上 下
8 / 53

第8話 告白

しおりを挟む

「リヒトくん、夕食ができましたよ…さぁ食べようか?」

廊下からルミナスさんの声が聞こえてきた。

良いなぁこういうの…

今まで、食事といえばいつも俺が作っていたし、呼ぶのも起こすのも全部俺…しかも感謝1つされなかった。

だから、すごく新鮮でうれしい。

しかもルミナスさんは声も凄く綺麗なんだよな…

「は~い、今行きます」

俺は、ベッドから飛び起き食堂に向かった。

◆◆◆

「凄くおいしい…」

「そう?!そう言って貰えると作ったかいがあるわ…お代わりもあるから沢山食べてね」

「はい、頂きます」

今日のメニューはオークシチューだ。

良く煮込まれていて、凄く美味しい。

料理も美味しいがテーブルを挟んでルミナスさんがいる…それが一層料理を美味しくしている。

「相変わらず良い食べっぷりをしているわね…うふふっ私に子供が居たらリヒトくん位なのよね、あっパンもお代わりあるからね、はいどうぞ」

「ありがとうございます…だけど母子には見えないと思いますよ…ルミナスさんは若くて綺麗だから、せいぜい姉弟にしか見えないと思います」

「あらっ、おばさんを揶揄っちゃだめよ!私は良いけど人によっては本気にしちゃうからね…ほら頬っぺたにパン屑がついているわよ」

そういうと俺の頬っぺたのパン屑を手で取りそのままパクリと食べてしまった。

ルミナスさんがすると凄く色っぽく感じる。

俺の年齢は15歳。

ルミナスさんの年齢は…解らない。

微妙な年齢なのか決して教えてくれない。

前にそれとなく聞いてみたが…

『うふふっ、女性に年齢は聞いちゃだめよ!』

『教えてあげな~い』

『もう、おばさんですから(怒)』

と決して教えてくれなかった。

それにこの会話をすると明らかに『私、不機嫌です』という感じになるので未だに年齢不詳のままだ。

多分、20代後半位…そんな感じに思っている。

「ところでルミナスさん、他にお客はいないんですか?」

「そうね、いないわね、リヒトくんが三か月ぶりのお客様かな?」

「あの…大丈夫なのですか?」

「亡くなった旦那が一応下っ端だけど軍人だったから継続して慰労金が貰えるのよ…だから宿屋の収入が無くても細々暮らせるわ、まぁ贅沢はできないけどね…それよりリヒトくんはなんで此処にきたの?冒険者として高ランクなんだから、他に行けば沢山稼げるでしょう?」

「勇者パーティで結構疲れちゃいまして、のんびりしたくて…」

「のんびりしたいなら、コハネとかオカシズとかリゾート地で冒険者をした方が良かったんじゃないのかな? ここを選ぶ理由はない気がするけど…一度城砦が破られてから、ここどんどん廃れていっているわよ」

結構鋭いな。

「実はルミナスさんに会いたくて…つい来ちゃいました」

「えっ、私に会いたくて…こんなおばさんに会いたかったの?」

「はい」

「あっそうか…リヒトくんお母さんが居ないから、それで…」

「いや、そうじゃなくて、ですね…」

此処まで来たら、腹を括るしかないよな。

「まさか、おばさんを好きになっちゃったとか(笑)!」

「…はい」

「あ~あ、おばさんを揶揄っちゃだめよ! リヒトくん…」

「…」

「ほら、私、おばさんだよ…碌なもんじゃないよ、胸だって垂れてきているし、お尻だって大きいのよ…若い子みたいにスレンダーじゃないし…歳だってリヒトくんの倍位だわ、リヒトくん二枚目で若いんだから幾らでも可愛い子が選び放題じゃない?」

「俺が見た女性の中でルミナスさんが一番綺麗でした…ルミナスさん以上に綺麗な女性を見たことありません」

「あ~あ…おばさん困っちゃうな…でも『綺麗』なんて言われたの久しぶりだわ…ありがとう…あははっ…そうだ片付けしなくちゃ…食器はそのままで良いからね…それじゃ…」

「あっ…」

ルミナスさんは、顔を赤くしながら行ってしまった。

普通に考えて子供位の子に言われても困るよな…

つい勢いで言ってしまったけど…どうしよう…

気まずいな。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

大嫌いな後輩と結婚することになってしまった

真咲
BL
「レオ、お前の結婚相手が決まったぞ。お前は旦那を誑かして金を奪って来い。その顔なら簡単だろう?」 柔和な笑みを浮かべる父親だが、楯突けばすぐに鞭でぶたれることはわかっていた。 『金欠伯爵』と揶揄されるレオの父親はギャンブルで家の金を食い潰し、金がなくなると娘を売り飛ばすかのように二回りも年上の貴族と結婚させる始末。姉達が必死に守ってきたレオにも魔の手は迫り、二十歳になったレオは、父に大金を払った男に嫁ぐことになった。 それでも、暴力を振るう父から逃げられることは確かだ。姉達がなんだかんだそうであるように、幸せな結婚生活を送ることだって── 「レオ先輩、久しぶりですね?」 しかし、結婚式でレオを待っていたのは、大嫌いな後輩だった。 ※R18シーンには★マーク

この奇妙なる虜

種田遠雷
BL
クリッペンヴァルト国の騎士、エルフのハルカレンディアは任務の道程で、生きて帰る者はいないと恐れられる「鬼の出る峠」へと足を踏み入れる。 予期せぬ襲撃に敗北を喫したハルカレンディアには、陵辱の日々が待ち受けていた――。 鉄板エルフ騎士陵辱から始まる、奇妙な虜囚生活。 転生しない方の異世界BL。「これこれ」感満載のスタンダード寄りファンタジー。剣と魔法と暴力とBLの世界を。 ※表紙のイラストはたくさんのファンアートをくださっている、ひー様にお願いして描いていただいたものです ※この作品は「ムーンライトノベルズ」「エブリスタ」にも掲載しています

キセキなんか滅んでしまえ!〜ようやくドロドロに溶けた肉体が戻ったと思ったら、美少女と肉体が入れ替わっている〜

マグローK
青春
 かつて体が溶ける不運に見舞われたぼっち体質の主人公遠谷メイト(とおたにめいと)は、クラスだけでなく学校でも浮いている美少女、成山タレカ(なりやまたれか)と肉体が入れ替わってしまう!  過去の伝手を頼り、今回も本人の願いが歪んだ形で叶ってしまうキセキだと判明。  願いを処理してタレカを元の体に戻るため、メイトはタレカの願いを叶えようと奔走する。  果たして、二人は元の体に戻れるのか!? この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません この小説は他サイトでも投稿しています。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

氷王の最愛 ー 記憶を奪われた巫女姫は、初恋の戦士に愛し抜かれる ー

文野さと@ぷんにゃご
恋愛
幼い頃の記憶がないマリュリーサは、今日も巫女姫として、人々に癒しを与える。 そんなマリュリーサを熱く見つめる美しい男。 氷のような青い目に、はかり知れない熱情を込めて──。 オ レ ノ モ ノ ダ 次第に彼の視線にからめとられていくマリュリーサ。 止まっていた時間が動きはじめる。 短期集中連載。50話くらい。毎日21時に更新予定です!

人妻に憑依したのはいいけれど、男とエッチするのはちょっと…

氷室ゆうり
恋愛
今回は憑依ものです。…わたしが作る憑依って基本的に憑依した側がなぜかかわいそうな目に合うんですよね。だからダーク系憑依とは相性が悪いというか。今回の憑依も人妻に憑依した男が旦那に無理やり…みたいな感じです。ああ、r18ですよ? ショートショートですので、会社終わりや勉強の合間に、ちょっとエッチなひとときを。 それでは!どうぞ!

処理中です...