69 / 104
第69話 祭主
しおりを挟む帰りがけにフルールに話しをした。
「あのさぁ…フルールと2人きりも楽しいけど、あの2人が一緒ならもっと楽しいと思わないか?」
「そうですわね、私は2人きりが一番良いですが、4人だから楽しめる、そういう事もありますわね」
「そうだよな」
「私にとって命より大切な人は理人様ですわ。ですが命の次に大切な人となるとあの2人ですわね」
「そうだよな、悪いけどフルールは先に帰っていてくれるかな?」
「どうかされましたの?」
「無理元で、2人の事をテラス様に祈ってみたいんだ」
神に願掛けをする。
「それなら私も一緒に祈った方が良いのですわ」
「いや、今回はテラス様にとって嫌な願いをするから、俺一人の方が良いと思う」
「それなら仕方ありませんわね。少し寂しいですが先に戻っていますわ」
笑顔で去って行くフルールを見送りながら俺は近くの森へと向った。
◆◆◆
此の世界には神社は当然無い。
懐中式のミニ神社は作ったが…今回はお礼でなく『お願いだ』空気が良く自然がある場所の方が良いだろう。
今回の祈りは凄く気が重い。
今迄の祈りはほぼ感謝のみの祈りが多かった。
だが、今回は明らかに『お願い』だ。
良く『神頼み』なんていうが、本来はしちゃいけない事だ。
神とは感謝をささげるものであり、願うものではない。
良く爺ちゃんに言われていた。
神主の家系の俺がそんな事…本来はすべきではない。
だが、今回だけは仕方が無い。
森の開けた所で祈りを捧げた。
『呼んだ~』
テラスちゃんが現れた。
この世界に日本人は俺1人(フルールは微妙)なので簡単に顕現してくれる。
神が現れてくれる事じたいが本当は奇跡なんだ。
そこから『願う』なんて本当は無礼な話だ。
『今回は..』
『僕は神だよ...言わなくても理人が思っている事位解かる…あの2匹の犬の事ね』
犬…やはり辛辣だな。
俺の返事を待たずにテラスちゃんは話しを続けた。
『あの2人は好きか嫌いなら『大嫌い』だよ…人間で言うなら犬嫌いなお母さんが、可愛くも無い犬を飼いたいと可愛い息子が言うから仕方なく飼育を許可している。それに近い感覚だからね』
テラスちゃんからしたらそうだろう。
更に綾子も塔子もこの世界の女神から貰ったジョブは良い物だ。
当たり前だ。
だが、ここで引き下がる訳にはいかない。
『何か許して貰える手は無いでしょうか? 勿論、その為に犠牲が必要なら、払える物なら払いますから』
『そこ迄言うなら、方法は無く無いわ。僕は貴方が本当に可愛い。代々僕に仕えていてくれた一族だからね。 だから無条件で助けたんだよ。 理人とフルールだけなら、このまま面白可笑しく生きる事も出来るんだ。あの2人を『日本人』にしたいの、それは苦難の道になるよ』
『それでも俺はその道を選びたい』
『覚悟があるなら良いよ、理人がこの世界で僕の『祭主』になれば良いだけだよ』
『祭主、俺がですか?』
祭主…本来神社のトップは宮司だ、だがその上に大宮司が居てその上に『祭主』が居る。
だが、その地位は皇族や華族しかつけない。
良く俺は爺ちゃんの事を神主と呼ぶが…本来は宮司、神社のトップだ。
神代一族は代々宮司の一族…だが流石に大宮司や祭主にはなっていない。
つまり…テラスちゃんはこの世界で俺に『神職の頂点になれ』そう言っている。
『祖父でさえ宮司なのに俺が祭主で良いのでしょうか?』
『別に構わないよ…この世界には氏子はフルール1人しか居ないから、一からいやゼロから始めるんだから、構わないよ。だけど、これは完全に『女神』を敵に回す事になるよ。それで良いなら、2人を許してあげるよ』
これ以上名誉な事は無い。
だが、これは場合によってはこの世界を敵に回す事がほぼ確定する。
『俺にとってこれ以上の名誉は無いです。 ですが他の皆に聞いてみないと…』
『それなら決定だね、だって理人が命より大事で私に感謝を捧げるフルールが断るわけ無いよね。それに人は理人に全部捧げているんだから...断るわけないじゃない』
言われて見れば確かにそうだ。
『その通りですね』
『では、理人は今から『祭主』フルールが『大宮司』塔子と綾子が『宮司』と言う事で良いよね。流石に直ぐに行動しろとまで言わないよ。理人はもう『祭主』だから、他の三人には理人を介してその地位を授けると良いよ。 まぁ教化していくのはまだ先で良いや…だけどこれで『女神イシュタル』は明確に敵、それだけは心に刻みんでね。そしてそれを信じる者は邪宗を信じる者だから敵だからね。理人、貴方の敵は元からだけど魔族じゃない、魔物でも無い。
『女神イシュタル』とそれから加護を貰った異世界転移者と女神信者だからね』
元からそうだ。
そう考えたら、腹を括るかどうかそれだけの事だ。
『解りました。ですが『戦う』だけでなく『教化』して氏子にする。そういう戦い方をしても構わないのでしょうか?』
『それでも良いよ…まだ、行動を起こすのは早いから今暫くは今のままで構わない。だが時が来た時は『必ず行動を起こすんだ』』
『解りました…無理なお願いをきいて頂き有難うございます』
『良いよ、理人は特別な子だからね、神代一族の理人がこの世界に転移した。それは大いなる運命だったのかも知れないね。それでは頑張ってね』
『はい』
テラスちゃんは消える様に去っていった。
俺は体が痛くなり…暫く動けなくなった。
※私は神道は余り詳しくないので、突っ込みは許して頂けると助かります。
7
お気に入りに追加
2,793
あなたにおすすめの小説
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる