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第1章 護衛騎士は交易の要の街に行く
護衛騎士は飛び跳ねる
しおりを挟む翌朝早朝、遠くから何かの振動を感じて目を覚ましたシャーロックがいたのは、ふかふかのベッドの上ではなく固くて少し湿った地面の上だった。
「え??」
見回すとそこは木々が生い茂った森の中。
かすかに潮の匂いがするので街からさほど遠くない場所だと思われる。
しかし、移動した覚えも着替えた記憶もなにもない。
それなのに自分の服装は旅の間に着慣れた軽い防具を着けたいつも通りの恰好をしているし、傍には愛用の剣も置いてありこれもいつも通りだ。
ぐるぐる巻きにされた己以外は
「んんん??」
ぎっちぎちに締められていてお高いハムになった気分…実際は足まできっちり縛られていてハムというより蛹に近いのだが生憎と今現在周りは誰もいないのでそれを指摘する人はいない。
何度か跳ねたり転がったりしてみても縄が緩んだりしてこないのを確認してからやっと愛剣の存在を思い出し、四苦八苦しながらなんとか鞘から出し、いざ縄を切ろうとするとふとさっきから遠くに聞こえていた地響きみたいな音がどんどん近付いてきている事に気付いてシャーロックは道の先へと顔を向けた。
「は?!魔獣!?」
そこにいたのは、大量の暴れ牛かなと思っていたシャーロックは予想とは違い魔獣でした。
魔獣というのは動物が魔石を広い食いしたり、魔力スポット的なものに落ちると変質し、あちこちに出没する危険な動物で、暴れることにしか本能が働かないらしく、現れた所の被害が甚大になる。
その前に魔獣が出現するとそれを討伐するのも騎士団の仕事の一つだ。
「なん、だって、こん、な!ぎっちぎちに、してあるん、だよ!!!このおらあ!」
虫の幼虫の様に這ってなんとか近くの茂みまで移動し、愛剣で縄を切りこれまた虫の幼虫の様に木をするすると登りなんとか魔獣の群れを回避することに成功した。
「あっぶな」
「シャーロットちゃん無事ですか?!」
「へ?」
いまの甲高いけど物言いは子供らしくない声は…
「殿下?!」
間違いなく自分の仕えている主ー王女殿下の声なのだが、本人が見当たらない。
きょろきょろと木の上から下を見下ろす。
が魔獣の通った痕しか見えない。
「上です」「うええええ?!」
今度は侍女の声が聞こえ、その声に言われた通りに上、つまり空を見ると…侍女にだっこされた王女殿下が空にいました。
しかも姫だっこ。相変わらず男らしい侍女だ。
「ごめんなさい失敗して貴方を落としてしまったの…」
しゅんとしてこちらを見てくる殿下。侍女は…笑顔が怖いって!!
「イエ、アノ、ダイジョウブデス。ムキズナノデ」
カタコトになってしまった。
臣下に謝る殿下に動揺したんです。はい。
良かったと殿下が笑って再び魔法を使って俺共々空へ。
さっきの魔獣の群れを追うみたいです。
それにしても…
「殿下って飛行魔法まで使えるんですね」
「ええ。今はあまり長く使えないけれど」
「そうなんですね、やはり殿下は素晴らしいですね」
「??」
訳が分からないという顔をされたので思ったことをそのまま伝える。
「その歳で強力な魔法を使えるようになるだけでも凄いのに更に飛行魔術まで行使できるなんて素晴らしいとしか言いようがないです!!城に戻ったら是非また俺と鍛錬してください!!」
おおきく目を見開いて聞いていた殿下でしたが、最後の一言で一瞬に半眼になりました…解せぬ。
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