そのうち、馬の神はもともとあった産みの親の神への恨みを募らせ、心を病むようになった。バンハムーバからも離れ、あちこちを渡り歩いては周囲に当たり散らした。

その頃のポドールイ王はバンハムーバ人の母がおり、その故郷に行きたいと常々願っていた。

バンハムーバ王国に迷惑をかける程の馬の神の不調を知り、どうにか処置をしようと馬の神をポドールイに呼んだ。

今度は外に出たがるポドールイ王と、産みの親の神に復讐したい馬の神の間で対立が発生した。

馬の神は、どうしても説得しようとするポドールイ王も同様に憎むようになった。その手段としてユールレム国の王子に生まれ変わり、戦艦をポドールイに派遣して、今現在は製造も保有も使用も認められていない惑星破壊兵器でポドールイ人の母星を破壊してしまった。

そうして星が無くなる前に、ポドールイの人々は宝と共に別の星ファルクスに逃げて無事だったものの、王のみは星と命を共にした。

ポドールイの母星を破壊したあとの馬の神は、当時他にもまだ残っていた楽園時代の神族たちにより退治され、魂は他の宇宙に追いやられたという。

「バンハムーバ王国にとり、馬の神様は龍神様に次ぐ恩ある神です。今でも龍神の神殿内部に馬の神の像が飾られています。二万年近く過去の話ですので、その馬の神様との関わりを知る者は少なく、馬の神の像は麒麟の像とよく間違われます」

ホルンさんは、大事なことをここまで休みなく話して聞かせてくれた。

僕はここで、質問をした。

「あのう、今はバンハムーバ王国とポドールイ国は仲良しですよね?」

「ええ。私がその良い例です。ポドールイの国王であった父と、龍神の中央神殿長の娘であったバンハムーバ人の母がおります。実はポドールイ人たちは、バンハムーバ人の美しい金髪と青い目が大好きで、チャンスがあれば結婚したいと望んでいるんですよ」

「そ、そうなのですか」

「ですので、ポドールイ人たちが大勢いる場に向かう場合は、お気を付け下さいね。さて、故郷を新たにしたポドールイ人たちは、再びその星ファルクスで閉じ籠もって生きていきます。それでも仲直りしたいユールレム人たちが幾度も猛烈にアタックして、何とか国際舞台に返り咲きさせます」

ユールレム人たちの行動力が凄いのは、歴任の授業でよく知っている。幾度も起こった宇宙戦争の全部に関係しているから。

「それからは基本的に他国との外交を維持してきましたが、一万三千年前にラスベイが一部のポドールイ人たちにより支配下に入ると……また状況はややこしくなりました。ファルクスに静かに閉じ籠もりたい保守派と、ラスベイですっかり宇宙の一員になって遠慮せず何でも取り込みたい陽気な性格になっちゃった改革派に分かれました」

彼らは陽気だろうかと、イツキを見てしまった。イツキは渋い表情をしている。

「昔のような激しい対立はないものの、改革派のラスベイで国教が馬の神を崇めるものと制定され、神殿も設けられて宗教化してしまった故に、支配したりされたりすることを嫌う保守派たちとの仲は良くないですね」

「その……問題の延長上に、神族の僕がいるということですか」

「はい。もともと変化を受け入れることに積極的だったラスベイのポドールイ人たちにとり、先祖と違う種になったとしても一族の難を取り払い解放されることは願ってもやまないチャンスです。それと対照的に、ファルクスの保守派の我々は……古代の記録と道具を受け継ぐ者として、下手な変化は受けいれられないのです。神話時代の、外に出すには危険すぎる情報が沢山ありますから、我らはそれを守るために闇の一族の力すら利用するつもりなのです」

「……そうでしたか。これでようやく……大まかにですが、状況が理解できました」

「ご理解いただき、ありがとうございます」

「はい。とすると……ファルクスの保守派の方々に、ホークアイの宝玉や馬のような神の光が必要で、ラスベイの方々に、体質改善をして新たな一族となる技術が必要なのですね」

「そうですね。ショーン様は、そのどちらも我々に与えてくれようと考えているのですよね。けれど、体質改善は心を病む恐れのある技術ですよ。貴方様がもしそれを扱えたとしても、実際に使えるかどうかは別問題です」

ホルンさんがとても辛そうな目で、僕を見る。僕は不意に、その意味に気付いた。

「技術があるのですね? ファルクスに残された記録に、方法が記されているのですか」

「ちょっと待て!」

ずっと聞いてるだけだったエリック様が、鋭い声を放った。

「この神殿、クリスタにおいては、その質問の答えは永遠に聞けないことにする。いいな、ショーン?」

エリック様はとても怖い顔色をしているのに、僕を護ろうとしてくれている優しさが感じられる。

「はい……エリック様。分かりました。僕はその答えを、自分からは聞きません」

僕は、僕を護ってくれるエリック様に恩返しがしたかった。その意味だけで、受け入れた。

ホルンさんが、軽くため息をついた。

「エリック様、ショーン様はその答えを聞いても大丈夫ですよ。何故ならその技術の断片で、レリクスが生み出されましたから」

「!」

僕は驚き、胸に手を当てた。

体質改善をしようとして失敗するって、どういう意味だか分かってなかった。でもいま、強烈に現実的な感覚と共に思い知った。

死んで宝石になるような疑似生命体。そんな風になんか、させない。

「ホルン、お前、いい加減にしろ!」

エリック様が、とうとう怒ってホルンさんに突っかかっていき、胸ぐらを掴んだ。

僕は席を立って叫んだ。

「や、止めて、下さい! 僕は、確かに、大丈夫ですから」

「でもショーン…………ああ、まあ、分かった」

僕がジッと見つめると、エリック様はホルンさんの服を離してくれた。

「でも、これはかなりデカい秘密だな。ロゼマイン王は、おのれの国にその技術があるのを知らないのか?」

「知っております。そして、使わせようと思っているんです。だから私たちは、ショーン様をお守りしようと決めました」

「あ……ああ、そうだな。そうだった。済まない」

エリック様は、悪びれた顔をして下がろうとした。しかしその前にホルンさんが頭に鋭いチョップを食らわしたので、立ち止まって無表情になった。

「これでおあいこです。……で、ショーン様。このことは、出来る限り忘れましょう。ただ、ホークアイの宝玉のようなアイテムの開発については、我々も改革派も十分に援助をいたしますし、楽しみにしています。そちらの方を、よろしくお願いいたします」

「はい、分かりました。僕はアイテム開発を頑張ります!」

宝石化していたレリクスの母さんを復活させたことや、宇宙船エンジンの開発を直に体験できたことで、そちらの方の自信は少なからずある。任せてもらいたい!

「ではショーン様、今日はもうこの辺りでお開きにいたしましょう。次は金曜日の夕方の授業です。お忘れなきように」

「はーい。じゃあまた金曜日に、色々と教えて下さいね。イツキ、帰ろう!」

「今日の夕食のメインメニューは、白身魚のムニエルだそうです」

「やった、僕それ好き!」

机の上に置いてあった仮面を忘れず手に取り、お二人にお辞儀してからイツキと一緒に部屋を出た。

2・

二人が残った部屋で、エリックはため息をついて腕を組んだ。

「で、ショーンたちを追い払った意味は?」

「私に質問したいことがおありでしょう?」

「まあな。ホルンとロゼマイン王以外に、その情報を知る者は誰だ」

「表に出ている者としては、イツキ君のお父上ですね。基本的にこの情報はポドールイの歴代の王と、情報管理の役目を負う者以外は持つべきではないとされるものです。私は父から、フィルモア様はロゼマイン王から聞かされたのです」

「なるほど。それでポドールイにはわんさか優れた魔術師や技術者がいるのに、何故ショーンに頼る?」

「我々は、力があっても闇の種族ですからね」

「……光か。それが必要か。ショーンは歌であれほどの光を発生させた。光が必要ならば、十分に使えると証明してしまったな」

「ええ。しかし、光があっただけでは、人の改造は成功しません。技術の断片でレリクスたちを作り上げた人間の魔術師は、あくまで自然霊などの弱い魂を使用して……宇宙船エンジンの作り方と同じで、弱い者を進化させて通常利用できる新たな種族に作り替えたものです」

「ん? あ、そうだ! 確か今の宇宙船エンジンの作り方は、ティリアン一族の始祖がポドールイ人の聖地に入り込んで得たものだ! まさか、同じ技術か!」

「勇猛果敢なティリアン一族の始祖はきっと、その心を気に入られて守護者から一部分だけを譲り受けたのだと思います。全てが世に出回っても、良いことはありませんので」

エリックは思わぬ繋がりに驚き、うめいて苦笑いした。

「まさか、こんな事になるとは。俺がガイアスにショーンを預けたのは、彼の権力で守れることもそうだが、彼がショーンと同じで大人しい部分があり、心を良く理解して守ってくれるだろうと期待したからだ。それがまさか、こんな繋がりだったとは」

「私もティリアン一族に頼ると決められた当初は、まさかこうなるとは思いもよりませんでしたよ。でも今となっては、ショーン様のためになると思えます」

「そうだな。そうなればいい。それで……さっきの、光だけでは人の改造が成功しないの意味は?」

「それは、ポドールイ人のような既に完成された高度な肉体の改造を行う場合、強すぎる光の力を精密に操る熟練の技が必要になります。ショーン様が技術の準備がなく実験を行った場合、実験体は百パーセント燃え尽きます。しかも魂も全てです。後には何も残りません」

「……より化け物になる方が救われる状況じゃないか!」

「ええ。しかも光に敏感なポドールイ人を扱うのですから、他の人間を改造するより難易度が高いのです。ショーン様が闇に変身しないポドールイ人を作成可能になった時には、尊い犠牲者は数万人に及ぶかもしれません」

「そんなことさせられるか! いやそれより、ロゼマイン王はそれを実行するつもりなのか!」

「はい。無理矢理にではなく、説得させる形でショーン様に協力してもらおうと思っているようです。あの感情豊かなショーン様は、いつかその言葉に涙して、力を貸すかもしれません」

エリックはよろけ、ショーンが使っていた椅子に座った。

「あり得る話で、困りすぎて倒れそうだ。あ、いや、その犠牲者はどうやって工面されるんだ? まさか同じ一族の中で奴隷制度を作るとか、軍人を命令で従わせて使うつもりか?」

「いいえ、志願者でまかなわれます」

「まさか。おい、魂まで失われるんだ。誰がそんな実験に志願するんだよ? それ、絶対に魔法で操られてるぞ」

「いいえ、エリック様と同じですよ」

「はあ? なにがどう同じだと?」

「親というものは、自分の命を投げ打ってでも我が子を幸せにしたいのです」

「──っ」

エリックはショックすぎて、しばらくまばたきを忘れた。

「だ、だだだダメだ! 余計に問題が大きくなる! ショーンの心が壊れるし、子供たちは親を魂まで亡くしたショックで一生さいなまれる! 親は子供のために命を賭けたらダメだ!」

「そのお言葉、貴方の子供たちに聞かせたいですね」

「おい、いまは茶化すな。特大ブーメランなのは分かっている。それでも、そんな実験は絶対に阻止すべきだ」

「でも、彼らは正しい心で行動しています。我々も、守るべき者を守るために戦おうとしています。この問題には、正解がありません」

「あー、とにかく生け贄は止してもらう。その為もあって、ショーンはクリスタから出さない」

「それが賢明ですね。でも……」

ホルンが考え込んで俯いたので、エリックは動揺した。

「な、何か他に問題が?」

「ええその……不思議な気配と感情があります。このポドールイ人に関する一連の問題が、全く予期していない別の視点から根本的に変化させられる予感のようなものなのですが……詳しくは読み取れません」

「それは、お前のポドールイ人としての能力の限界か? 最近は手強い敵ばかりが来てるから、読み取れないのは仕方がない」

「そうですね。そうだと思います。でも、それともう一つ理由があります。ポドールイ人に限らず、運命を見る目を持つ者は、得てして自分自身の運命を読むのが苦手です。つまり、何故だかこの宇宙規模で大事な問題において、私が強く関与するような予感があるのです」

「……そうか。それは良いことか?」

「どうでしょうか。良いや悪いでなくて、変……としか言いようがないです。これからしばらくは、この問題に重点を置いて解き明かす努力をしてみます」

「うん……頼んだ。ただ、無茶するなよ」

「はい。出来る限り無茶しません。ま、いつも通りです」

ホルンの台詞で思わず笑った二人は、お互いがこれからも長く傍でいてくれる友人であることを望んだ。

3・

懸念があり、ロックの国葬式に出席しないと決めてクリスタに渡る準備を止したロゼマインは、ふと通り過ぎた風に気付いて城の窓からファルクスの空を見上げた。

スマホを取り出し、クリスタの迎賓館にいるフィルモアに連絡を取る。

「ロゼマイン様。あの話ですね?」

「そうです。わずかながらあった予兆が、詳しく読み取れるようになりました。悪いとは思いますが、ホルン殿に犠牲になっていただくしかありません」

「どうやら、彼本人がこの運命に気付いた故に、現実味を強く帯び始めたようです。彼に詳しい事情を説明し、より理解していただかねば」

「彼は必ず承諾します。しかし、今は状況が悪いですね。他の保守派やバンハムーバ側に知られては、このわずかな希望は生まれることなく消え去ります。ホルン殿をファルクスに呼びだし、城で話をしましょう」

「では、国葬式と任命式の後になりますが……先にもう一人の候補者の選定をした方が良いでしょう」

「そちらの部下を動かしてください。私はしばらく、ラスベイに戻らない方が良いでしょう」

「了解しました。では」

フィルモアは電話を切った。

「馬の神よ、どうか我らに祝福を……」

ロゼマインは強く望み、手を組んで天に祈りを捧げた。
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