たとえば勇者パーティを追放された少年が宿屋の未亡人達に恋するような物語

第41話 カルミーSIDE 根っこは傭兵だから

リヒトが帰って来た。

笑顔で居るが…何時もと違う顔だ。

これでも元傭兵で冒険者…血の臭いは良く解る。

私は今まで沢山の人間を殺して来たから、良く解る。

あの顔は初めて人を殺した顔だ。

にこやかに笑って見せているが…体に少し震えがある。

リヒトが殺すような人物…そんなのは解っているよ。

『私絡み』だよね…

もうどうして良いか解らない…私の人生此処迄愛して貰った事は無いんだから…

私の根っこは傭兵にあるんだと思う。

リヒトが『私の為に手を汚してくれた事が嬉しい』『仇をとってくれた事が嬉しい』

誰を殺してくれたのかな？

ケビンかな？

流石に村ごと皆殺しは出来ないから…そんな所かも知れない。

だけど…この臭い…オークの血の臭いもあるから…

そうか、ケビンを殺してオークも狩ってきてくれたんだ。

凄く素敵だ…

どうしょう？

体が火照っちゃうよ…

冒険者証だってリヒトの嘘だ。

そう簡単にギルドはミスを認めない…信用に関わるからね…

涼しい顔をしているけど…此処でも頑張ってくれたんだ…

『私の為に殺しまでしてくれて、ギルドと喧嘩迄してくれるリヒト』

もうどうして良いか解らない程、愛おしい。

『ねぇリヒト誰を殺したの？』

『何人殺したの？』

『オーク迄狩ってきて、嬉しいよ愛しているよ』

今すぐ、そう言う声を掛けてあげたい…

そして…あはははっ…うん…そのね…

だけど、リヒトはそれを望まない。

平穏に私達と静かに愛しながら暮らす。

多分、それがリヒトの理想みたいだから…

『この非日常を口にしてはいけない』

私は、嬉しくて仕方ないけど…口にするのを我慢して気がつかない振りをした。


本当に、愛おしくて仕方がない。

何でもあげたいし、買ってあげたい…

それなのに…リヒトが欲しがるのは『私の物ばかり』

確かにOバックってエロイけど…これリヒトの物じゃないよね？

私の物だよね。

もう、身も心もリヒトの物になっているのに…望むのは『私』ばかり…

これだけ体を重ねているのに…まだ足りないとばかりに愛してくる。

何も欲しがらないから『愛』で返してあげるしかない…

だけど『愛』で返しても、それ以上の愛を返してくるから困るのよ。

今日は仕方ない…多分、私の為に手を汚してくれたリヒトの為に獣になろう…雌になって激しく…リヒトを求めよう…そんな事しか思いつかないや。

◆◆◆

リヒトに聞けないから、ギルドで聞いたら…あの村はオークに滅ぼされてしまいリヒトは依頼に失敗したそうだ…

嘘だね…あそこはしっかりとした門や塀があってオーク対策がされていた。

多分、あの辺りのオークもきっと『私の仇認定』したんじゃないのかな？

村人全員皆殺し…僅かだが、あそこには女子供も居た…それすら殺したんだ。

『嬉しくて堪らない』

やっぱり私は根っこが傭兵なんだよな。

『私の為に村人を皆殺しにした…それが嬉しくてたまらない』

女子供まで皆殺しにするなんて…凄い愛だよ。

おばさん…これ言うとリヒトは悲しそうな顔するから言わないけど…この齢でこんなに愛されるなんて思わなかった。


もう『愛』が大きすぎて返せないや…

仕方ないな…今夜も雌の獣みたいにリヒトを求めようかな…

それしか、リヒトが求めないじゃ仕方ないよな…

凄く本当は恥ずかしんだけど…