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第十二話 宝石箱事件顛末 ※婚約破棄の前です。

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 宝石箱事件顛末

『当家の家宝であり、今現在はロゼが管理している【幸運の女神の笑顔】に似た宝石箱が王都で販売されている』

今俺はその報告を聞いた。

旧知の仲のビルマン男爵が見つけて購入して私に見せてくれた。

これはあくまで『似ている宝石箱』に過ぎない。

要所、要所が違うから、同じとは言えない。

だが、どう考えても此処まで似せる事は『現物を見ないと出来ない』のは俺にも解る。

「ビルマン男爵、その宝石箱を私に買い取らせて貰えないか?」

「いえ、これはドレーク伯爵様に現状を知らせる為に購入した物、そのままプレゼントさせて頂きます」

「すまないな」

「いえ、ですが数こそ少ないですが複数、流通しているそうです」

「教えてくれて助かった、この恩は必ず返させて貰うぞ」

「お気になさらずに」

ビルマン男爵を見送り、俺は執務室に戻った。




これは問題だ...今の管理者はロゼだ。

ロゼに聞く前に、使用人から証言を取らなくてはならない。

まずは執事長であるジョルジュに聞くしかない。

「【幸運の女神の笑顔】の宝石箱に酷似した物が出回っている、これがそうだが、何か知らないか?」


『心当たりはある、そのまま伝えるべきだ』


「恐らくはロゼ様とロゼ派の方が原因の可能性が御座います」


「それは、どういう事だ」

我が娘ながら、そこまで馬鹿だとは思わなかった。

国宝級の家宝を家から度々持ち出し、見せびらかした。

それなら、幾らでもデザインや工法を模写出来るでは無いか?

今回の件は『模写』を認めてくれるならまだ良い、認めない場合が最悪の問題になるのだ。

「それは本当なのか?」

「多数のメイドや執事から報告を受けております」


これで確定だ。

「ロゼを呼んできてくれるか?」

「畏まりました」


「お父さま、何の御用でしょうか?」


「お前、家宝の【幸運の女神の笑顔】を持ち出したって本当か?」

「ええっ、私の派閥の者が見たいと言うのでお見せしました」

「それで」

「素晴らしい物だから、絵に描きたいと言うので描かせましたが、それが何か問題にでもなりますか?」


やはり教育を間違えた。

『この位誰でも解る』それが解らないのだ。

これはロゼが悪いのではない、親である俺が悪いのだ。

執務が忙しいからと言って放って置いた俺の罪だ。


「そうか、お前はこれから先、真面になるまで社交界以外の外出は許さん」

「そんな、お父さま何故でしょうか?あんまりです」


「良いかロゼ、家宝は俺ですら滅多に家から持ち出さない、お前は勝手に持ち出して、面倒事を起こした」

「私が何をしたと言うのですか?」

「今、巷に【幸運の女神の笑顔】の模倣品が出回っている」

「そんな、ですが、その品の管理をしはじめたのは最近です、お姉さまのせいでは無いですか?」

馬鹿な、自分の罪をマリアに押し付ける気か。


「まだ、そんな事を言うのか? マリアはあの宝石箱を俺の許可なく家から持ち出した事はない、お前は、他の宝石も含み勝手に持ち出してお茶会で見せびらかしていたそうだな」

「ですが、全員、私の派閥の方です」

「もう解散したそうじゃないか? まぁ、まだ確定はしていない、ただ、家宝を持ち出して勝手に人に見せた、それだけでも非常識だ、その分の罰は受けて貰う」


結局、商会から調べあげていくとロゼのせいだった。

ロゼが絵を描くのを許可した結果、シャルロッテ嬢達がその絵を元に『新作』として宝石箱を制作して、知り合いの商会に作らせて販売した。

そう言う事だった。


これはかなりの大事だったので、元ロゼ派の家に事の経緯を報告した。

そうしたら、悪びれずジャルジュ家から手紙が帰ってきた。


手紙の大まかな内容はこうだ。


この度の商品は確かに【幸運の女神の笑顔】を参考にしているがあくまで参考であって『模倣』や『模写』では無い。

そう書かれていた。


しかも、ご丁寧に、手紙についていた添え状に『間違いない』と元ロゼ派の令嬢6名の家紋と令嬢の名前がサインしてあった。


そして、この宝石箱のデザインはシャルロッテ嬢とマリーネ嬢が参考に考えただけで決して『模倣』や『模写』では無い。

と強く書かれていた。

『特に図柄や宝石の位置はオリジナルで考えた』そう書いてあった。


シレ―ネ嬢 ケイト嬢 マレル嬢からは、個別に手紙が届き、ただ見ていただけで荷担はしてない、止めなかった事を『深くお詫びしたい』そう謝罪文が届いた。


俺は《『模倣』や『模写』では無いなら仕方が無い》その旨を伝える手紙を送り『本当にシャルロッテ嬢とマリーネ嬢が考えた物』なのか再度確認をした。


すると、文章は柔らかいが『言いがかりをつけるのか』それに近い内容の手紙が帰ってきた。


本当に仕方ない、今回の話は我が娘、ロゼが悪い。

その状況で、他の人間が地獄に落ちていくのは見たくはなかったが、家を守る為だと割り切る事にした。


そして、ジョルジュ家の手紙と一緒に類似品のオルゴールを自ら王城に持参した。




◆◆◆


早馬を使い手紙を出し、急いで王都に出掛けた。

休む間もなく、王城に向うと手紙を読んだ王が直ぐに会ってくれた。


「此処に書いてある事が本当である事は、余の方でも確認済みだ」

「そうでございますか? ならば後の事は王にお任せします」

「馬鹿な奴らだ、素直に『模倣』である、と認めれば、ただ叱りつけるだけで済ませられた。なのにこれを『自身のアイデアで作った』と言うなら重罪だ、余は大切な重臣を罰さねばならぬ」

「申し訳ございません」

「確かにロゼ嬢には非は無い、だが貴族の令嬢としては余りに軽率で失格だ、親としてしっかり躾をする様に」

「本当に申し訳ございません、責任を持って躾けます」

「ならば良い、ドレーク伯もう下がって良いぞ」

「はっ」


貴族としての恥『王からお叱りを受ける』はめになった。

だが、ジョルジュ伯たちにこれから起きる事を考えたら、まだ良い。


確かに悪いのはシャルロッテ嬢やマリーネ嬢だ。

だがそれは『ロゼがしっかりしていれば防げた』

これから起こる事を考えたら同じ貴族として、心が痛いのだ。


◆◆◆

俺、ことジョルジュ伯爵に王宮から呼び出しが来た。

大体の話は解っている。

例の宝石箱の話だ。

確かにあれは【幸運の女神の笑顔】から作った物だ。

あれだけデザインを変えたのだ、問題はないオリジナルの筈だ。

だが【模倣】したと言われれば、そうともとれる。

しかし【模倣】を認めてしまえば、その元になったのだからとドレーク家に支払いが必要になる。

この宝石箱の収益は思ったより高かった。

そこにドレーク家を加えるのは馬鹿のすることだ。


だから、シャルロッテとマリーネが考えた物だと突っぱねた。


そのせいで、恐らくドレーク家が王家に何か吹き込んだに違いない。

どう見ても、元のデザインとは全くの別物、問題は無い筈だ。

だが、今回全ての関係者が呼ばれた事に怖さを感じるが、問題はないだろう。


そう思いながら俺は娘と共に王宮に向かった。



王宮につくと既に今回の関係者のうちフェルバン家とコーデニア家とアルトア家が先に王と話し合いをしていた。

他の者は応接室でくつろぎ茶をたしなんでいるそうだ。

私は、娘を伴い応接室にて合流して談話に加わることにした。


◆◆◆

私事、シレ―ネは宝石箱の件について王より、父共々、友人たちと一緒に、色々な事を聞かれた。

王と話す事なんて生れてはじめてだ。

正直言えば、怖くて仕方ない。

「それでは、今回の宝石箱の件は三人とも関わり合いが無いと申すか?」

やはり、正しかった。

貴公子とも呼ばれるフリードには全て見抜かれたようだ。

さっさと先に抜け出して良かった。

「はい、確かにマリーネや他の仲間が、宝石箱の画を描かせているのは見ました、何となくですが不味い気がしたのでさっさと派閥から抜けさせて頂きました」

「私もシレーネ様とお話した際に不審に思い、派閥から抜けさせて頂きました」

「私は、あの宝石箱はマリア様の物と噂で聞いたので、不思議に思い同じく抜け出させて頂きました」


フリードがお茶会に来る等、普通はあり得ない。

やはり、あの時の直感は正しかった。

フリードはお茶会で『ロゼについて詳しく聴いていた』恐らく、既にシャルロッテ様の計画を知っていたのかも知れない。

流石は貴公子、あの時の直感は正しかった。

あのまま、関わっていたら人生は終わったかもしれない。

しかし、ケイトは凄いわね『しっかりと私たちの様に抜け出していた』なんて侮れないわ。


「三家を代表して私が話させて頂きます、娘たちは、あの派閥に確信はないですが『不審』を抱いたそうです、ですがジャルジュ家は伯爵家、シャルロッテ嬢にその原因の追究は出来ない為、早々と抜けた、そういうお話です」

「確かに男爵家と騎士爵家の令嬢では諫めるなど出来ぬ相談だ、その責は問えない...解った、今回の事は不問にする、但し三人には今後このような事が起きたら、必ず親へ相談するように心がけよ、良いな」


「「「はい、必ずやそうさせて頂きます」」」


「ならば下がって良いぞ...但し、此処を出たら城門を出るまで何も喋らずに帰る様に厳命する」


「「「「「「はっ、畏まりました」」」」」」


フリードの能力とマリアを過大評価した結果、勘違いにより運よく三名三家は助かることにる。


◆◆◆

私、シャルロッテはいま父と一緒に王自ら取り調べを受けている。

実際には謁見なのだけど、そうとは思えない位、タダならぬ雰囲気です。


「【幸運の女神の笑顔】についてドレーク伯爵から話が出ているが何かあるか?」

王は優しく笑顔で聞いてきた。


「確かに、宝石箱を我が家、ジョルジュ家が制作販売をしておりますが、【幸運の女神の笑顔】を模倣などしておりません」

「それは本当か? 余にはこの宝石箱は『凄く似ているように見える』のだが」

「全くの別物でございます、確かにわが娘シャルロッテは【幸運の女神の笑顔】は拝見しましたが、その宝石箱は別物でございます、デザインや作りについてはわが娘とその友人達で考えた物でオリジナルの物にございます、まぁ過去にに見た物に似てしまうのは致し方無いと思いますが」


王は悲しそうな顔に少しなったが再び笑顔で話す。


「本当にここに居る令嬢たちで考え作った、そういう事で間違いはないのだな?」

「はい、私とマリーネが主にデザインを考えましたわ...そしてそれについて全員の意見を聞き販売まで漕ぎつけた物でございます」

「そうですわ、間違いございません」


「そうか、皆は素晴らしい技術と才があるのだな、実に素晴らしい、他の令嬢たちもそれに間違いは無いのだな?」


「「「「はい、間違いはございません」」」」



「このジョルジュ伯爵の話しとシャルロッテ達の話は『家』として間違いないと言う事で良いのだな」

「「「「「「間違いはございません」」」」」」


王の顔から笑みが消え、目からは涙がこぼれていた。


「王よ何故、泣かれるのですか?」

ジャルジュ伯爵が口を開くと、王は泣きながらも懸命に答えた。


「これが【模倣】や【模写】そう認めて貰えば良かったのだ....それなら余の厳重注意で済ませられたのだ、それこそ、近衛騎士にお前たちの頬を殴らせ『暫く王宮への出入りは許さぬ』それで済んだ...だがこれを自分たちで考えて作ったというのなら、そんな軽い罪で済ませられぬ」

「王よ我々はどんな罪を犯したというのでしょうか?」


「王家の物を盗んだ罪だ」

「そのような事は致しておりません」


「【幸運の女神の笑顔】の由来については皆の者は知っておるのだな」


「有名な話ですので」

ジョルジュ伯爵が代表して答えた。

「そうか、ならば、お前たちが王家から盗んだ物を伝えよう『わが母のマリアーヌへの感謝の気持ちだ』それをお前たちは盗んだのだ、模倣なら許せた、だが自分たちで考えたというのなら立派な窃盗だ、法律に則り『王家の物を盗んだ罪により爵位、領地、役職のはく奪になる』」

「なんで、そうなるのでございます! 間違いなく自分たちで考えた宝石箱を作っただけでございます、それだけでございます」

「幾ら王とて横暴すぎますぞ」

「王様、幾らなんでもあんまりです、ただ頑張って宝石箱を作っただけで、何故全てを失わないといけないのでしょうか?」


この場には王と彼等だけが居るのではない、宰相や大臣もいる。

彼らは怒りを感じる者と『なぜ』と不思議そうな顔をする者と両方に分かれた。


「もう、お前たちの顔を見る事も無い...特別に余から教えてやろう【幸運の女神の笑顔】には余の母のマリアーヌへの思いが込められているのだ」

王は語り始める。

自分の母である先代王妃は自分と後の公爵夫人を守るために『自分の片腕を無くしたマリアーヌにただ事じゃない位に感謝していた』

嫁入り前の貴族の娘が自分達の為に『片腕を無くしてまで戦ったのだ』しかもそれが親友...どうして良いか解らない。

時の王は自分の娘を命懸けで守った恩賞に『この国で始まって以来最初で最後の【騎士の地位】』を送った。

これは爵位の騎士爵ではなく爵位とは別の物であり...この地位を持つ者は「王宮内で剣を携え歩くこと」「王族の前で跪く事無く会話をすること」が許されるという物だ。

王族の一番信頼できる者という意味の爵位とは全く別物の地位だ。

これは、北にあった他国の王族と騎士の話から考え与えられた物である。

騎士爵とは全く違う地位であり、マリアーヌ以外誰も許された者は居ない。


だが、これは時の王が送った物であり、先代王妃が送った物ではない。

先代王妃は自分を守ってくれた親友の為に【幸運の女神の笑顔】に一つ細工をした。

それは『オルゴールの音色』を変えた事。

マリアーヌへの感謝の気持ちを歌にして、曲に変えオルゴールの音にした。

つまり、このオルゴールの音色こそが『唯一無二』現王の母である先代王妃がマリアーヌに送った『この世に一つしか無い物』だった。


「マリアーヌ殿が居たから、母は婿をとり今の余が居る、そのマリアーヌ殿への母の気持ちを...盗んだのだ【模倣】ではなく、自分たちが作ったと言った以上は過失ではなく『盗み』である、本来は王家の物に手を付けたら死刑であるが、過去の功績を考え特別に市民落ちで許そう」


※男子が生まれなかったから第一王女が婿をとり、そして婿が王位についたそうお考え下さい。


「そんな...そんな...」


だが、この話を聞いて周りの顔色は変わった。

元から侮蔑の目を向けていた宰相や大臣以外も皆が蔑む目で見ていた。

最早、彼らの味方はいない。


「本来なら、市民としてであればこの国で暮らせる、『貴族籍を無くすことで罪が許される、貴族の特権である』だがこの状態ではそれも辛かろう、『国外追放とし、その代わり特別に金貨100枚迄と馬車を持ち出す事を許可しよう....今までこの国に余に仕えてくれた事感謝する、だが法は曲げられぬ、2週間のうちに立ち去れ」


それを伝えると王は背を向け目も合わせず退席した。


◆◆◆


ロゼの元気が無い。

確かにロゼには常識が無いと思う。

『ロゼ派が無くなり』その令嬢達が国外に追放となった。

ドレーク家は領地と王都での仕事が殆どだから、国外に行く事は殆ど無い。

だから、もう会う事は無いだろう。


私はロゼが『好きではないのだと思う』

『なんでも人の物を欲しがり奪っていく人間』

前世の私が最も嫌う人間の姿だ。

前世の私の親友に妹を持つ人間が居た。

記憶は朧気だが...凄く悲惨だった。

なんでも妹に『頂戴』と言ってとられ、子供の時には同じお小遣いを貰っていたのに、妹は駄菓子屋さんで自分のお菓子を食べ終わると『お姉ちゃん頂戴』と姉のお菓子を取り上げていた。

それが成長しても続き『お姉ちゃん頂戴』と文具やおもちゃまで取り上げられていた。

私が『両親に相談したら』とアドバイスしたら『「どうせ、お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」それで終わりよ』とあきらめ顔で目を伏せていた。


その『お姉ちゃん頂戴』はエスカレートしていき、彼女が頑張って良い大学に入っても『お姉ちゃんズルい』といっていた。

私から言わせたら...努力しないお前が悪い、チャンスは平等にあるんだから、そう言いたい。


そして決定打だったのは『姉の婚約者を妹が寝取った件』だ。

姉が上場企業の若手のホープと付き合い恋人となり、もうすぐ結婚。

そのタイミングで妹の妊娠が発覚した。

普通に考えたら、家族は妹を責める筈だ。

だが、家族は妹を責めなかった。

最初こそ、親は少しは同情していたが、途中からは『もう許してあげなさい』『過ぎたことは仕方ないだろう』と言い出した。

そして、最終的には元婚約者はそのまま妹と結婚して入り婿となった。

そんな環境で生活できる訳もなく...親友は家を出た。


「それで良かったの?」そう私が聞いた時に...

「あはははっ、娘は孫には勝てませんよ...あんなサルみたいな顔なのに両親の心を鷲掴みするんだからさぁ」


孫か、『孫可愛さ』それか...

だけど、不倫をして婚約破棄なのだから、頭にきたなら訴えて慰謝料でも取れば良いのに。

「そうですか? いっそう訴えちゃったらどうですか?」

「そうね...だけど姉妹だから、もう良いわ、まぁもう家族の縁は馬鹿らしいから切るけど、それでおしまい、貴方は姉妹が居ないから解らないと思うけどさぁ...姉妹ってだけで本当には憎めない物なのよ『どーでも良い』それ以下ににはならないのよ」


私だったら、もし同じ事をされたら『顔が解らなくなる位ぶん殴る気がする』

今の私には...少しだけど、名前も思い出せない前世の親友の気持ちが解る。



ロゼは馬鹿みたいにお父さまに『仲間の見送り』をしたい。

そう申し入れをした。

本当に馬鹿な子だ...自分を利用していただけの人間が追放されるからって『見送りにいきたい』だなんて。

大体『国外追放された人間を貴族が見送る』なんて醜聞しかない。

勿論、お父さまは断った。

そうしたら部屋に籠って泣いている。

本当に馬鹿だ...大体、相手にしたって憎みこそすれ友情なんて感じていないだろう。

下手したら殺されかねない。

ロゼのせいで『貴族籍』だけでなくほぼ全てを失ってしまったのだから、自業自得とはいえ恨んでいる筈だ。


ロゼは『悪人ではなく、ただの我儘な子供』なのだろう。


姉妹という名の呪いは本当に怖い。

此処までされたのに頭の中に『可哀想』という文字が浮かぶ。

今のロゼは軟禁状態で、お義母さまや使用人たちから監視され指導を受けながら生活している。

やった事は、完全に自業自得だ。

だが、私の頭の片隅に『可哀想』そういう文字が浮かぶ。

『顔も見たくない、話もしたく無いロゼ...それなのに可哀想』


可笑しな話だ。

本当に仕方ないな...一回私の方から話してみようかな...

今になり名前も思い出せない親友の気持ちが良く解った。





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