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 寝取りたくないが寝取ってしまった

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再び、僕は転生した。

何故か前の記憶はあった。

「神の寵愛」を持っている僕はかなりの確率で「勇者」になるかもしれない。

だから、僕は小さい時より体を鍛えた。

親は「猟師」だったので好都合だった。

小さい時は友達も作らずにウサギを追いかけていた。

野生動物と追いかけっこするのは実に体つくりには良い。

4歳にしてウサギに追いつき捕まえるようになった。

そんな僕を両親は凄く喜んだ。

「がははははっ、流石は俺の息子だ最高の猟師になるぞ」

褒めてくれる。


もし「勇者」にならないなら猟師になっても良い。

そう思えた。

僕は暇さえあれば山に居た。


もし、僕がまた勇者になった場合に誰かの女性を奪いたくない。

だから、極力人との付き合いを避けた。

僕が綺麗だ...そう思った為にロザリーが聖女になってしまったのだから、もうそんな事はしたくない。


毎日、猟に明け暮れていた。

猟といっても僕は銃を使わない。

基本、ナイフ一つで敵を仕留めていた。

このまま勇者にならない人生..そんなことを夢見ていた。

だが、無情にも..成人の儀式前に僕が勇者になるかもしれない。

それが解ってしまった。

それは、僕が「空歩」が出来てしまったからだ。

その技は文字通り、空を歩く事が出来る。

このスキルは騎士であっても身につかない勇者固有のスキルだ。


人里に出るのが怖くなった。

僕にはロザリーの死んだときの顔が色濃く記憶に残っている。

だから、「女の子とは関わらない」そう決めた。


自然に決まってしまった「聖女」や他のジョブの人までは責任は持てない。


「凄く、仕事熱心なのは関心だけど、母さん、貴方が心配なのよ! 友達と遊んでも良いのよ」


「僕は父さんみたいに魔獣すら倒せる猟師になりたいんだ..」


「がははははっ..えれえぞセイル」


「貴方、だけどそれじゃセイルの嫁はどうするの? 近くの女の子と遊ばないと将来が心配だわ」


小さな村では、かなりの率で幼馴染と結婚する場合が多い。


「大丈夫だよ母さん、僕は母さんの子だもん」

「そう..そうよね」

「セイル、それはどういう事だ」



10歳にして猪の変異種の魔獣すら狩れるようになった。

14歳の時にはこの山の主すら狩った。


ゴブリンにオークも狩った。

沢山、沢山狩った。


もし、僕が勇者になったら..国からお金は出るけど、自分の手で親に何か残したかった。

そして15歳になった。


成人の儀式

近隣からきた5人と一緒に僕は並ぶ。

神官様から紙を貰い神官の杖に合わせて祈りを捧げる。

すると、紙に自分のジョブが出てくる。

普通、それだけだが、僕の時は女神が降りて来た。


周りの人は嬉しさで興奮しているけど..僕にとっては余り良くない。


女神が降りてきて...真っすぐに僕の方に向かってきた。

女神は僕の手をそっと握った。

これは勇者のジョブの場合に起こる現象だ。

「これは凄い、何とセイル、いやセイル様のジョブは勇者だ」


僕は戸惑いのなか、司祭や他の皆んなに囲まれていた。

うん、これで終わりだ。


直ぐに王宮から使いがきた。

サザンベールの村に「聖女」のジョブを持つ少女が誕生したために使者の騎士たちと迎えに行く。


村人や父さん、母さんは祝福してくれたけど..気が重い。


少しでも強くなるために、騎士に混じって討伐しながらサザンベールを目指す。

前の勇者の時の二の鉄は踏まない。


「勇者様は馬車でお休みください..露払いは我々が致します」

「僕は少しでも強くなりたい...だから肩を並べて戦う事をお許し下さい」

「流石は勇者様です」

サザンベールにつく前には、既に前の勇者時代より倍近く強くなった気がする。


聖女が生まれた家に挨拶をしに行った。


「勇者様、待ちかねておりました」


村長が同席してあいさつされた。


「ご挨拶有難うございます」


「勇者様、初めまして、私がリアリーです..その聖女になりました」


「そうですか..僕がセイル、勇者になります」



「少し、二人でお話しさせて下さい」


「解りました」





「リアリーさんは好きな人がいますか?」

「はい、幼馴染のジム君が好きです、この旅から帰ってきたら結婚する約束をしています」

「なら、そのジム君を呼んでください」

「はい」

ジムという青年をリアリーさんが連れて来た。


「僕からの提案があります」

「なんでしょうか?」

「ジム君と二人で駆け落ちしてください」


「勇者様、なぜそのようなことを言うのですか..それでは世界が大変な事になってしまいます」

「俺もそう思う、なぜそんなことを」


「リアリー、ジム君、討伐の旅は、凄く過酷なんだ...綺麗ごとじゃない、帰ってこれない可能性すらある」


「そんな事は知っています..ですがそれでは世界が困ってしまいます」

「それでも俺は無事を信じてリアリーを待つ」


それは無理なんだ..帰ってきた時にはもう彼女は君を愛していない。


「今から僕のいう事を聞いてほしい..ジム君、これは意地悪じゃないんだ..」

「解りました」

「これから、リアリーと僕は旅に出る、魔王討伐の旅だ」

「解っています」

「賢者や剣聖と共にな、そうするとどうなると思う?」


「解りません..」

「必ず、愛し合うようになる..絶対にな」


恨まれたくはないから「勇者」をとは言わない。

「そんな事はありません、リアリーと俺は愛し合っています」

「悪いが、そんなものは壊れる、戦うという事はお互いに命を預ける事になるんだ、魔王すらと戦える連携が出来るくらいにな、それがどういうレベルか解るか?」

「勇者様が何を言っているのかわかりません」

「私も..」

「4人は一つの生き物に近い状態になる、右手が左手を嫌いになっても離れていかないのと同じだ「そうなるように選ばれたんだ」」

「勇者様は何が言いたいのですか」


「つまり、君がリアリーと一緒になれるチャンスは今しかない」

「そんな、俺はリアリーを愛している、リアリーも一緒です」

「勇者様には悪いですが、私の気持ちはジムの物です」


「ここには1週間居る、その間に決めて欲しい..駆け落ちしても構わない、最後に思い出を作るのも良いだろう、男女の中を深めるために肉体関係になっても咎めない...但し残るなら避妊だけはしてくれ」


「どうして、勇者様はそんな事を俺に言うんだ」

「どうして話されたのですか?」


「昔の事だ、本当に仲の良い男女が居たんだ..婚約迄して楽しそうに暮らしてたよ、だけど、女が聖女に選ばれて、勇者が迎えにきた。そこから可笑しくなったんだ..聖女は勇者を選び、男と女はわかれた、本当にお似合いの二人だったのにな」


「そんな嘘だ」

「そんなの嘘です」


「信じる、信じないも自由だ..伝える事は伝えた..後は自分で考えろ」




俺は二人に近づかない事にした。

村長やリアリーの両親に、不思議がられたが、「魔王討伐の旅に出たら会えなくなるから二人を自由にさせて欲しいと頼んだ」

リアリーの両親は嫌がっていたが、俺からお願いした。

村長の家で美味しい物が食べられ、歓迎されているから、そっちを楽しんだ。

子供と遊んだり、大人とゲームして楽しんだ。



1日目

「リアリーどうしたんだい?」

「何でもないわ..ジム」

何でなのかしら、ジムが全然頼もしく思えない、傍にいても不安だらけになる。

「それで、勇者様の話しなんだけど..」

「ありえないわよ、駆け落ちなんて..そんな事したら村が大変な事になるわ」

「そうだよな」

「ええ」


どうしてなんだろう..ジムが好きな気持ちが薄れてきている気がする。



2日目


「朝から何の用なの?」

「リアリーに会いたいから来たんだ」

「そう?それで」

「それでってどうしたんだよ..もうじき長い間会えなくなるから会いに来たんだ」

「そうよ、そうよね..うんごめんジム」

「別にいいよ..それで今日はどうする、森でも散歩しないか?」

「ごめん、何か疲れているから休むわ」


「あの..今からでも駆け落ちしないか?」

「そんな事しないわ..世界が大変なのよ..していいわけが無いわ」

「そうだよな...うん、そうだ」


私はどうしてこんな人を好きなんだろう..


一緒に居ても苦痛しかない。

それに比べて、セイル様の凛々しさ..世界の為に頑張っているのに、私の気持ち迄考えてくれる。

あれっ..これがもしかしたら、勇者様のいう事なのかも知れない。

これは偽りの気持ちなのかもしれない。



だけど、私が居なくなったら勇者様はどうなるの? 他の仲間は..絶対に苦しむことになるわ。

場合によっては死ぬかもしれない..それなのに、セイル様は逃げていいって、命懸けで私の事を考えてくれたんだわ。


始まりは偽りかも知れない..だけど、ものすごく優しい人なんだ、セイル様はそれだけは真実だわ。




3日目

「ジム別れましょう..」

私はジムに別れを切り出した。

「何でそんな事を言うんだ、俺は待っているって」

「待つ必要はないわ..ねぇ..何で待つの?」

「何でって..」

「私が死にそうになって戦っている間、ジムは平和な村で過ごすんじゃない? ただただ、畑耕して安全な場所にいるだけじゃない?」

「リアリー待ってくれ...だったら今からでも良い駆け落ちしよう..」

「もう無理よ..セイル様は私の事やジムの事を考えてくれたわ、逃げて良いってね..だけど私とジムが駆け落ちしたらどうなるの? 本当は犯罪者になるわ」

「それでも俺は」

「普通に考えて幸せになんてなれない..だけど勇者のセイル様が言ったから目こぼししてくれるかも知れない」

「そうだ、セイル様が言ったんだから大丈夫だ」

「それで、セイル様はどうなるの?」

「どうなるかって?...」

「聖女が居ないパーティーで魔王と戦う事になる..傷ついても誰も治してくれない状態で世界を背負って戦うのよ! 死んじゃうかも知れないじゃない」


「リアリー」

「それでも駆け落ちして良いって..そんな優しい人に私は死んで欲しくない、ううん本当に私の事を思ってなければ言えない言葉だよ」

「リアリー、それでも俺は..」

「ジム、同じ事言うわ..待たないで良い..他の誰かと幸せになって...さようなら」



その日の夜、リアリーは俺の部屋に来た。

「何でここに来たんだ」

「自分で考えた末に来たんです、これは勇者様の言うようなことでありません」

「リアリー、ちゃんと考えろ...俺についてくるという事は地獄のような旅に出る事なんだ..それが解っているのか?」

「はい」

「魔王なら俺がどうにかする..大丈夫だ」

「嫌です..私は聖女です、勇者様一人に押し付けてのうのうと生きていこうとは思いません」

「そうか解った」

「.....」


「気持ちは解ったから帰っていいよ、もう駆け落ちしろとか言わない、ジムと一緒に..」


「ジムとは別れてきました...勇者様! 確かな絆を私にください」


俺はリアリーに押し倒された。

そして、俺は受け入れた。

前の時に恥ずかしがって、その結果大切な人を失った。

リアリーを守ることを誓い、熱い夜を過ごした。




次の日、俺は朝早くリアリーと共にこの村を出た。

騎士に何故急ぐのか聞かれたが理由は言わなかった。

ジムの悲しい顔を見たくないからが本当の理由だ..

リアリーは俺の腕の中にいる..こんな姿を..彼に見続けさせたくはない。

送ってくれた村人の中に居ないが、木の陰からジムが見える。

泣きはらした目をしながらこっちを見ている。



彼にひどい事をしているのは解っている。

だが、これは僕にはどうしようも無い事なんだ...

ただ約束するよ..

もし、転生して僕に同じ事が起きたら..ジム、君のように泣きながらでも愛する人を送る。

約束する..
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