15 / 38
第15話 白馬と竜
しおりを挟む「この依頼受けませんか?!」
冒険者ギルドに顔を出すとギルドの腹黒受けつけ嬢のサリーちゃんが笑顔で2枚の依頼書を出してきた。
「どれどれ」
『森に古代竜クラスの魔物が暴れた後があり調査求む』
『王城にて聖剣を含む聖なる武器が何者かに破壊された』
これ駄目じゃん。
両方とも俺だ。
「俺は王城から追い出された人間だから、王家の依頼は余り受けたくないな」
「そうですよね、ですが両方とも引き受け手がいなくて困っているんですよ」
確実に迷宮入りだな。
「此処だけの話、俺はこの国を恨んでいる…だから悪い」
「まぁ、最初の悟様の状態を知っていますから、無理は言えませんね…解りました、諦めます」
「悪いな」
「それで、悟様は今日はどう言ったご用件でしょうか?見た感じ討伐の依頼を終わらせてきたように見えませんが…」
「いや、実は竜について知りたくてな」
「ぷぷぷっ笑えますねーーっ!やっぱり異世界人ですねーーっ…それ言っちゃいます?! 竜はそこら辺の魔物とは別格ですよ? 亜竜と言われるワイバーンですら街の1つ位簡単に潰すんですよ? 倒せたらAランクって言われているんですよ!これはあくまで亜竜。本物の竜と言われるのは、その上の竜、地竜以上ですが、これはもう、異世界人の中でも選ばれた勇者とかじゃ無ければ倒せません! 一般人が倒すならA級ランクが5人以上必要になります…自己責任の世界ですがやりますか?」
やはりこの世界でも竜は凄いらしい…
「いや、討伐なんて考えて無いから、だけどどんな存在か気になってな…この辺りで一番強い竜の住処を教えて欲しい」
「ああっ、そういう事ですね!この世界の人間なら見たくはない恐怖の象徴が竜ですが…何故か異世界人にとっては憧れがあるみたいですね。この世の何処かに竜の国があり、そこには竜の王族が居るようですが…そこにいる竜が暴れたら世界が滅ぶと言われています。我々が見る事が可能な竜は古代竜エニシェントドラゴンのギルモア様です…凄く温厚な竜ですが…怒らせると国が亡ぶと言われていますので、絶対に戦ったりしないで下さいね」
「魔王や勇者より強そうだな…」
この世界で一番強いのは魔王じゃ無くて竜、そう言う事か?
「当たり前じゃないですか! 神々の次に強く気高いのは竜の王族と言われています…ギルモア様はその竜の王族に次ぐ実力者です」
「凄いな」
「ええっ、それじゃ銀貨3枚です」
「3枚?」
「良いですか? ギルドで情報を得るにはお金が必要なんですよ! ギルモア様の住処の情報は銀貨3枚になります」
「…お願いする」
俺はサリーちゃんに銀貨3枚を払いギルモアの住処を教えて貰った。
◆◆◆
「筋斗雲」
街からでて筋斗雲を呼んだ。
古代竜のギルモアが住んでいる場所は普通の人間が歩いて向かうと2週間は掛かる。
だが、流石は筋斗雲、1時間も掛からずに近くまで来た。
この辺りが…凄い翼竜…いやワイバーンか…
魔物や魔族と違う…第三の存在、竜…
俺は如意棒を構えた…が…
あれっ何故かワイバーンは俺と目を合わせると「クワァァァ」と声をあげて、急いで引き返していった。
一体、なんだって言うんだよ。
◆◆◆
ギルモアの住む洞窟にまでくると1人の老人と2人の若い男が居た。
「竜じゃない?!」
「無礼者!我らに向かって竜で無いだと!」
「貴様、死にたいの…」
「黙れ…」
「「ギルモア様?!」」
「黙れと言ったのじゃ! 相手の技量も読めぬヒヨッコが! この方は…竜の王族と縁がある方じゃよ…はっきり言えば、それだけじゃ無い…力量も儂より上じゃ」
竜の王族と縁がある?
「「ひぃ」」
「久々の客人じゃ…茶でも馳走しよう、さぁどうぞ」
これが、古代竜ギルモアなのか?
見た感じは温和な老人にしか見えない。
だが、自分が孫悟空になったせいか、その凄さが解る。
「ご馳走になります」
「その前に、姿を見せた方が良いのかのぉ~竜化」
目の前の老人が、山ほどあるドラゴンに変わった。
恐らく、この体になる前なら、驚き、絶望し腰を抜かすかも知れないが…今の俺にはどうってことは無い。
「嘘だろう…只の人がギルモア様の気に押されない」
「何故だ、気を抜けば我らとて恐怖するこの状態のなか笑っているだと」
何を言っているのか解らない。
だが、俺は空想上の生き物、ドラゴンが見られて満足だ。
しかし…凄いな。
他の魔物を見た時にも驚いたが『竜』はやっぱり別格だ。
綺麗な黒い鱗の西洋風の竜。
思わず見惚れてしまった。
「竜とは凄く美しいものなのですね…」
「儂など到底及ばぬ竜の王と縁を持つ者が何を言われますか! しかもその分だと、その竜の王族とは師弟関係、もしくは兄弟関係にあったのではないですかな? 」
頭の中に白馬の映像が浮かび上がった。
『悟空、ついていきます』
三蔵法師が乗っていた馬は竜王の息子の変化した姿。
そうか…玉龍。
竜が変化したものだ。
確か、孫悟空は馬の扱いが上手く、兄貴分だったのに世話は殆どやっていた…そんな話も聞いたことがある。
「確かに、俺は竜の王族とは縁があったようだ」
「でしょうな…竜とは縁を大切にする者なのです…未熟な二人は気がつかないようでしたが、竜の王族と暮らした痕跡が貴方にはあります…そうと決まったら茶など水臭い…歓迎しますから、さぁさどうぞ!」
俺は言われるままにギルモアについて洞窟に入っていった。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる