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つよがり
しおりを挟む沙那さんはきっと間違っていない。
だけど本当は何もかも捨てていいくらい、俺を好きになって欲しかった。
涙が頬を伝うのを感じて慌てて背中を向ける。
「沙那さん、お幸せに」
「……ありがと……結輝」
「沙那は俺が責任持って幸せにするから」
御山さんなら、きっとそうしてくれる。なんだかほっとして肩の荷が軽くなった気がする。
御山さんの言葉に安心して、それでもまだ涙が止まらない。
悔しさと悲しみで
自分が自分であることが、こんなに辛いなんて……
人のいない方へと大股で急ぎながら自分のなかには悲しみが降り積もっていく。
俯いた視界に白いものが写りミオの声が聞こえる。
「……結輝……」
今、一番会いたくない人と、会いたくないタイミングだった。
「……情けない、振られた」
顔は上げられなかったけれど、声は震えずに……ちょっとは笑えた。
両手でゴシゴシと乱暴に涙を拭う。喉にまで流れた涙が口にまでしょっぱい。
「よく頑張ったじゃない」
顔を上げた俺の目の前に、やわらかく笑うミオがいた。
「あんなの負け惜しみでしかないよ」
御山さんとなんて勝負になってなかった。それが悔しい……
「結輝の良さをわかってくれる人もいるよ……多分」
「多分てなんだよ。からかいに来たのか? 」
睨みつけても怯まない。
「そんな訳ないでしょ。ヒマじゃないし」
腕を組んで見上げてくるミオは勝ち気な顔をして、そして笑っている。
ああなんか写真撮りたい。そう思える顔だった。ミオがミオであるような、そんな顔をしていた。
「あっそ。ヒマ潰しにもならなくてすみませんね」
ミオになら、こんなに自然に憎まれ口が出てくるのに。
ふっと自然にわらいが浮かぶ。これじゃ沙那さんと付き合うの、無理してたみたいだ。
好きかと聞かれたら、間違いなく好きだ。でも、好きよりも憧れの方がずっと大きかったみたいだ。
被写体として、人間として沙那さんを好きだ。
それだけは確かなことだ。
強がりだっていい。今はそう思いたい…
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