上 下
9 / 38

第9話 ゴブリン これじゃ狩れない

しおりを挟む
「行ってらっしゃいませ!悟様…私の顔がどうかしましたか?」

「いや、随分違うな…そう思っただけだ」

同一人物とは思えないな…

あの殺伐とした睨む目じゃない。

「そりゃ変えますよ!冒険者様はお客様、ギルドの収入と直結していますから…それにB級のディーバ様を倒すような凄腕、態度も変わろうというものですよ!」

なかなか良い性格をしているな。

まぁ良いや。

冒険者の試験に受かった俺は早速仕事を受ける事にした。

B級を倒した特典は微々たるもの物で1ランクだけアップのEランクスタートだ。

ランクがSからFまでなので、大した特典じゃない。

ちなみにDランクが一人前でそこから上は並大抵の努力じゃあがれないらしい。

実際、このギルド所属の冒険者ではBランクが一番上でそれも1人ディーバしかいないそうだ。

それに勝ったんだからAでも良いじゃん。

そう思ったが『才能より貢献の方が重要だ』と説明されて1ランクアップ上のスタートでも異例なのだそうだ。

そして俺は、常時依頼で異世界の定番『ゴブリン』の討伐を受けた。

まぁ、そんな感じだ。

「それじゃ行ってきます」

この世界で初めて挨拶をし、腹黒?の受付嬢に見送られながら俺は…初めての狩りに出かけた。

◆◆◆

しかし、この体は本当に凄いな。

実際に走ってみたら体感的には絶対に車より速い気がする。

こんな畦道なのに、まるで高速道路を車で走っている位速いし、ジャンプしたら杉のような木の4倍以上高く跳ねられた。

ちなみに巨木を軽く殴ったら、いとも簡単に折れた。

『超人』そうとしか思えない。

母さんが『幸せに暮らせますように』そう仏様に祈っていたから、俺は仏様に救って貰えたんだ…

『母さん、薬師如来様、そして名前がわからない仏様…ありがとう』

心から母さんと仏様達に感謝の祈りを捧げた。

そして女神、いやあんな奴糞でいいや。

イシュタスを呪った…俺は正直に言えばマザコンだ。

本当のマザコンとは違って『母さんが理想の女性』そういう事だ。

少し、母さんにイシュタスが似ていたのがすごく腹が立った。

『いつかぶん殴ってやる』そう誓いを立てた。

◆◆◆

2匹のゴブリンを見つけた。

すぐに駆けていき…

「悪いが今夜の食事代と宿代になって貰う」

そういいながら、殴ろうとしたら…

『ヒィ…魔王様お助けください』

『魔王様、獣王様、お許しを…』

不味い、この近くに魔王と獣王が居るようだ。

流石にヤバいかも知れない。

すぐに狩って逃げなくては。

俺は用心深く再び手を振り上げると…ゴブリンはいきなり土下座をしだした。

『『お許しを魔王様、獣王様』』

「まさか、俺が魔王に見えるのか?」

『魔王様ではないのですか…』

『それなら獣王様ですか…』

これはあの糞女がくれた『翻訳』のせいなのか?

ゴブリンと意思の疎通ができている。

「俺は魔王じゃないよ?」

ゴブリン相手についどもってしまった。

ノリは『僕は悪いスライムじゃないよ』に近い。

確かにゴブリンは醜いが、この体の影響なのか醜いだけで邪悪な存在には見えない。

『ですが、そのすさまじい気…名だたる魔族の方か獣人族にしか思えません』

『もしや魔族の四天王様ですか』

駄目じゃん。

こんな理性的な存在狩れない…

「悪いが自分が何者なのか解らないんだ…」

ゴブリン相手に俺は何を言っているんだ。

『それは難儀ですな…そうだ!いずれにしても貴方様は我らの支配階級の方には間違いありません! 歓迎いたしますので我らが王の所迄着ていただけませんか?』

『そうです…我らが王であれば何か判るかも知れません』

絶対に解らないな。

幾らゴブリンの王でも『仏様の事を知るわけがない』だが、なんだこのキラキラした目。

異世界で初めてこんな目を向けられた…

「そうか…それならお世話になるよ」

俺はゴブリンに甘える事にした。















しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...