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第20話 王と...
しおりを挟む国王エルド六世に呼び出された。
不味い事になったな。
『『無能』の筈の俺が騎士に勝てる』
この位ならまだ何とか誤魔化せたのかも知れない。
だが、今回はかなり不味いな。
無能の筈の俺が『剣聖である大河を倒した』 これは普通に考えてあり得ないだろう。
まだ、大河は強くなって無い。
そう言う言い訳も、大河が騎士を倒している事から通用しない。
本来なら悩むべきなのだろうが…
どうでも良いな。
別に『異世界で得た能力』使って倒した訳じゃない!
普通に話せば良いだけじゃ無いか。
俺には、常時発動の3つの能力がある。
絶対とまでは言えないがきっと、どうにかなるだろう。
俺は気楽に考え、謁見室へと向かった。
◆◆◆
凄いな! お城は何処も凄く豪華だが、その中でも此処は別格だ。
煌めくシャンデリアにフカフカの絨毯、正に豪華絢爛。
エルド六世を前に、俺の傍の騎士が跪いた。
俺も併せて跪いた。
仕方が無い挨拶位はするか。
「エルド六世様には」
どう挨拶すればよいんだろうか?
異世界の挨拶なんて解らないな。
「よいよい、気にする必要は無い、異世界から来たのじゃこちらの作法を知らんでも仕方ない。そう思わぬか?マリン」
「はい、お父さま」
「そう言って頂けると助かります」
思ったよりきさくだな。
「更に言うなら跪まずかないでも良いぞ」
「畏まりました」
そう伝えると俺は跪くのを止めて立った。
無理やり平和な日本から連れてきて、役に立たないと思っていた俺を僅かなお金で追い出そうとした…そう考えたら王とはいえ俺が崇める意味は無い。
それにこれはエルド六世の本心ではなく、常時発動の能力のおかげだ。
そうで無ければ、大切な剣聖大河に大怪我をさせた俺にこんな対応は可笑しい。
「率直に聞く、何故お主は『無能』なのに剣聖である大河殿を倒せたのじゃ」
聞かれると思っていた。
「それは俺が、剣を習っていたからです」
「確かにそうであろうが、お主以外にも剣を習っていた者も居たと聞くが、召喚された当初は騎士にも敵わなかったと聞く。何故、お主だけが騎士に通用しあまつさえ剣聖すら倒し得たのだ…そこを教えてくれ!」
本当の事は絶対に教えられない。
手厚くされていたなら、譲歩するが、俺を追い出そうとする存在に真面に答える必要は無い。
「これは我が家の秘伝です。そして私はこの城を追い出される身、おいそれと教える訳にはいきません」
顔が引きつっている。
恐らく、常時発動の能力が無ければ怒鳴られるのだろう。
凄いな、3人から得た能力。
「ならば取引といこう、対価を払おうでは無いか」
「それならば、城を出ていく際に平民が1年暮らせる金額と身分証明をくれませんか? あと当人が納得したなら私と仲間になる事の許可を下さい!」
恐らくこの位が限界だろう、前の部分は兎も角、後半部分は厳しいかも知れないな。
「仲間とは『大魔道』の少女の事か?」
「そうです!ただ言わして頂ければ、私達はそちらの勝手で召喚されたのですから、本来は自由な筈です。この城の人間に『誘拐』はこの世界でも犯罪だと聞きました。お金は『誘拐』に対する謝罪金です。本来なら、元の世界に責任をもって送り届けるのが正しい謝罪の筈です! それさえ出来ないのですから、慰謝料に、好きな者同士仲間を組む権利位はあると思いますが、如何でしょうか? それに先日、勇者である大樹が、彼女にどんな事をしようとしたかも、知っていますか? あれは、この国では、犯罪ではないのでしょうか?」
俺には常時発動の能力がある。
嘘は言えないだろうし、誠実な対応になる筈だ。
「確かに聞いておる。だが、お主にいう通り元の世界には戻せぬし、勇者達にはこの世界の為に戦って貰わねばならぬ以上、王であっても強くは言えぬのだ。すまない!その待遇で良いのなら、その話は飲もうと思う。それでお主のその強さの理由を教えてくれるのだな」
「そうですね!こちらの要求が飲まれるのなら、お話ししましょう。王の知っている最強の剣士は誰ですか?」
「何か意味があるのか? 剣聖ジェイクだ、その太刀筋は魔王すら斬ったと聞く、伝説の人物だ。」
「もし、その剣聖ジェイクがその剣技を誰かに伝えて使える人物が居たらどうでしょうか?今回位の事出来ませんか?」
「ジェイクの剣技が使えるなら、かなりの強者だ…まさかお主、剣聖ジェイクと何か縁があるのか?」
「ありません!ですが俺の住んでいる世界にも『剣聖』がおりました。その中でも歴代最強と言われる人物が残した剣技があり、その一部を俺は学び使える。それだけの事です。」
「異世界の剣聖の剣技を使える『それ故に勝てた』そういう事じゃな。」
「そういう事ですね」
これは嘘じゃないからな。
「じゃが、なんでそれはステータスに反映されなかったのじゃ可笑しい!」
それは俺も知らない。
確かに鍛えていた俺のステータスがあそこ迄低いのは可笑しい。
「それは私に聞かれても困ります。ですが剣道経験者や、それなりに鍛えた者も居るのに、その能力は反映されていないようですから…その辺りが何か関係があるのではないですか」
「そうじゃな!それは確かにこの世界の事、お主が解る訳ないか…それで、ちと願いがあるのじゃが」
嫌な予感がする。
「なんでしょうか?」
「今現在、勇者の大樹殿は体を壊しており、剣聖の大河殿はお主と戦って重傷じゃ、果たしてどこまで治るかは解らない!そこでだ1週間後に『大賢者殿』か『聖女殿』と試合をしてくれぬか?」
「そのメリットが俺には何もありません」
「充分な戦力と解れば…他の異世界人と同じ扱いとしよう」
それは可笑しい。
大賢者や聖女と勝ち、それ以上の力があるなら『皆と同じ』は可笑しい。
五職と同じでなければ不平等だ。
「戦う相手は『大賢者の聖人』それに勝利したのに他の皆と一緒は可笑しいでしょう?勝ったら扱いは『勇者と同等』それなら受けましょう!」
「『勇者と同等』それはちと欲張り過ぎでは無いか?」
「俺は既に『剣聖』には勝っています。五大ジョブの二人目に勝てるなら、その能力は勇者と互角と見るのが妥当では無いでしょうか? 違いますか!もし、それで納得されないなら、その後勇者と立ち会って、勝利したらという条件でも構いません」
今の大樹になら、絶対に負けるわけが無い。
「解かった、もしお主が『大賢者』に勝てたら、その望み叶えよう。」
相手は『大賢者 聖人』か?
こうして王エルド六世との話し合いは無事終わった。
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