60 / 77
第三章 この世界の不条理
第60話 シャルナとサキュバ
しおりを挟む「それで、今後はどうして行こうかしら?」
今現在、私と魔王サキュバは未来について話している。
この計画の要は種族の統合にある。
この計画が成功した時…初期の子供たちは全て理人の遺伝子を継いだ存在となる。
片親が理人になると言う事は『半分の種族は同じ』という事。
そして、その遺伝子を継いだもの同士が婚姻を結び子供を産んでいく。
やがて、世界は理人の遺伝子を継いだ存在で埋まっていく。
今迄いがみ合っていた人類と魔族が将来的に無くなっていき、一つの種族になれば、もう魔王も勇者も関係なくなる。
魔族、人族が時間を掛けて、魔人族という新しい種族になれるかどうか…
それを今後考えていく必要がある。
当初此処迄考えた訳じゃ無かったわ。
だけど、『理人』という正常な遺伝子を持つ『男』の存在により、その可能性が出て来たのよ。
「しかし、思った以上に壮大な話になったな。種族を越えた。いや種族の垣根が無くなってしまう壮大な計画! 停戦迄でも凄い話だったのに…此処迄話が大きくなるとは思わなんだわ」
「そうね! 私も思わなかったわ! 当初は理人との子作り権で話が終わり…その結果停戦がもたらされる!そこが着地地点かと思ったけど、まさか、此処迄話が進むとは思わなかったわよ」
「ふぅ、お前の所の色ボケ女王もなかなかじゃないか?」
「ふん、いつも真面なら私も苦労しないわ、まさか『私達から生まれる子供もキリネさんから生まれる子供もお父さんは理人ちゃんなのよね』なんて言い出すんだから! あの方、普段は本当に馬鹿なのに、ここぞという時は何故か、本質を見抜くのよね」
「案外、色ボケ女王も仮面なのかも知れぬな」
「そうね…最近気がついたのだけど、あの方は色ボケじゃなくて『怠け者』なのよ!本当は何でも出来る癖に、私に押し付けて遊びまくっているのよ!」
「うむ、魔王である我との会談でも『シャルナちゃんに任せたから大丈夫よ~それじゃ、さいなら~』と理人を連れて逃げようとしていたからな」
「本当に恥ずかしいわ!しかも、最近ではマリン様迄…『お母さまが任せたのであれば、私が口を挟む事はありません』そうやって逃げるし…ハァ、以前は凄く聡明だったのに…似てきたのよね」
「まぁ、見ていれば解る…それで、将来的にはどうするつもりなのだ!」
「魔王様と呼ぶべきかしら?」
「サキュバで構わぬよ」
「それじゃ、サキュバ、最終的な結果は150年後になるわ、尤も最初の判断は、理人と人間との間に生まれた子、理人と魔族の間に生まれた子…その二人の間に子供が出来、問題がないか…そこだと思うのよ」
「確かに、そうじゃな」
「その子達の経過を見ながら150年後に結論を出す…そんな所じゃ無い? サキュバ、悪いけど私達人間は短命なのよ…150年後を私達は決して見ることはないのよ」
「人間とは本当に不便なんだな」
「ええっ、そうね…だけど、あのお花畑王族の子孫だもの!『国なんて必要ないからあげます』って言いそうね」
「たしかに、マリアーヌ女王やマリン王女の子孫なら言いそうな気がする」
「そうね、私は150年後は見る事が出来ないけど! 貴方達、魔族と人間の統合、楽しみにしているわ」
あの色ボケ女王が言い出した『私達から生まれる子供もキリネさんから生まれる子供もお父さんは理人ちゃんなのよね』から始まったこの計画。
まさか、此処迄大きな話になるとは思わなかったわね。
「それで、シャルナ、理人以外の異世界人はどうするのじゃ? まさか此処に我が居る事で戦わせるとは言わぬよな(笑)」
「それが問題なのよね!この世界のせいで愛する人を失っているわ、その反面、この世界での実績はゼロなのよね! 此処迄来たらもう活躍の場は無いし、この世界に居たいなら、ある程度の地位と褒賞を与える事にして、帰りたければ送還の用意をしようと思うのよ…力貸して貰えない」
「勇者は元から我の天敵だから、送還するのであれば、力を貸そうでは無いか」
「助かるわ!噂では理人を取り戻そうとしているらしいけど、彼女達は元の世界に戻れば、他の男性を選べるわ、まぁ男の方は可哀そうだと思うけど…これでおさまる筈よ」
「まずは、それが一番の問題だな…その交渉もお主がするのか?」
「ええっ」
「我はお主とキリネを交換したくなったわ」
「遠慮しておくわ…どうせ仕事を押し付けるのでしょう?」
「まぁな」
この交渉が終わったら、うん、私も理人に癒して貰おう。
本当に疲れるわ。
1
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説
男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る
イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。
《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。
彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。
だが、彼が次に目覚めた時。
そこは十三歳の自分だった。
処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。
これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる