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第64話 訳がわからない

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何故急にこんな事になったのか?

理由は何となく解る。

『勇者パーティが解散』した。

その影響が出たのかも知れない。

勇者パーティの所属からエルザと俺が離れたから…怖くない。

だからこその暴言なのかも知れないな。

『冒険者同士の揉め事は自己責任』

そう決まっている。

だから、勇者パーティで無くても怖い人間には、それなりの対応をしている。

だが、俺やエルザは『優しい』という印象が強い。

だからこそ、舐められているのかも知れない。

もし、このパーティに居るのが俺じゃ無くガイアだったら…

恐らくは絡んで来ない。

ガイアはあれでも身内には優しい。

『優しい』それを聞いて可笑しいと思うかも知れないが…あれでも優しいのだ。

友達、親友認定だから、俺には暴力を振るわないし、精々が暴言だけ。

他には一応外面は良く『優しい勇者様』だが、敵に回したら怖い。

それを冒険者は知っているから『こんな絡み方』はしない。

だからこそ、俺はこれから鬼になるべきなのかも知れない。

『敵になる奴には容赦じない』

『相手が子供であってもぶん殴る』

『場合によっては大怪我、最悪1人位は殺しても構わない』

ここまで考えるべきだったんだ。

最悪、これで教会を敵に回す可能性や聖教国も敵に回るかも知れない。

だが…此処迄しないと不味いかも知れない。

悪意が悪意を産んで…彼女達に危害が加わる事を考えたら仕方が無い。

『誰か1人血祭りにあげないと終わらない』

そう俺は決意した。

◆◆◆

「何かあったら、俺が守るから…ちょっと付き合って欲しい」

「僕、嫌われているから嫌だな…」

こう言う所が残念剣聖なのだが…まぁ目に涙溜めていて可愛いから良しだ。

「リヒトさん…まぁ仕方ないですね」

「私も余り外出はしたくありませんわ…ですがリヒト様が行きたいのならお付きあいしますわ」

「英雄リヒト、私は別に構いませんけど?」

レイラ以外は乗り気ではないけど最終的に皆が一緒に出掛けてくれる事になった。

今日の俺は血に飢えた狼だ。

絡んでくる奴は只じゃおかない….

そう決意し俺達は出かけた。

◆◆◆

いたぞ、あの時の子供冒険者だ…

さぁ絡んで来い。

子供だから命まで奪わないが横顔の一つもぶん殴ってやる。

目が合った。

さぁ絡んで来い…悪いが最初の生贄になって貰う。

「あの…リヒト様、ごめんなさい、お姉ちゃん達もごめんなさい…もう酷い事言わないから許して…」

「おおっ…次は無いから気をつけろよ!」

「うん、リヒト様、許してくれてありがとう、エルザ様もこの間はごめんね」

そう言うと笑顔で手をぶんぶん振って去っていった。

「リヒト、あの子謝ってくれたね、僕誤解していたよ」

「リヒトさん、どうしたのでしょうか?」

「リヒト様、信じられませんわ、随分この間とは違いますわね」

「まぁ絡んで来ない分いいんじゃないですか?」

訳が解らない。

それに『リヒト様?』ってなんだ。

本来は俺やエルザはそう呼ばれても可笑しくは無いが、今までは気さくに『リヒト』だった筈だ。

何かが可笑しい。

だが、これだけでは無かった。

居た。

この間『気持ち悪いなぁ~化け乳女だ…よく生きていられるな』

そういった冒険者だ。

子供と違い此奴なら絡んでくるだろう…

「おい!」

「あっリヒトさん! この前はどうも…人の好みは人それぞれ『蓼食う虫も好き好き』ですね…俺が悪かったすよ! 確かに化け乳でキモイですが…もう意地悪は言わないからな、エルザさんに、そこの嬢ちゃんたちも…悪かった…それじゃあな」

なんだか謝られているのかディスられているのか解らないが…そう言うと、そいつは去っていった。

一体何が起きたのか解らないな。

「リヒト、あれ謝っていたのかな?」

「解らないけど、もう悪口は言われないみたいだな」

「リヒトさん、どうしたんでしょうか?」

「リヒト様、可笑しいですわね? なんだかディスられていますが、昨日よりは随分違いますわね」

「まぁ、あんな小物、どうでも良いですけどね?」

「何がなんだか訳が解らないな」

本当に何かが可笑しいし…正直言って気味が悪い。

誰も絡んで来なければ『俺のしようとする事』は頓挫する。

あの時の二人組の女冒険者が居た。

『なにが『麗しの剣聖』なのかな? あんなキモイ塊ぶら下げて良く生きていけるよ!』

『私、エルザのファンだったのに騙された感じ…あれなら、不細工な男の方がましだよ』

そう良いっていた奴らだ。

「おい」

これで絡んでくる筈だ。

「あはははっ、リヒトさん…どうしたんですか? 怖い顔して」

「そうですよ…そんな顔しないで下さいよ!」

何故か話をはぐらして、焦っているのが解る。

「今日は文句言って来ないのか?」

この際、此奴らでも構わない。

何か言ってきたら、女でも構わない『ぶん殴る』そう思っていたら…

「あはははっ、昨日の事は軽い冗談だったんです…悪ノリしすぎていました…ゴメンなさい」

「わ、私は今でもエルザ様のファンです…本当ですよ…」

「おい」

「幾らでも謝ります…許して下さい」

「勘弁してお願いー-っ」

二人は泣きながら走って逃げて行った。

何があったんだ…訳も解らず、俺達5人は立ち尽くした。


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