43 / 50
第43話 魔族
しおりを挟む貸し切りと言えど、完全に二人じゃない。
御者が1人と馬に乗った護衛が2人いる。
まぁ、当たり前と言えば当たり前だな。
「しかし、帝国迄馬車を貸し切りなんて豪勢ですね」
「まぁ、ちょっとお金が手に入って、ですが流石に馬車を貸し切りにしたらかつかつですよ!」
「そりゃそうだろう? 貴族や大商人じゃなければ貸し切りなんてしないからな」
「その歳でたいしたもんだ」
「はははっ、新婚みたいな物で見栄を張りました」
「理人…もしかして無理させちゃった?」
「まぁ、この位また稼げば良いんだ」
「うん、頑張ってね」
本当はお金なら使いきれない程ある。
だが、それがバレたら、治安が悪い異世界だ。
殺されたりしたらたまった物じゃない。
だからこそ謙虚に生きなければならない。
◆◆◆
王国を逃げなくちゃいけない訳が解った。
俺達の目の前には…おびただしい魔族の軍団が居る。
「気がつかれないように迂回しましょう」
「ああっ、そうだな」
「これだけ距離があれば大丈夫だ」
護衛の1人が斥候に優れていて良かった。
そうじゃ無ければ…詰んでいた。
あれが、おそらく魔族か…魔物に混ざって、無数の魔族も行軍している。
明らかに見た目からして知能が高く強そうな個体がいる。
あれがきっと魔族だ。
あの数の魔族や魔物が相手じゃ、恐らく大樹達勇者は勝てないだろう。
ジョブやスキルの恩恵がどの程度の物か解らないが…数千、数万相手には恐らく通じない気がする。
「ミウ…これつけて」
俺はブレスレットを取り出し、一つはミウに渡し、一つは自分が身につけた。
今の所、この馬車は見つかっていない。
だが…万が一見つかったら…俺達は終わる。
このまま迂回して立ち去れば…
『見ぃつけた』
空から声が聞こえた声がした。
「うわぁぁぁぁぁーーーー」
「助けて、助けてーーー助けてーーっ」
「….」
馬車から外を覗くと、空から蝙蝠の様な羽の魔物が3体で馬車を襲ってきていた。
御者の首は無くなって死んでいた。
2人の冒険者も、もう瀕死で死ぬのは時間の問題だ。
助ける…そんな余裕はない。
「ミウ…逃げるぞ」
「うん…」
静かに手を取り、逃げ出そうとしたが…
『逃げられると思うの』
その中の1体がこちらに飛んできた。
ヤバい…
「理人―――っ」
ミウの背中を爪で突いて…嘘だろう手が胸のあたりを貫通していていた。
『次はお前だ』
「ミウ、ミウ…ミウーーーっ」
「り…ひ…と…」
『お前もすぐに後を追う事になるわ』
そういうと魔族は俺の心臓に爪を突き立てた。
「魔族…貴様は…俺の…ぐふっ、うがっあああああーーーーっ 俺の敵かーーー」
『人類は全員敵だ』
「そうか…」
俺はミウの手を握り…祈りながら…ただ冷たくなっていく。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる