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第20話 【閑話】雑用と言う名のチート
しおりを挟む「リラ、何度同じ事聞くんだよ」
「流石に何度もしつこくされると困るんだけど! 素振りもできないじゃない!」
「そうよ、私も瞑想の時間なの、邪魔しないでよ」
「はぁ~?! そんな事言うなら、ガイアでもエルザでもマリアンでも良いから代わってよ! 『活動報告書』を書き上げて『目標設定書』まで作らないと『支援金申請書』が書けないの! 何度も言わせないで! 皆はただ口で言うだけでしょう! 私は聞いた事を書類にして提出できるようにしないとならないの! それにこの後『成果報告書』も書くんだよ! これ、凄く面倒くさい…それなのに協力もしてくれない訳? いい加減にしてよ」
最近、リラが凄くとげとげしている。
リヒトが一人でやっていた書類仕事が凄く面倒くさいらしい。
「悪かった、悪かったから、そうキンキン声を出さないでくれ」
「ごめん…僕には無理だから…」
「解ったわ、ごめんね」
リヒトと違い、まるで憲兵に捕まり調書をとられるみたいに事細かに聞かれる。
今思えば、リヒトは普段の会話の中で色々聞いてきていた。
あの時は『煩い奴』と思っていたが、今よりずうっとマシだ。
しかも…この仕事を押し付けてしまっているから、リラには家事を免除している。
その為、三人で家事や冒険の準備をしないとならない。
「今日の飯は誰の番だ」
「ガイア、悪いけど、リヒトが居なくなってから、薬品の管理や必要な物の管理は私がしているのよ? この間、怪我した時にポーションが切れていて困ったじゃない?『しっかり管理しろ!』って言ったのはガイアじゃない…私はこれから買い出しなのよ!無理よ、無理!」
「ハァ~そうだな…それじゃエルザ」
「僕は無理!ガイアが『女の下着なんて洗うのが嫌だ!』っていうから僕がこれから洗濯するんだよ…それが終わったら僕は魔剣の手入れをしなくちゃならないんだよ! 聖剣とかと違って僕の魔剣は手入れが必要だし、皆と違って鍛えないと剣の腕が錆びついちゃうんだよ、解ってよ」
「仕方ない、それじゃ外食でも…」
「書類が多くてそんな時間ないよ」
「私は買い出しの途中なら良いけど…」
「僕も時間が惜しいから」
「解ったよ、俺が作れば良いんだろう…ただ不味いとか言うなよ」
「「「解った(よ)」」」
もうバラバラだ。
リヒトの奴は、今考えれば、1人で全部これをやっていたんだな。
俺は本当に凄く馬鹿だ。
なんで俺は『全ての雑用をこなす様な人間』を追放したのだろうか?
事務的な事を完璧にこなし、買い出しに料理、洗濯が得意な人間。
『絶対に必要な人間』じゃないか?
しかも俺達は勇者パーティだ。
これからどんどん危ない場所に向かっていく。
恐らく魔国に入ったらA級でも危ない。
そんな場所で自分の身を守りながら家事が出来る人間。
『リヒト以外に誰が居る』と言うんだ。
もし居たとしても魔王討伐の長い旅に同行等してくれる筈が無い。
しかも、あんなに可愛いと思った三人が…薄汚れていく。
リヒトが、清潔な環境を保っていてくれたから、彼奴らは美貌を保ち、俺達はイチャついて居られたんだ。
ハーブ水の洗顔を常に用意してくれて、野営であっても洗髪や体を拭くお湯の確保をかかさない。
それが無くなったから…俺達は汗臭い。
結局、このパーティにはリヒトが必要だった。
そう言う事だ。
仕方が無い…ギルドに依頼して彼奴の居場所を探して、戻ってきて貰えるように交渉するしかない。
その為にも皆で話し合わないとな…
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