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第三章 この世界の不条理
第64話 同級生とのお別れ
しおりを挟む「なにこれ?どう見てもラブホテルじゃない?」
「はははっ否定はしない」
考えてみれば、ラブホテルに住み込んでいるような状態を同級生の女の子に見られるのは少し恥ずかしいな。
「理人、どうかしたのか? 早く入ってアポイント取らないと、待たせる事になるよ」
「お兄ちゃん、早く入ろう」
「ちょっと待って私達も…」
「勇者麗華様、此処は男性保護施設なので男性とパートナーになっていない方は入れません、此処でお待ちください!」
ギギギッという音が聞こえた気がする。
同級生の首が俺の方に向く。
麗華さんを含む同級生に睨まれている気がする。
「はははっ、そう言う事だから直ぐに話をしてくるから」
この施設を前に今の話『やっているんだろう』
そう思うのが当たり前だよな。
そりゃ、白い目で見られても仕方ないよな。
皆が魔王討伐のきつい戦いをしているなか、俺だけほぼ『やっていた』だけだからな…
視線が怖いから、サッサと呼びに行こう。
◆◆◆
なんだかなぁ。
男性保護施設…ほぼ、ラブホの建物の大広間に女王に王女、公爵…そして魔王が居る。
皆、凄い人物なのに、此処で見るとコスプレ会場に見えるのは何故だろうか…まぁラブホの一室みたいな場所だからだな。
「よくぞ戻られました、勇者麗華とそのパーティの皆さま、旅の途中ですが、この度、魔族との和平が決まりました…今迄、辛い旅ご苦労様でした…特に成果はございませんでしたが、この世界の我儘の為に皆さまを振り回しました…望む褒賞には出来るだけ応えますので何でも言って下さいね」
こうして見ているとマリアンヌが女王だってのが…あっ小声でシャルナが話している…う~んなんだかな…
「あの、元の世界に戻れるのでしょうか?」
「それは可能です! 元の世界に戻す事は出来ますが、この世界から何もそちらの世界に持ち込む事は出来ません…その代り、貴方達が居なくなった時間帯とほぼ同じ時間帯に戻す事も可能です…男性もお望みなら理人様以外は全員戻します…少し時間は掛かりますが、男性の方の女嫌いも治る筈です」
「そうですか…その少しとはどの位の時間が掛かるのでしょうか?」
「おおよそ3週間ほどだと思います」
「逆に、この世界に残った場合はどの様待遇になるのでしょうか?」
「子爵の地位と領地、領地は代官に納めさせて、ある程度、遊んで暮らせる生活は約束しますよ!ですが、男性との恋愛は諦めて下さい! その理由は解かりますよね」
「そうですか…その二択から選べば良いのですね…案外良心的なのですね」
この世界に来てから、彼女達は何か活躍したという事は聞いて無い。
サキュバさんの話では四天王どころか幹部との交戦もなかった。
そう考えたら高待遇と言えるかも知れない。
恋愛が出来ない。
それを除けばだけど…
「それでどう致しますか? 好きな方をお選び下さい…ですが、送還の魔法は私達だけでなく魔族側の力を借りる必要があるのです。今現在、魔王であるサキュバ殿がおりますが、何時までも滞在してくれとは言えません、申し訳ございませんが明日までに結論を出して下さい」
これは嘘だ…サキュバさんは此処に入り浸っているから、それは無いな。
「結論を急がないといけないのは解りましたが、誠意ある対応、解りました、明日までには必ず結論を出します」
「解りました…なお、今回の送還で帰らなかった方は二度とは元の世界に帰る事は出来ません! これは決して意地悪では無く法則による物です…その点はご容赦下さいね」
「解りました、皆、こう言う話だけど良いかな?」
「まぁ、文句ないわね」
「仕方ないか」
「「「「「「「「「「うん」」」」」」」」」」」
どうやら麗華さんが中心になって話をする事で決まっていたようだな。
「それでは、皆さま、今日の宿はとりましたから、そちらに移動下さい」
まぁ此処は男性保護施設だから、そうなるよな。
「それじゃ、理人またね…」
麗華さんは意味深な言葉を残して他のクラスメイトと共に去っていった。
◆◆◆
「嫌だぁぁぁぁーー俺は引き篭もりたいんだぁぁぁーーー」
「女が、女がいる…部屋に、部屋に返してくれー」
「たっくん…そんな…私が解らないの」
「そんな悲しい顔しないの…あと少しの我慢だから」
「そうだよね…」
これ戻ったあと大丈夫かな…
戻った後3週間この状態が続くんだよな。
結局、麗華さんを除く女の同級生全員が帰還を望んだ。
男の同級生は「正常な判断が出来ないから」と強制送還になった。
「それじゃ、皆さま魔方陣の中に入って下さい」
そのサキュバさんの声でクラスの皆が魔方陣に入った。
男はミノムシ状態で放り込まれていた。
「それじゃぁね、理人くん」
「さようなら…」
それ程仲が良かった訳じゃない。
だけど、同じ国に生まれて同じ学校に通っていただけ…それなのに…何故か、凄く寂しく感じた。
魔方陣は光り輝き…同級生たちは光となり消えた。
そう言えば…
「麗華さん、帰らなくて良かったの?」
「ええっどうせ帰っても南条財閥の籠の鳥、なに一つ自由は無いですから此処の生活の方がまだましですから」
「大樹の方は良いの?」
「ええっ、私この世界に来て、すぐに夜這いをかけました…ですが鬼のような形相で拒まれて…大樹が悪くない、この世界が悪い…それは解るのですが、あの顔にあの声、思い出すだけで腹が立ちまして、どうしても許せそうもありませんからね」
「そう?」
「それに、南条の帝王教育があればこの世界でもやれる気がします…爵位に領地が貰えるなら頑張ってみますわ」
凄いな、自分の力で頑張るのか…
やっぱり麗華さんはカッコ良いな。
「そう言えば、此処に入るには理人と『友達』にならないと駄目なのよね?」
「そうだね」
「それじゃ理人、友達になってくれない?」
「麗華さん、意味解っている」
「あはははっ、別に理人とそういう関係になりたい訳じゃ無いよ…今はね、ただ『資格』が無いと此処に入れないでしょう、この世界で数少ない同郷の仲間に会えないなんて不便じゃない?だからよ!」
「あっ、そういう事なら、登録しよう」
「うん」
こうして麗華さん以外、全ての同級生が日本へと帰っていった。
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