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第1章 護衛騎士は交易の要の街に行く
護衛騎士追いつきそして置いていかれる
しおりを挟む朝靄の中街道に佇む黒い塊、シャーロックは通るかわからない人物達を待っていた。
手紙を渡されてから数分で宮殿を出発し、夜通し駆けて日が昇る直前にようやく手紙に書かれていたレヴィーに到着した。
が、時間的に店はおろか人の影もなく、彼女らがいるのかどうかもわからず、いるならば必ず通るはずのこの街道で待つことにして今に至る。
「ほんとにいるのか…?」
足が速い自分の馬でも夜通し駆けてやっと着いた街だ。女性(しかも小さい子供を乗せて)が早く着ける訳が…
「おはようございます、シャーロットちゃん」
「!?」
つらつらと考えていたところに突然入り込んできた聞き覚えのある甲高い声。
俺は反射的に顔を上げて、ゆっくり視線を下に降ろしていく。
そこにいたのは、淡いピンクの服を着て、ハニーゴールドの髪を背中で大きな三つ編みにしているエメラルドの瞳の幼女
自分の護衛対象
がいた。
「おはようございます。シャーロットちゃん」
呆然と眺めていると、挨拶を強調されもう一度同じこと繰り返す。
「おはようございます殿下。」
殿下はにっこり笑顔で頷いた。奇襲に成功したからなのか、それとも挨拶が返されたからなのかとても嬉しそうだ。
「追いついて来るとは思いませんでした」
「ありがとうございます?」
「今後もついて来るつもりかしら?」
「当然です。俺は殿下の護衛騎士です」
そう言い切ると殿下は少し驚いたような顔をした。
なんでだ?
「奇襲しかしない者は護衛騎士とは言えませんのよ?」
ぐぐ、正論です…でも…
「それは殿下がお強くていらっしゃるのでつい…」
「…」
「今後仕事中はそんなことしません絶対に…!」
「・・その言葉違えたら陛下に言いつけますね」
いい顔で脅されました。違えません。絶対に!!
ということでなんとか殿下と侍女ではなく、お嬢様と坊っちゃま(?)の護衛として同行することになりました。
それにしても…
「なにか僕に言いたいことでも?」
笑顔でじじょ…ではなくぼっちゃまが聞いてきます。
まだ何も言ってませんよ、まだ。
「別に何も」
「…そういうことにしておきます」
黒い笑顔で愛馬に戻っていくじじょ…ぼっちゃま。
ぼっちゃまは普段の侍女服とは違い、淡い色のブルーのシャツに黒のベスト。黒いパンツに腰には細身とはいえしっかりしてそうな剣を穿いた少年の姿。
うーん。
どこからどう見てもその姿は男だ。うん。
まだ少年ぽさが残った男に見える。
つまり何が言いたいかというと…
出るとこ出てない。
うん。
口に出したらヤバいのは分かってる。
思うくらいは良い…はず、ぼっちゃまの視線が突き刺さっている気がするけど…!
「シャーロットちゃんそろそろ行きますわよ」
ぼっちゃまの馬に相乗りした殿下…お嬢様に声を掛けられたので慌てて愛馬に乗り横に並ぶ。
じ…ぼっちゃまの視線がチリチリ痛いです…
「では行きましょう兄様」
殿下…お嬢様に声をかけられ笑顔になるじ…ぼっちゃま。
「そうだね。こんなのに構っている場合じゃなかった。」
“こんなの”にすごく力が入ってますね、ぼっちゃま…
大変まっ黒い笑顔で街道を掛けて…って速っ!!
見る間に引き離されていく距離に流石に焦る。
ついうっかり行き先聞いていなったので置いて行かれては今度は追いつけない、多分。
「悪いアル頼む」
愛馬に声をかけて走り出す。
粒になった馬影を追って街道を北へと進む。
一体彼女らはどこに行くのだろうか…。
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