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英雄殺し 死んだ訳は...

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私は気が付いてしまった。

ルディウスがアベルを殺そうとしている事に。

本来なら、義理とはいえ息子が親を殺そうとしているのだ止めるべきなのだと思う...

だけど、嬉しくてしょうがない..実の父親を殺そうとしている義理の息子が愛おしくてしょうがない。

だってルディウスは私の為に殺そうとしてくれているのだから..ここまで愛されているのかそう思ったらもう...駄目ね..ついニヤニヤしてしまう。

あの子は私に何も言わない..だけど、毎日肌を合わせているから..解ってしまう。

あの子は本当に優しい...私が「子供が出来ない体」そういう話をすると良く見ないと解らない位だけど、悲しい顔をする。

「側室の話や離れの話」をした時も嬉しいという顔と悲しい顔の両方が見れた。

そして、そんなルディウスが私の昔の事を聞いてきた。

どちらかと言うと私より英雄としてのアベルの事について熱心に聞いてきた。

自分では隠しきっているつもりだろうけど...解ってしまうわ...アベルを殺そうとしているんでしょう。

だけど、私は貴方がアベルを殺すのが怖いわ。

アベルが死ぬことも、殺そうとする貴方が怖いからじゃない...貴方が万が一負けて殺されてしまう..それだけが怖いのよ...

私は多分、ルディウス、貴方が死んでしまったら生きていけない。

ルデイウス、貴方が傍に居る事..体をあわせる事はもう私にとって当たり前の毎日なのよ

それが無くなるなんて考えられないわ。

だったら...貴方がアベルに何か仕掛ける前に...私が殺すしかない。

そう考えたら、早い方が良い、側室を迎えたらチャンスが減る。


私は魔法使い...その仕事の中には暗殺から仲間を守る事も含まれる。

つまりは暗殺についてもエキスパートだ。

真正面から戦えば英雄と呼ばれるアベルに私は勝てない..だが裏なら話は別。

王都なら死因は解るかもしれないが..この辺りなら絶対に死因が解らない殺し方が出来る。

そんな方法は幾らでも知っている。

そして私はそれを実行した。

アベルが好む食材で私やルディウスが食べない物に毒をいれた。

それだけで良かった...後はそれをアベルが何時食べるかだけだ。

万が一にもルディウスが食べてしまうといけないので...暫くは自分たちの食事は私が作った。

メイドには「側室が来た時の為に馴れないと」とか「最近息子が愛おしくて..昔を思い出して料理したいのよ」そう言っていたから万が一にも疑われないだろう。


上手くいった...

私はアベルが死んだ時や葬儀の時には悲しそうな顔をしたり、泣いたりもした。

本当は全然悲しくないわ...だってアベルなんてとっくに愛していないから...

だけど、ルディウスには冷酷な女と思われたくない..本当は違っても優しい女だと思われたい。

だから、悲しそうにしていた。

本当は...凄く嬉しい..これで好きな時に好きなだけルデイウスと愛し合える..

その日の夜、私は..いつも以上にはしたなく、燃えた...


ルディウスと過ごす時間は..本当に気持ちが良く..愛おしい..この時間の為なら何でもする。

私はそういう女なのよ。

変わりゆく日常
アベルが死んだ事によりヘングラム家の当主はアマンダになった。

それと同時に俺は1年遅れで学園に通う事になった。

本来は行けなかった学園だが、俺は正式に跡取りになる事が決まりアマンダからの提案で来年から行く予定だ。

学園への理由は「当主が元から病弱気味で亡くなった事による、継承についての整理」と表向きはなっている。

英雄と言われていたアベルが病弱だと言う事は驚かれたが、死んでしまったので《そう言う事か》と誰もが納得したようだった。


だが、本当の理由はアマンダが離してくれないからに他ならない。


「アベルが死んじゃったから、女伯爵になっちゃったわね...まぁ私も子供がもう産めないし、ルディウスが生きがいみたいな物ね! 残りの人生はルディウスと楽しみながら生きていけばいいわ、ルディウスの代でヘングラム伯爵家はもう終わりで良いわね!」

どこまでもアマンダは女だった。

これってさりげなく俺を愛しているという言葉以外に、《浮気は許さない》そういう話が含まれているんだ。

俺も貴族だ、そしてヘングラム家は伯爵だ、婚姻の話位幾らでも持ち上がる..だけど、さらりと結婚はさせないで潰すそう言っているという事だ..凄いなこれは。

普通の貴族は家の存続を全てに優先させる

思っていても貴族である以上は言ってはいけない事だと思う。

最近ではメイドや使用人にも関係はばれている。

まぁアベルが死んでからは所構わずベタベタしてくるから当たり前だな。

だが、さすが伯爵家の使用人、余計な事は言わない。

親しいメイドのアンに聞いてみた。

「良いじゃないですか? お母さまの愛情を取り戻せて、それにそういう関係は案外貴族様には多いんですよ」

「そうなのか」

「はい、よく聞く話です」

ただ、アンは俺とは本当に仲が良い、だからもう一人イライザにも話を聞いてみた。

「貴族様には少なからずある事ですよ! 母と子、父と娘、それで良くいかず後家とか出来るようですね、ルデイス様がこんな根性があるとは思いませんでしたが、案外野心家だったんですね、良かったら私も愛人とかしてくれませんか? ルディウス様よりは年上ですが、若いですし、何なら結婚してカモフラージュにしても良いんですよ?」

此処までくると清々しい。

俺は前世が多分クズだったから、こういう奴の方が話していて面白い。

まぁ《付き合うという意味では》微妙だがな。

将来何か利用価値があるかも知れないから、今は仲良くしておく。

「そうか、まぁ考えて置くよ、有名なお尻の落書きも見てみたいしな」

「ルディウス様、随分変わりましたね、砕けたというか、ワイルドになったと言うか...前みたいにイジイジして無くて、まぁ今の方が素敵ですよ」


下手にメイドと仲良くするとアマンダの機嫌が悪くなり、そのメイドに風当たりが強くなる。

だから、アンやイライザを特別な相手としてあらかじめアマンダに紹介した。

特にアンの事は使用人扱いの時に色々相談に乗って貰ったと盛った。

先に先手を打って、「アマンダと仲良くなりたくて、色々と考えていた時から助言してくれていたお姉さん」そんな感じでアンについては、アマンダに話した。


実際に本当に子供一人であそこまで行動できるか考えたら、普通はできないと思う。

それなら協力者が居た、そう言う風にした方が良いだろう。


居ない筈の協力者をアンにした。

まぁ、話もしていたし、相談もしていたから全部嘘ではない。

その事を話したらアマンダは凄く喜び、他のメイドよりアンを一つ上に扱うようになった。

たまに銀貨をもらってアンも喜んでいるからWINWINだろう。

アンが俺の傍に良くいるが安心しているのかアマンダは笑っている。


それとは別にイライザとも良くしている。

たまに二人でアイコンタクトしてして居ることに気が付いた。

俺は見張り役を作ってしまったようだ。


そして、俺は俺を庇って此処を出て行ったルドルが気になった。

戻ってきてくれるかどうかは解らないが、もし戻らないなら、少なくともあの時に棒に振った退職金だけは払いたかった。

侯爵家にルドルを迎えに行ったがそこにルドル居なかった。


多分、あの時に言ったことは事は僕を安心させるために言った嘘だったんだろう。

最後まで彼奴はカッコいいな。

ルドルを探すために冒険者ギルドに依頼を出しに行ったら、何と、そこにルドルがいた。

ルドルは凄くやつれていた、何かの品物を換金していたがどう見ても銀貨だ。

「ルドル!」

「ルディウス...これは恥ずかしい所を見せてしまいましたな」

ルドルは歳だ、いかに優秀でも再就職なんて、そうそうあるはずが無い。

それなのに、此奴はそれを捨てて庇ってくれたんだ。

やっぱり、ヘングラム伯爵家、いや俺にとって必要な人間だ。

「ルドル、お願いだヘングラムに帰ってきてくれないか?」

「ルディウス、お前にその権限がないだろう?」

「そこで座って話さないか?」

俺は、全て話すのが筋だと思い、今の現状の全てをアマンダとの関係も含み全部話した。

アマンダが子供の産めない体になった事、自分との仲が良くなった事、嘘をつきたくないから男と女の関係であること。 そして自分が恐らく次の当主になるが...そこでヘングラムが潰れる可能性が高い事。

「なるほど、話は解りました。それなら私はヘングラムではなく、ルディウス様とアマンダ様に仕えれば良いわけですな」

「お願いできるかな?」

「解りました、ルディウスお坊ちゃん、いやルディウス様、昔のように務めさせていただきましょう。あっ執事になる前に一言言わせてください」

「何でも言ってくれ」

「ルディウス、面構えが変わりましたな、それと形はともかく取り戻せて良かったな..ここからは執事に戻りますので今の無礼は平にご容赦ください」


「うん、ありがとう」


これで多分、どうにかヘングラムもどうにか回るだろう。

これからが学園に入るまでの一年...アマンダに魔法を死ぬ気で教わろう。

そう思った。
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