婚約者が一服盛ってくるのでお礼に実験体にしてみた

腹痛のお礼にムラムラをあげましょう。まずは準備です

    婚約者がじっと無言で此方を見ていますが気にせず一気に腹痛薬入り紅茶を喉に流し込む。



この薬は即効性じゃないので慌てる必要は無いです。



まあ、後から死ぬ程腹痛になるんですけどね。



    この薬は簡単に言うとイタズラ用に作ったお遊びの薬です。



例えば、気に入らない上司に数滴を盛るとあら不思議。


たちまち腹痛でのたうち回ってしまうという代物です。



    はい、それを婚約者に盛られました。



まあ私普段から試薬で飲んでますから耐性はあるんですけどね？



でもね……多分だけどこれほぼほぼ原液なの。



腹痛薬in少しの紅茶。



    わかる？数滴で腹痛になってのたうち回る薬を1瓶丸ごと飲んでるこの状況。



用法用量くらい守って欲しいわ。ちゃんと瓶に使い方書いてあるはずなのにね。



え？分かってるならなんで飲んだんだって？



『盛られたら盛り返す倍返しだ！』



て昔師匠が言ってたの。



という事でやり返す為の準備をしないとですね。



丁度いい試作品を作っていた所だったので、腹痛で倒れる前にさっさと完成させましょう。



    婚約者がソワソワして私の様子を見ているけど一気飲みしたカップをソーサーに戻してそのまま立ち上がる。



「ジュリアンナどうした？」



期待した様な顔で此方を見てきますが残念ながら遅効性ですので今の所は何ともないですよ。



「帰ります」



「え」



「では、また来月にお会いしましょう」



「待ってくれジュリアンナ、身体は大丈夫なのか」



「は？」



一服盛っておきながら何言ってくれやがるんでしょうかこの婚約者は



    思いっきり私の腕を掴んで何故か引き留め様としてきます。が、相手の腕を掴んで反転し逆に体重を掛けて無力化させた。



「ぐっ…」



「では、失礼します。」



    乗せていた体重を離し、相手が立ち上がる前にすかさず距離を取りそのまま庭園から立ち去る。



後ろから婚約者が、



何か身体に異変があったらすぐ私に会いに来てくれ。私なら何とか出来るから！



と叫んでいました。



いやいや何言ってんだ作った本人私が誰よりもこの薬に詳しいのだから自分でなんとかしますよ


と心の中で反論しつつ、徐々に痛くなる腹痛に耐えながら我が家に辿り着き(屋敷に帰り着いた時は汗だくでした)、2重服用になるのであんまりしたくないですがこれ以上酷くなる前にということで痛み止めの薬をがぶ飲みしてからお礼の薬を調合を始めました。


◇◇◇◇◇◇



    師匠から『お前にはまだ早いかもしれないがいつか必要になるかもしれないから』とムラムラする薬というレシピと材料がこの前送られてきていて、絶賛制作中です。



ただ、ムラムラって何か分からないのよね…



まだ早いって事だから調合が難しいのかと思えば他の薬と大差は無い。むしろ簡単。が、試飲してみても特に何もおこらないしムラムラという現象も無いので現在行き詰まっている。



ので、これをたっぷり盛ろうと思います。



きっと薬に耐性があるせいで効き目が悪いと思われるので、その点婚約者なら健康第一な騎士ですから何かしら私の時とは違う結果になってくるはずです。



    という事で残っていた材料の半分を使ってムラムラ薬を作ります。



材料
・師匠から送られてきたもの
・綺麗な水
・夢見薬
・催眠薬
・妖精の粉
・ドラゴンの逆鱗


必要なもの
・すり鉢
・大きめのガラス瓶、棒
・鍋
・炎   etc…



材料の中身は胡桃やらなんかの種やらが雑多に一纏めに袋に詰めてあり、選り分けに苦労したのが懐かしい…



のは置いておいて、レシピの分量×5をまずは鍋で焼き、焦げる前に取り出して粗めにすり潰し再び鍋に戻して更に水と作っておいた夢見薬と催眠薬を混ぜて煮込む。



水が虹色になればろ過して完成とレシピには書いてあるのだが、これだとムラムラしないのは体験済み、という訳で更に手を加えてみようと思います。



ろ過した薬をガラス瓶に流し込み、そこに妖精の粉と砕いたドラゴンの逆鱗を入れて更に混ぜる。


すると虹色だった水がキラキラした無色透明の液体になった。



「おお…！上手く出来たっぽい！！」


元々の材料が夢見薬と催眠薬を入れる物だったので、そこに更に幻惑作用のある妖精の粉とスパイスとして逆に興奮作用のあるドラゴンの逆鱗を加えてみたところどうやら上手いこと完成したようだ。



その証拠にキラキラと薬自体が輝いていて、多分ムラムラ薬上位種くらいにはなったと思う。



    自分の勘と経験で上手いこと成功したのでにんまり顔になるのはしょうが無い。



「ふふふ」



首洗って待ってろよ婚約者！すぐにお礼参りに行くからな！！



「あーっはっは！！！」



    ガラス瓶片手に笑う令嬢…長い茶金髪と相まって不審者極まりないが本人は気付かずに満足そうに薬を眺めていた。




因みにこの後相殺しきれなかった腹痛により1週間程寝込んだ。