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第47話 【閑話】美瑠加 偏差値68

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お金が欲しい。

なんで私には投資の才能が無かったのかな…

まぁ公立の小学校に通っている時点で…弱者決定だよ。

お金は…今月は支給された5千円の小遣いしかない。

私は、文教第3小学校 胸元美瑠加 クラス委員をしている女の子だ。

公立なんかに入ったら最後、もう生涯男性に縁は無い。

名目上はクラスには1人居るけど不登校だから会うことは無い。

「男の子に会いたいな…」

「無理だよ、しっかり投資とかしてお金を稼いだ人がアイドルになるか…私立の名門にでも通わないと無理なんだから」

男の子と知り合う道は数少ない。

武芸を磨いて護衛の仕事に就く。

頭脳を磨いて政府で高官になるか、DSSSの職員になるか。

そして一番可能性が高いのは投資などでお金を儲けてアイドルになるか、私立に入るかしかない。

最も、特技も無く投資をしたらFXで溶かしてしまう私達には…公立に入って男の子に会えない人生しかない。

ある意味公立は…女の地獄だ。

そんな私達の教室に、男の子の転校生が来る。

そう言う話を担任の小松先生が言っていた。

『聞くだけ無駄』

だって幽霊男子が1人増えるだけ…会えないから意味が無い。

「喜べ女子ども~このクラスに男子が転校してくるぞ~」

「小松先生~そんな事言ってもどうせ、名前だけで来ないんでしょう?」

担任の小松先生は興奮しているけど…これが普通の反応だって。

だって、会えもしない男が増えても意味なんて無い。

だが、可笑しい…席の後ろの子が急に怒鳴った。

「良いから黙れ!小松ちゃん…私は今幻覚を見ているのかな?」

その目線の先には…男の子が居た。

「まだ、解らないわ…お鍋、お鍋の確率もある…夢なんて見ちゃダメ」

お鍋なのかな…

「あの…私は、このクラスのクラス委員をしています 胸元美瑠加と言います…貴方は男性ですか? もしかして転校生の水野正平様ですか?」

「はい、俺の名前は水野正平です! 正真正銘の男です…今日から宜しくお願い致します」

本物の男の子だ。

生まれて初めて出会った…本物の男の子。

思わず涙が出ちゃう。

「「「「「「「「「「男…男の子来たぁぁぁぁぁー―――――っ」」」」」」」」」」

「たまりません、たまりませんわー-っ」

「男の子に会えるなんて、会えるなんて生きてて良かったよー――っ」

「嘘…凄く可愛いし綺麗…こんな子がこんな子がクラスメイト」

皆が騒ぎ出した。

当たり前だよ…男の子、相手がブサイクでも会えてたら奇跡なのに、目の前の男の子は…どう見ても美少年だ。

「皆さん、男の子を怖がらせたらいけません、静かにして席に着きなさい…居なくなっても良いんですか?」

確かに男の子はすぐ不登校になる…慌てて小松先生が制するように窘めた。

「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」

美少年の名前は水野正平くん…

この子はただ美少年というだけじゃなく『心まで綺麗』な人だった。

アイドルがお金を払ってようやく出来る『握手』それが無料なんだって…普通は最低50万円~なのに…

しかも握手をした後は、メッセージカードのついたお菓子までくれた。

凄いよね…男性に会えたのも奇跡なのに、その男性が若くて優しい。

こんなの…まるで夢だよ。

正平くんは天使なのかな?

本当にそうとしか思えない。

正平くんが居るからかこのクラスはFから暫定でAクラスになった。

成績が悪くなるとこのクラスから他のクラスに移されるそうだ。

私もクラスの皆も死ぬ気で勉強し始めた。

こんな奇跡二度と起きない。

性格が悪くても、お爺ちゃんでも男性に関われるならラッキー。

なのに…同い年の美少年…絶対にない。

他のクラスにばれないように…そして何がなんでもこのクラスから移動させられないように死ぬ気で頑張るしかない。

◆◆◆

次の日正平くんは来なかった。

もう来ないのかな…そう思っていたら…朝正平くんが居た。

「今日はフリーハグをしようと思って」

「フリーハグって何ですか?」

驚いた顔で正平くんは見ているけど…意味なら知っているよ。

だが、多分私が知っている意味じゃない気がする。

「それなら、美瑠加ちゃん、やってみない?」

「あの…なにかしてくれるの?」

男の子が何かしてくれる…嬉しいな。

「ふん…ほら」

正平くんが大きく手を広げてきた。

「あの…正平くん、何すれば良いの?」

正平くんが優しく甘い声で言ってきた。

「目を瞑って…」

「はい…」

「それじゃハグしますね?」

「ええっー――っ」

本当のハグだ…まさか本当に抱きしめられるとは思わなかった。

「あああっあのあの…正平くん」

私も抱きしめて良いんだよね。

あっ凄い幸せ…だけどすぐに正平くんは離れてしまった。

「あっ、あっ正平くん…その」

「はい、おしまいっと」

楽しい時間は直ぐに終わっちゃった。

後ろには小松先生を始め…クラスメイトが並んでいた。


ハァ~死ぬ程勉強しないと…学校中に知れ渡ってしまったから…

死ぬ気で皆が勉強し始めた…今、この学校の偏差値は68…

此処迄上がってしまったの。

このクラスにしがみつく為に12時間の勉強は必要ね。







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