妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん

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第七話 貴公子と呼ばれた男の絶叫がこだまする。

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俺は今、ドレーク家の客室で軟禁状態にある。

原因は解っている。

俺がマリアとの婚約を破棄してロゼと婚約したからだ。

ロゼは大丈夫なのだろうか?

酷い事されていないだろうか?

それだけが気になる。

別々の部屋に引き裂かれるようにロゼは連れていかれた。

俺は特に酷い目にはあっていない、ただ、それは肉体的にであって、精神的にはボロボロだ。

「この部屋から出ないから、席は外して貰えないだろうか?」


「それは出来ません、今の貴方はお客では無いのですからな」

客でない? それはどういう意味だ。

「俺がマリアからロゼに婚約相手を切り替えたからか? それでも俺には当主になる算段がある」


「それは、それは...もしフリード様がドレーク家の当主になられるのでしたら、このジョルジョ如何様にでもお詫びしましょうぞ、なんなら命を差し出しても構いませぬ、ですが、今の貴方様は客ですらありませんので、この部屋で見張らない訳にはいきませんな」

部屋の外に誰かがたち、見張るならまだ解る。

だが、部屋の中にまで人がいるのでは、まるで犯罪者の扱いではないか。

「そうか? お前はロゼではなくマリアの方につくのだな? ならば俺が当主になったらクビにしてやる」

「別に構いません、勘違いされては困りますから言わせて頂ければ、私はドレーク家に仕えております、マリア様やロゼに仕える訳ではございません」


なんだ此奴は...他の使用人達も皆...何時もと違う目で俺を見ている。

イラつく...


「そうか、まぁ良い」

俺はそれしか言えなくなった。


暫くすると、父上がこちらに入ってきた。

他の人間は居ない。

「お前みたいな奴は息子とは思いたくない、はっきり言えば顔も見たくない」

そこ迄いわれた後にいきなり殴られた。


だが、俺ことフリードは間違った事などはしていない。

自分でしっかりと調べて考えた上でした事だ。

きっと、あの女狐の様なマリアに騙されているんだ。

どうやって、それを証明すれば良いんだろうか?


「父上いきなり殴るとは...せめて理由位は聞くべきでは無いですか?」


「フリード、だったら聞こうではないか? 何の相談も無く、ここ迄愚かしい行動をとった訳をな!」

「父上...」

俺は見聞きした事、どういう思いで行動したのか、その全てを話した。


「そうか...実に愚かしく馬鹿な奴だ、お前は貴公子などと呼ばれて浮かれておったのだな...これが息子かと思うと頭が痛いわ」

どうしたと言うのだ...


「どういう事でしょうか?」

「もう、よい、最初に言っておく! マリア嬢との婚約破棄は確定した、そしてロゼとの婚約は成立だ良かったな息子よ」

何故此処まで不機嫌なんだ...しかも仮にも他の家の貴族の娘に対して【嬢】をつけないのは可笑しい。


「そうですか、ありがとうございます父上」

「ああっ、所でお前もロゼも貴族で無くなり、今後どうやって生きていくのだ? まぁ、もうどうなろうと知らぬが一応は聞いてやる」

貴族で無くなる? 俺もロゼも?

「その事で父上にお話しが御座います、長い間マリアがロゼに嫌がらせをしていました、私はその様な女と結婚はしたくないのです、だからロゼと」

「だから」

だからってなんだ。

「だからって、父上、ロゼがが酷い目にあっていたから俺が助けたんだ」

父上、その蔑む目はなんですか...そんな目をした父上を初めて見ましたよ。

「良かったじゃないか? 助けられて、よくやったおめでとう...話が全部終わったら、さぁ二人でハッピーエンドだ、何処にでも行くが良い」


「父上...父上は幼い頃から【正しい事を成せ】そう私に言って来たでは無いですか?」

「ならば、言わせて貰う...まず、ドレーク伯爵家の爵位はマリア嬢に紐づけられている、如何なる理由があろうとそれは揺るがない」


「ですが、マリアは...」

「例え、マリア嬢が人格破綻者であろうが、マリア嬢と結婚した者がドレーク伯爵家の正当後継者だ、お前は自分からその資格を捨てた」

「ですが、それではロゼが救えなかった」

「そうだな...だが、俺だったらドレーク伯爵の後を継いでから、ロゼの様子を見て、幸せになれる嫁ぎ先を探す、これが貴族らしい正しい道だ、お前が選んだ道は、貴族の責務を果たさない、ロゼと一緒に幸せになれない、誰1人幸せになれない、そんな道だ」

「それでも俺はロゼの傍に居て救ってやりたかったんだ」

《馬鹿な息子だ》


「そうか、もうお前は後戻りは出来ない、どっちみち、マリア嬢との婚約破棄、ロゼとの婚姻が決まった、貴族としての人生は終わった、だが、それだけでは無い...多分これから知る事実がお前にとって一番衝撃を受ける筈だ...ついてこい」


「一体どこに行くと言うのですか?」

「まずは、ついて参れ」

何処に行くと言うんだ...此処は...ロゼの部屋。


「フリード様、ご無事で何よりでした、ロゼはロゼは...」

「ロゼ、大丈夫か? 何か酷い事はされていないか」

「何時もの事です、もう慣れました」


《良いか、この部屋の様子を見ておけ》


「父上?」


「ロゼ、お前と息子の婚約は成立した」

「本当ですか? 嬉しい、ありがとう御座います!」

「礼などは要らぬ、後で両家で話し合いの結果を伝える、しばし待つが良い」

「はい」


ロゼが無事でよかった。

本当に良かった。




「それで父上、今度は何処に行くのですか?」

「今は他の部屋に行って貰っているが、本来の婚約者だったマリア嬢の部屋だ」

「マリアの部屋ですか?」

「そうだ...」


何故だ、さっきよりも父上の顔が怒っている様に思える。


「此処がそうだ..許可は貰っている、クローゼット以外であれば開けて良いと許可も貰った」

「これがマリアの部屋...ですか」

「そうだ」


嘘だろう、この部屋にはベッドと机以外、殆ど何も無いじゃ無いか?

使用人の部屋ですら、もう少し何かありそうな物だ。


「父上、これは私を騙そうとしているのですか? これが貴族の娘の部屋の訳が無い」

「マリア殿は質素を旨にして生きている、金品に執着は無く望むがままに欲しがった物はロゼにあげてしまったそうだ」

「そんな」

「見ての通りの部屋だが...どう考えてもお前の言い分とは違うな」

「これは...これは何かの間違いです」

「間違いではない」


「そんな..」



「ここからは私が説明させて頂きます」

「ロザリー様...これはどういう事でしょうか?」

「身内の、いえ娘の恥を晒すようで余り言いたくは無いですが、ロゼは何でも欲しがる卑しい子です」

「そんな、ですがマリアには新しい物を買い与え、ロゼが持つ物は古い物ばかりでは無いですか...」

「ロゼがマリアの物を何でも取り上げるから、マリアの物が無くなり買い与えていただけです...貴方も見たのでは無いですか? 豪華なロゼの部屋を、貴方が見た物が全てです」

「ですが、使用人からしてロゼに厳しくしている様に見えますが、これはどう説明しますか」

そうだ、全てが可笑しいのだ。

「マリアは貴族としての礼儀作法は殆ど完成しております、それに比べてロゼはまだ基本すら、うろ覚えです、教育を任された者が厳しくなるのは当たり前かと思いますが」

教育...あれが、そうなのか。

「だが、やり過ぎではないでしょうか」


「ロゼは人の言う事を聞きません、我儘で甘えて辛抱しません、その結果未だに、貴族として必要な教養が無い状態です、厳しくても仕方ないとは思いませんか」


「そんな...ならば俺は」

「自分の娘を悪く言いたくないですが...恐らくはマリアの婚約者だから、貴方が欲しくなったのでしょう、悪い癖です」

「それでは俺は...なんの罪もないマリアと婚約破棄をし、騙されてロゼを婚約者にしてしまった...そういう事ですか?」


「馬鹿な息子だ、伯爵の地位をお前にもたらし、質素を旨としている婚約者を捨て、我儘な妹を選ぶとはとんだ【貴公子】だな」


「お父上...私はマリアに、マリアになんて事をしてしまったのでしょうかーーっ、せめて謝りたい、いや謝らせて欲しい」

《本当に馬鹿な息子だ】

「お前は何を言っているんだ? マリア嬢はもうお前の婚約者では無い! お前の婚約者はロゼだ、貴族籍を持たぬな、そしてお前も貴族籍を持たない...これから先は市民として暮らすしかないだろう、我が家とドレーク伯爵家からは家を出た者として扱う事になるだろう」


「そんな、俺は...貴族で無くなるのか...ロゼも」

「そういう事だ」

「やりなおし...そうだまだやり直しが」

「出来る訳ないだろうが、王族が居る前で、婚約破棄宣言したんだ、もみ消しは効かないな」

「そんな」

「まぁ、そこ迄して選んだ相手なんだ、良かったじゃないか? 結納代わりに手切れ金を渡してやる、これが父として最後の情けだと思うんだな」


「そんな、俺は俺は俺はーーーーーーーっ」

何の罪もないマリアを傷つけ加害者のロゼの味方をしていたのか…


「あははははっ俺はーーーっ俺はーーー」

貴公子と呼ばれた男の悲しみの声がこだまする。


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