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パーティハウス

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我がパーティ最大の弱点。

それは『三人が常識』を知らない事だな。

マリの洋服や日常品を買いそろえようと思ったんだ…だが、誰も真面に買い物が出来ない。

よく考えたら、王妃に監禁娘に、引き籠り研究者。

出来なくて当たり前だな。

この辺りも今後どうするか、考えないと不味い。

もし、俺が倒れでもしたら『真面に生活』が出来なくなる。

持ちながらギルドに行くのもなんなので、近くに居た顔見知りの子供冒険者にお金とチップを払い、宿に届けて貰うように頼んだ。

◆◆◆

さてと、俺達はギルドに来ている。

「セレス様、今日はまた、素材の買取りですか?それとも何かの依頼を受けられますか?本日は私ミゲルが担当させて頂きます」

「今日はパーティハウスを購入しに来たんだ、確か斡旋もしていたよな」

「勿論ですよ『この私ミゲルが責任をもってお世話させて頂きます』」

ミゲルさんの顔は凄い笑顔だ。

前世で言う所の『不動産取引』多分歩合も高いのだろう。

そのまま、サロンに通されて、何だこの茶菓子と紅茶は。

なんでケーキ迄あるんだ。

「凄いわね」

「流石、セレス様ですわ、待遇が全然違いますのね」

「美味しそう、これ食べて良いの!」

いや、確かに紅茶は良く出て来たけど…これは凄い。

「あの、これは一体」

「これですか? 普通こういうサロンのお菓子やお茶は、担当が用意するんですよ、S級はギルドに最高に貢献しているんだから当たり前です。今回は皆で考えて用意しましたが希望があれば、言って下さいね、軽食位なら普通に用意しますよ」

前世でいうVIPルームみたいな物か。

「それでは、すぐに資料を用意して来ますから待っていて下さいね」

そう言うとミゲルさんは出て行った。


◆◆◆

「本当に馬鹿ねミランダ、あれ程の存在を手放すなんて」

「暫く地獄かもしれないけどさぁ、半年我慢すれば一生分の収入が手に入ったのかも知れないのに」

「しかし、今日の担当のミゲルさん、討伐じゃないからついて無いな」

「いやそれでも、あのセレス様だぞ、絶対高額物件買うんじゃないのか?」

「そりゃそうだろう、確か個人の取り分が8%だから」

「金貨1000枚なら80枚(約800万)が一瞬で手に入る事になるんだから、とんでもないよな」


「ミランダ、君はもうセレス様の担当は持ち回りでも回さないから、安心して、そろそろ時間だから帰って良いよ」

「…解りました」

『一瞬の判断で全てを失う事がある』

その鉄則を忘れたから…私は一生に一度の大きなチャンスを見逃したのかも知れない。

◆◆◆

「セレス様、資料をご用意しました、さぁ早速条件を教えて下さい」

「まず、俺からは、部屋数最低5つ、お風呂にトイレ、キッチン付きでそれぞれが魔石が使える物で、あと大きな部屋か倉庫が欲しい、他は皆の希望を聞いて決めたい」

「す..凄いですねそれは..(この時点で、もう貴族の屋敷クラスだな)」

「それで充分よ」

「充分ですわね」

「あの~マリちゃんは研究室が欲しいし、他に大きな物置が必衰ですぅ~」

「ちょっとマリ、こういう時は奴隷は遠慮する物ですわ」

「そうよ!」

「だけど、マリちゃん、それが無いと本領はっきできないよ」

「そうだな、だから、さっきの要望に入っているんだけど、あれじゃ駄目か?」

「う~ん、そうですね『出来るだけ大きな』でお願い」

ミゲルさんはかなり困っているようだ。

「流石に無いですか?」

「あははははっ、ちゃんと探しますよ、ご安心下さい」

なんだか、前世の外商みたいで大変だな。

「あっ、ありました、これどうですか? 街の外れですが一応街のなかです、此処しかありません」

自信をもって言っているけど…これ。

「小城じゃないか?」

「城だね」

「城ですわね」

「この位あれば、マリちゃんも大満足です」

確かに、条件通りだけど流石に城は高くて手が出ないだろう…えっ何でこれが『金貨500枚』なんだ。

「なんで、小さいとはいえ城がこの金額なんですか?」

「はい、この国の貴族の多くは屋敷はもう持っています、先祖代々の物だから、移る気がありません、住んでいた方は貴族でしたから、内装も良いのですが、商人等が住むと生意気だと言われ商売がしにくくなります。あとは、住んでいた貴族が最後、跡取りなく非業の死を遂げたのでゴーストが出ると噂があるからですね」

「良し、決めた、これにしよう」

「セレス、ゴーストが出るかも知れないのよ」

「マリちゃんも少し怖いよ」

「あの、2人とも何を言っているんだ? こちらには元聖女のマリアが居るんだ! それが安い原因なら問題無い、一応俺たちは勇者パーティ絡みだから、貴族だって文句は言わない筈だよ」

「流石はセレスですわ、私が居ればどんなゴーストも浄化しましてよ」

こんなにお金を使っても、まだまだ余裕はある。

「それなら文句言は無いわ」

「安心だね」

こうして俺たちはパーティハウス兼城を手に入れた。

見ないで決めたのは若干自分でも驚きだが、まぁ勢いも必要だよな。



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