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第49話 【閑話】ユウナSIDE 私のお兄ちゃん

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私の名前はユウナ。

少し前まで『悪魔の子』という盗賊の頭をやっていたんだけど。

戻ってきたら討伐された後で皆死んでいました。

逃げるようにスラムに潜り込んだんだけど…どうして良いか困って途方にくれていました。

そうしたら、何故か、凄い美少年の竹丸お兄ちゃんに奴隷にスカウトされました。

凄く嫌われる容姿のドブス、しかも元盗賊の犯罪者なんだけど…

気にしないんだって…夢みたいで信じられないよ。

スラムの子にとって『奴隷』って凄く幸せなんだよ。

奴隷には最低限の権利があるんだもん。

ご飯が1日1回確実に貰えるし、ご主人様の庇護があるからむやみやたら、殺されないんだよ。

少し前まで盗賊の頭目をしていたけど、何時かは殺される盗賊より命が安全な奴隷の方が絶対に幸せだよ。

スラムで普通に生活していると命が危ないし、保証がある奴隷の方が絶対に幸せなんだよ。

例え相手が、豚禿げデブ親父でも『奴隷』になりたいそう思う子は沢山いると思う。

ユウナだって同じだったよ。

『保証』のある生活に憧れるんだ…

本当に。

◆◆◆

しかし、このお兄ちゃん…見れば見る程美形だよ。

どうしよう…顔が赤くなっちゃうよ。

しかも、さっき奴隷商で奴隷紋刻まれちゃって…正式にユウナは竹丸お兄ちゃんの者になりました。

これで一生、この美形のお兄ちゃんと一緒に居られるんだもん。

嬉しいな。

「竹丸お兄ちゃん」

「なんだいユウナ」

「ううん、呼んで見ただけだよ?えへへっ」

見ているだけで幸せ。

目が合うだけで幸せ。

それで、いまユウナ達は食堂に来ています。

竹丸お兄ちゃんは私が床に座ろうとすると椅子を引いて座る様にいいました。

可笑しいよね?

奴隷は床に座るんだよ、知らないのかな?

「ユウナは奴隷だから床に座るから良いよ? パン位はくれるよね?」

「良いから席につきなよ…ほら」

ユウナは奴隷で真面に食事を注文して食べないから椅子には座れないんだよ。

それなのに何でなのかな?

他の奴隷だって床に座ってパンをかじっているのに。

「あの、竹丸お兄ちゃん、お店の人に怒られるよ」

そういったら竹丸お兄ちゃんが店員さんに声を掛けました。

「すみません」

「はい、なんでしょうか?」

「普通に食事を2人前食べるなら、この子も席に座ってもいいですか?」

「此処のテラス席なら良いですよ! 別に奴隷だからって訳じゃ無くてね、臭いから店内は勘弁してね。ちゃんと衛生的な恰好をして、お金を払ってくれるなら奴隷だって店内で食事してもらって構わないからね」

「そう、ありがとう、大丈夫だってほら座りなよ!」

いいのかな…

「うん」

「それで、ユウナは何を食べたい?」

「お肉」

もう何日ご飯食べてないんだろう…久々のご飯だ。

「それじゃ肉料理でお勧めの定食2人前」

「はいよ」

竹丸お兄ちゃん、沢山食べるんだなぁ。

ユウナにもお肉一切れ位くれないかなぁ。

お肉なんてもう何時食べたか解らないよ。

暫く待つとオーク肉のステーキ定食が2つテーブルに並びました。

凄く…良い臭い。

「さぁ食べようか?」

これだけあるんだもんパンとお肉一切れ位くれるかな。

「えーと竹丸お兄ちゃん…ユウナはどれ食べて良いの?」

「ちゃんと1人前別にあるだろう? それは全部ユウナのだから好きに食べて良いんだよ」

これ全部がユウナのなの?

「…ほんと」

全部本当に食べて良いの?

「どうぞ」

「うん!」

竹丸お兄ちゃん…なんでこんな優しいんだろう?

ご主人様で無く『お兄ちゃん』って呼んで欲しいって言うし。

カッコよくて優しいお兄ちゃんなんて…凄いよ。

それに、これ凄いご馳走だよ。

こんなご馳走スラムの子じゃなくて普通の家の子でも誕生日とかしか食べさせて貰えないよ。

「これなかなか美味いな」

「うん、頬っぺたが落ちる位美味しいよね」

「そうか、それならこれもやるから食べな」

「良いの?」

「ああっ食べて良いよ」

やっぱり凄く優しなぁ~ 

こう言う凄く待遇の良い奴隷って多分『愛人奴隷』とか『性処理奴隷』だよね。

あそこのエルフのお姉さんみたいな高級奴隷の待遇としか考えられないよね。

ユウナは髪は緑で目は赤目だし需要がある様に思えないんだけどなぁ~。

それにガキだし、こんな容姿だから、ついた字が『怪物少女』なんだもん。

どう考えても『それ』としか思えないんだけど、絶対にユウナの勘違いだよね。

◆◆◆

「あの竹丸お兄ちゃん、ユウナと手を繋いで楽しいの?」

ご飯貰ったし何かお礼がしたいって言ったら…

竹丸お兄ちゃん…ユウナと手を繋ぎたいんだって。

これは竹丸お兄ちゃんじゃなくて、ユウナの役得だよ!

「凄く楽しいし、嬉しい」

う~ん。

解らない。

これは本当に『愛人奴隷』の様な気がするよ。

可笑しいな?

暫く歩いていると、竹丸お兄ちゃんは洋服屋さんで立ち止まりました。

どうしたのかな?

「えーと、此処は洋服屋さんだよね」

まさか、洋服を買ってくれるの?

そんな訳ないよね。

「流石に、その服じゃ汚いからね、普段使いの物3着に下着、あと靴を1足買おうと思うんだ、どうかな?」

「あのユウナ…奴隷なんだけど」

「気にしない、気にしない、どんな服が欲しいか希望はある」

信じられないけどこれ『愛人奴隷』決定じゃないかな?

そうじゃなくちゃ新品の服なんて買って貰えないよね。

だけど、ユウナ服なんて買ったこと無いよ…

「ごめん、竹丸お兄ちゃん…私服なんて買って貰った事無いから解らない」

「そう、俺も解らないから店員さんに任せようか? すみません、この子に似合いそうな旅服3着に下着3着靴下3足それに靴を下さい」

「えーとこの子にですか?」

どう考えても可笑しいよね。

店員さんも顔が曇っているし。

こんな醜くて小汚い子に服を買うなんて普通は思わないよね。

「そうだけど? ちゃんとお金なら払うよ」

「解りました」

竹丸お兄ちゃんが『異世界人』に見えるからだよね。

多分、普通の人だったら売って貰えなかったよ。

どう見ても私、スラムの小汚いガキにしか見えないもん。

「うん、似合っているよ! それじゃこれ下さい!」

「畏まりました」

買っちゃった。

新品の服、しかも3枚。

「良いの?! 新品の服なんて買って貰って」

「うん、ユウナに似合うと思うからね」

どうしよう、こういう時にどういう顔して良いのか解らない。

顔が赤くなっちゃうよ。

私に物なんて買ってくれた人なんて誰も居なかったんだもん。

「ありがとう」

「どういたしまして、だけど、そんなに抱えて歩いていたら転んじゃうよ」

「転んでも良いもん」

えへへっ、洋服迄買ってくれるんだから『愛人奴隷』決定だよね。

夜は頑張らないと。

黒目黒髪の色白の線の細い美少年に抱かれる…これが一番のご褒美かな。

というより、竹丸お兄ちゃん『異世界人』じゃない。

異世界人とのそういう行為って生まれてくる子が優秀だから、お金を払ってして普通はして貰うんだよね。

貴族の令嬢、裕福な商家の娘…エルフみたいな凄い美人。

そういう凄い人じゃ無いと抱いて貰えないって聞いたんだけど…

良いのかな…ユウナで。

う~幸せ過ぎる。

「それじゃ、宿屋に行くか?」

あれ、夜まで待てないのかな?

私は勿論良いんだけど…まだ明るいのに。

「うん…」

一応は私も女だから、しおらしくした方が良いよね。

そのまま竹丸お兄ちゃんに連れていかれたのは『高級宿屋』だった。

もしかして期待されちゃっているのかな?

これ相当頑張らなくちゃ。

部屋は大きくて綺麗だし、お風呂もついているし。

「それじゃ、ユウナお風呂入って来なよ」

「うん…」

流石に照れちゃうよ。

シャボン使って綺麗にしないと。

流石にノミとか居ないよね。

うん、大丈夫だよね。

がっかりされない様に頑張ろう…

「竹丸お兄ちゃん、今出たよ」

「そう、それじゃ、僕も入ろうかな」

そういって竹丸お兄ちゃんはお風呂に入っていった。

竹丸お兄ちゃんが出て来たら、頑張らないと。

だけど、どうすれば良いのかな?

ユウナ、解らないから竹丸お兄ちゃんに任せれば良いよね。

「ふぃ~良い湯だったな、あれユウナ、なんでシーツ巻いて裸なの? 折角下着に洋服迄買ってあげたんだから着替えなよ」

「えーと、服着るの?」

「うん、暫く休んだら、今日は奮発して夜も美味しい物食べに行こう! 新しい服を着ていればもう、お店に文句は言われないからね」

「そうだね」

これは夜に持ち越しなのかな。

流石にまだ夕方だから、しないのかな。

その日の夜は竹丸お兄ちゃんはミノタウルスのステーキを食べに連れていってくれました。

夜寝る時に裸になって迫ってみたんだけど。

「僕だって男だから気をつけないと…ユウナは可愛いんだからね」

だって。

『大切にされているのが解るよ』

こういう時本当にどうすれば良いのか解らないよ。

ユウナの思い出に、大切にされた記憶なんてないもん。

思わず顔が真っ赤になっちゃったよ。

ユウナ的には押し倒したい位、なんだけどなぁ~。

こんな緑髪で赤目の私を可愛いいなんていう人、竹丸お兄ちゃんしかいないし。

それに竹丸お兄ちゃんは異世界人なんだから女なら誰でも『抱きたくなる』のに…

「私が可愛いなら抱いて」

頑張って言ってみた。

「解かった」

そう言って竹丸お兄ちゃんが抱きしめてくれた…あれっ。

頭を撫でてくれて…ただ抱きしめてくれる…それだけなの?

正直いって竹丸お兄ちゃんが何をしたいのか解らない。

だけど、こんなに優しくしてくれて、幸せにしてくれるなら…何でもしてあげたい。

心から本当にそう思うよ。

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