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【閑話】枢機卿の最後

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久しぶりに酒を飲んだ。

酒を飲んだのは何年ぶりだろうか? 20年ぶりだな。

息子のガーグが審議官になった時は嬉しかったな。

私の様な神に仕える存在になりたいだ何て良く出来た息子だ。

しかも、上級審議官の資格まで持っているから、勇者と剣聖の鑑定にも立ち会った。

これは凄く名誉な事だ。

人生に一度あるかどうかの大舞台、勿論まだガーグは若造だ。

だから、あくまで補佐官だ。

だが、それでも鑑定する3人の中の一人素晴らしい事だ。

中心に居るのは、看破のミフォール。

私の知っている限り、ミフォールが鑑定をしくじった事は無い。

偽装すら通じない《神の目》を持つ男、それがミフォールだ。


性格には問題があったが、まごう事無い勇者と剣聖だった...良かった、息子の晴れ舞台が無事に終わった。

だが...

何故なんだーーーーーーっ

ミフォールがまさか、審議ミスするなんて考えられない。

看破のミフォール、神の目を持つ男...そんな男がミスするなんて信じられない。

その真偽ミスの責任は大きく...結局、息子は処刑されてしまった。


勇者と剣聖が11歳の若者に殺された...だから偽物なんだ。

そういう結論によるものだ。

しかもご丁寧に学園長の責任印まで押してある。

だが、勇者と剣聖だからと言って絶対に負けない物だろうか?

あの二人は最低の勇者に剣聖だ、碌に修行もしないで悪さばかり、本物であると考えても歴代で下から数えた方が早いだろう。

それに対してルディウスという少年は英雄と魔法使いの息子だ...しかも前の戦争で活躍した人物の息子。

もし厳しく鍛えられたのなら勝つ可能性もあるのでは無いか?

そこから私は調査した。

最も、だからと言って《彼は罰せない》正規の決闘で勝利したのだ、当たり前だ。

しかも、私と同じ王国の人間だ、個人的に考えても彼は正しい。

私もそこに触れる気はない。

勇者、剣聖とはいえクズなのだから、それもやむを得ない。

だから、私が証明したいのは《勇者と剣聖は本物だけど、弱いから殺された》そういう事なのだ。

調べれば、調べる程、ルディウスは優秀だった。

聖女ホワイトが勇者と剣聖の抜けた穴を埋める為に必要だった位に。

教皇様にも《優秀な人間を発見した、パーティーに勧誘》そういう連絡が来たとの事だ。

しかも、歴代最短で卒業した、魔法も剣技も完璧。

教師すら敵わない。

しかも、英雄と魔法使いの親...充分勝てる可能性がある。

こんな存在をただの11歳の少年と言えるわけが無い、天才だ。

こんな天才ならあんな未熟な勇者や剣聖殺されても可笑しくない。


あははははっ最初から私が調べるべきだったよ。

馬鹿な勇者と剣聖が天才に殺されただけ...それが真相だ。


だから、私はこれを報告書としてあげた。

これで息子のガーグ、親友のミフォールの名誉を晴らす事が出来た。

だが、そこからが可笑しい事が解ってきた。

ルディウスという少年が《天才過ぎるのだ》

こんな天才は歴史に居たのか調べた。

居ないのだ、こんな天才は歴史上にすらいない。

魔法の天才、剣の天才、そして聖女ですら魅了される様な男。

私の知る限りそれに近い男は《神に愛された男、麗しのローゼン》しか居ない。

これが聖教国で一番の天才と言われる男だ。

その男に聞いてみた。

「はっ、11歳? そんな訳無いでしょう、私でもそこ迄出来ませんでしたよ?そんな人間が居たらすぐにスカウトに行きますよ」


つまり《あり得ない》程の天才なのだ。


しかも調べて見たら、弟の不審死に、父親の不審死。

彼を迫害していた家族が2人死んでいた。

勇者と剣聖が死んで直ぐに始まった魔族の進行。

そして、いくら探しても見つからない《本当の勇者》。

不審過ぎる謎の少年。

余りにも可笑しすぎる。


そんなある日、教会から幾ら探しても勇者が見つからない事から、私の報告書が正しい可能性が高い。

と言う、正式な手紙が来た。

それと同時に教皇様が《勇者を失って悲しんでいる》その様な報告も来ていた。

あの方は勇者絶対主義者...当たり前だ。

そして、その怒りはルディウスに向っていた。

だが、肝心のルディウスは聖女様のお気に入り、直ぐに手は出せない。


そこで私は魔が差した。

ルディウスが《勇者》と《剣聖》を殺した。

それが認められれば、親友も息子も潔白だったと世間に広まる。


実力はあるかも知れないがルディウスは...グレーだ。


国王であるアルフ4世にも教皇様から話は来ていた。

話し合いの結果...ヘングラムに《責任を取って貰う事》に決まった。

教皇に忖度したいアルフ4世に息子や親友の身の潔白を晴らしたい私。

利害は一致した。

その結果がこれだ。


あはははははははっルディウスが《本物の勇者》だったのか強い筈だ。

その事実は、息子やミフォールが鑑定ミスをした事が証明された事になる。


「貴方」

「すまないな、お金はあるだけ、宝石も何でもあるだけ持っていくが良い」

「もうどうにもならないのですか?」

「ああっ!このまま居るとお前や娘にも咎が行くかもしれない」

「ですが」

「離縁したとなれば表向きはもう追及されまい、だが、この国に居たら迫害されるかもしれない、何しろ私は勇者様の家族を殺す指示をした大罪人だからね」

「...すみません」

「スルトンは小国だけど、昔私が手を差し伸べた事がある、あそこの王子の婚姻は私が行った、お前達の面倒も見てくれるそうだ...その為のお金と宝石だ」

「ううっこんな事になるなんて..何で私達が」

「仕方ない事なのだよ...さぁ行きなさい」

「はい」


これで心残りは無い。

幸せに...


「おやローゼンどうしました?」

「私にも責任はある、ギロチン何かで晒す様な死に方を貴方にさせたくはない」

「そうですか? その顔は貴方が私を殺してくれるのですか?」

「助けられないなら、せめて苦しみなく死なせてやりたい、私の一閃なら一瞬で死ねる」

「義理堅いなローゼンは、お願いして良いかな?」

「ああっ、任された」

ローゼンは居合の様に剣を抜くと約束通り一瞬で首を跳ねた。

そして滑る様に首は体から落ちた。


「すまなかった、俺にはこれしかしてやれない」


【ローゼン】

何かが起こる気がする。

今回の勇者は血塗られる過ぎている。

兄弟が死んで、父が死に...

今度は母親が死んだ、そして勇者関係で何人死んだか解らない。

女神に愛されると言われている勇者がこんな《血塗られた存在》な者なのか。

俺は結論は急がない...だがルディウスが本物の勇者かどうかこの剣で確かめてやろう。

本物の勇者なら良し...違うなら...このローゼンが殺してやろう。



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