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第三章 この世界の不条理

第60話 シャルナとサキュバ

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「それで、今後はどうして行こうかしら?」

今現在、私と魔王サキュバは未来について話している。

この計画の要は種族の統合にある。

この計画が成功した時…初期の子供たちは全て理人の遺伝子を継いだ存在となる。

片親が理人になると言う事は『半分の種族は同じ』という事。

そして、その遺伝子を継いだもの同士が婚姻を結び子供を産んでいく。

やがて、世界は理人の遺伝子を継いだ存在で埋まっていく。

今迄いがみ合っていた人類と魔族が将来的に無くなっていき、一つの種族になれば、もう魔王も勇者も関係なくなる。

魔族、人族が時間を掛けて、魔人族という新しい種族になれるかどうか…

それを今後考えていく必要がある。

当初此処迄考えた訳じゃ無かったわ。

だけど、『理人』という正常な遺伝子を持つ『男』の存在により、その可能性が出て来たのよ。

「しかし、思った以上に壮大な話になったな。種族を越えた。いや種族の垣根が無くなってしまう壮大な計画! 停戦迄でも凄い話だったのに…此処迄話が大きくなるとは思わなんだわ」

「そうね! 私も思わなかったわ! 当初は理人との子作り権で話が終わり…その結果停戦がもたらされる!そこが着地地点かと思ったけど、まさか、此処迄話が進むとは思わなかったわよ」

「ふぅ、お前の所の色ボケ女王もなかなかじゃないか?」

「ふん、いつも真面なら私も苦労しないわ、まさか『私達から生まれる子供もキリネさんから生まれる子供もお父さんは理人ちゃんなのよね』なんて言い出すんだから! あの方、普段は本当に馬鹿なのに、ここぞという時は何故か、本質を見抜くのよね」

「案外、色ボケ女王も仮面なのかも知れぬな」

「そうね…最近気がついたのだけど、あの方は色ボケじゃなくて『怠け者』なのよ!本当は何でも出来る癖に、私に押し付けて遊びまくっているのよ!」

「うむ、魔王である我との会談でも『シャルナちゃんに任せたから大丈夫よ~それじゃ、さいなら~』と理人を連れて逃げようとしていたからな」

「本当に恥ずかしいわ!しかも、最近ではマリン様迄…『お母さまが任せたのであれば、私が口を挟む事はありません』そうやって逃げるし…ハァ、以前は凄く聡明だったのに…似てきたのよね」

「まぁ、見ていれば解る…それで、将来的にはどうするつもりなのだ!」

「魔王様と呼ぶべきかしら?」

「サキュバで構わぬよ」

「それじゃ、サキュバ、最終的な結果は150年後になるわ、尤も最初の判断は、理人と人間との間に生まれた子、理人と魔族の間に生まれた子…その二人の間に子供が出来、問題がないか…そこだと思うのよ」

「確かに、そうじゃな」

「その子達の経過を見ながら150年後に結論を出す…そんな所じゃ無い? サキュバ、悪いけど私達人間は短命なのよ…150年後を私達は決して見ることはないのよ」

「人間とは本当に不便なんだな」

「ええっ、そうね…だけど、あのお花畑王族の子孫だもの!『国なんて必要ないからあげます』って言いそうね」

「たしかに、マリアーヌ女王やマリン王女の子孫なら言いそうな気がする」

「そうね、私は150年後は見る事が出来ないけど! 貴方達、魔族と人間の統合、楽しみにしているわ」

あの色ボケ女王が言い出した『私達から生まれる子供もキリネさんから生まれる子供もお父さんは理人ちゃんなのよね』から始まったこの計画。

まさか、此処迄大きな話になるとは思わなかったわね。

「それで、シャルナ、理人以外の異世界人はどうするのじゃ? まさか此処に我が居る事で戦わせるとは言わぬよな(笑)」

「それが問題なのよね!この世界のせいで愛する人を失っているわ、その反面、この世界での実績はゼロなのよね! 此処迄来たらもう活躍の場は無いし、この世界に居たいなら、ある程度の地位と褒賞を与える事にして、帰りたければ送還の用意をしようと思うのよ…力貸して貰えない」

「勇者は元から我の天敵だから、送還するのであれば、力を貸そうでは無いか」

「助かるわ!噂では理人を取り戻そうとしているらしいけど、彼女達は元の世界に戻れば、他の男性を選べるわ、まぁ男の方は可哀そうだと思うけど…これでおさまる筈よ」

「まずは、それが一番の問題だな…その交渉もお主がするのか?」

「ええっ」

「我はお主とキリネを交換したくなったわ」

「遠慮しておくわ…どうせ仕事を押し付けるのでしょう?」

「まぁな」

この交渉が終わったら、うん、私も理人に癒して貰おう。

本当に疲れるわ。








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