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第四話 両家の話し合い 加筆、感情追加

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私の家、ドレーク伯爵家に場所を移して話し合いが行われるみたいだわ。

移動する時に、私は1人馬車に乗った。

ロゼとフリードは2人一緒の馬車に乗るようだが、横には使用人が囲む様に乗り込み、馬車に乗り込む二人の顔は、遠目にも青ざめている様に見えた。

家に着くなり、私は部屋から出ない様に言われ、2人は使用人に囲まれながら、連れていかれた。

多分、これから大人達本当の貴族の話し合いが行われるんだろうと思う。

これには私は勿論、ロゼもフリードも参加は出来ない。

前の人生に直すと『不始末をした結果、社長や取引先の社長が話し合い、懲罰が決まるのを待つ状態』に近いのかも知れないわ。

まぁ、私は完全に被害者だからただ待つだけで良いわね。

フリードやロゼはきっと気が気でないかも知れないけどね。


俺事、ドレーク伯爵は娘ロゼがやった不始末についてこれから、話し合いをしなくてはいけない。

事が事だけに、今迄のように子供がした事だからでは済ませられない。

それはドリアーク伯爵も同じで、あの冷静な男が頭を抱えている。

皆が沈黙のなか最初に口火を切ったのは宰相のユーラシアンだった。

「それで、今回の事はどの様にするのですかな? ドリアーク伯爵にドレーク伯爵...早々に結論を出して貰えないか?」

その目は決して笑ってない。

貴族間の婚約破棄に巻き込まれ、いきなり報告を受け、そのままとる物も取らず駆けつけたんだから当たり前の事だ。

この国アドマン王国では貴族の婚姻には王家の承認が居る。

特に次期当主が変わる場合は厳しい決まりがある。

例えば、侯爵家と公爵家辺りで婚姻により親戚になったら下手すれば勢力関係が変わってしまう。

実際に過去に公爵家同士が婚姻をし力をつけ旧王家を滅ぼし、今のアドマン王国になった。

その為子爵以上の家の者の婚姻は基本的に【王の許可が必要】とされる。

平和になった今現在は、婚姻の為の王印は基本、余程の事で無ければ簡単に確認して押される。

王家が貴族の婚姻に反対する事は実質無いに等しい。

だが、今の王の祖先が旧王家を滅ぼし王位についた。

その時代の決まりは生きており、貴族間の婚約には王が認めた王印が必要となる。

今回の事で問題となるのは...既に婚約は王に伺いを立てており、王が許可をして王印を押された後に起きたという事だ。

つまり【王が正式に認めた婚約】をまだ爵位を持たない貴族の子供が王にも親にもお伺いを立てずに、自分勝手に反故にした...そういう事だ。

貴族だからこそ、こんな事は許されない。

だからこそ事の重大さに気がついた宰相のユーラシアンは多忙にも拘らずこうして、急いで出向いてきている。

流石のドリアーク伯爵も動揺せざるおえない、だがそこは貴族頭を悩めさながらもしっかりと答える。

「解りました、ユーラシアン様には本当に我が愚息の事で迷惑をお掛けいたします、これからドレーク家と話し合いの元に必ず、結論を出しますので明日までお時間を頂けませんか?」

それを聞いたユーラシアンは少し緩やかな顔になった物の、相変わらず目は冷たい。

「良いでしょう! もうこんな時間ですから私もこちらに泊まらせて頂きます、明日の昼まで待ちましょう、ただどんな結論であっても王に持ち帰らなければなりません、必ず何だかの結論は出すように...あとスズラの森の開発にも罅が入らない様にお願いしますね」

これから、こんな大事について明日までに結論を出さなければならない。

スズラの森は二家で共同で行う大事業だ、これに問題が飛び火したら大変な事になる

子供達がした不始末は自分達で決着をつけないといけない。

俺には肯定以外の返事は許されない。

「解りました、とりあえず、客室をご用意しましたのでお休みください」

「ええっ くれぐれも宜しくお願い致します」


既にフリードとロゼは部屋で軟禁状態にした。

本当に困った事をしてくれたもんだ、我が娘もフリードも、何故俺にもドリアーク伯爵にも相談をしなかった。

マリアも部屋から出ないように伝えてある。

傷ついたマリアの手前、2人にはそれなりの処罰を与えないとならない。


話の中心は、ドリアーク伯爵に俺 基本この二人で話し合いが行われるが、今回仲人役を打診していたオルド―伯爵も席についていた。


「この度はうちの愚息が申し訳なかった」

直ぐにドリアーク伯爵は俺に対して、頭をこれでもかと深く下げた。

「頭をあげられよ...ドリアーク殿、それを言うならうちの愚娘も悪い...まずはどちらが悪いかではなく今後どうするかが大切だ」

「そうだな」

「まずはうちのマリアとそちらのフリード殿の婚約だがこれはもう破棄するしかない、宜しいかな?」

「ああっ、それで構わない...納めた結納品や金品はそのままマリア嬢への慰謝料として受け取って貰いたい」

「良いのか、フリード殿が、このドレークを引き継ぐ予定だったからなかなりの大金を結納金として頂いている状態なのだぞ」

伯爵でも本当に痛い、そこ迄の金額の結納を貰っていた。
ドリアーク伯爵らしい。

「愚息が馬鹿をしたのだ、それは致し方ない」

「だが、マリアと別れた時点でフリード殿は、もうこの家の当主にはなれんのだぞ! それも解っているのか?」

この男の事だしっかりと解って言っているのだろうな。

「解っておる、愚息がした事はとんでもない事だ、その位の事をしなければ釣り合いは取れない、無論それだけでなく今後のマリア嬢の婚姻についてはドリアークの名に懸けて愚息以上の相手を必ず探す事を約束しよう」

我が、ドレーク伯爵家には男の跡取りが居ない。

故に長女であるマリアと結婚した男性が跡取りとなる。

つまり、爵位と領地はマリアに紐づいている。

フリードはドリアーク家の三男だったが、このままマリアと結婚すれば我がドレークの跡取り、つまりは将来伯爵の地位が約束されていたのだ。

つまり、家としては同格だが、爵位が貰えないフリードが【伯爵】になれるのだから、マリアとの婚姻は玉の輿とも言えた。

それは二家の絆が血によって深まる、そういう意味も今回の婚姻には含まれている。

今は平和だから許されるが、戦乱中ならまず王は認めない、そこ迄の意味があった。


「解った、マリアについて謝罪はそれで良い、寧ろすまない、後程正式にフリード殿が謝罪と言う事で、これで終わりにしよう」

「そう言って貰えると助かる、それでスズラの森の干拓の話はどうする?」

「謝罪も受けた、今迄通りで良いだろう」

「そう言って貰えて助かった、スズラ森の開発は両家、ひいては国の大きな事業だからな」

「その通りだ、本来は両家の親睦を深め、この大きな事業をやり遂げると言う意味での婚約の話でもあったが、婚約破棄だからと言って仲違いする訳にはいかない」


「そういう意味で、国王ハイド三世様も今回の婚約を楽しみにしていたのだ、本当にえらい事をしてくれたもんだ...それで愚息とロゼ嬢の婚約だがどうする?」

「本当に頭が痛いわ...貴族の何たるかも解らん、今になっては娘の教育を疎かにした自分が恨めしい」

俺が甘やかしすぎたから、そのつけがこんな形で返ってきた。

マリアが手が掛からず、分別をわきまえているからと、つい教育を疎かにした結果がこれか?

もう少し俺やロザリーが気を付けていれば…今更だ。

「そんな事を言っている場合ではないぞ、まずは貴族籍をどうするかだな」

本当にそうだ。

「本当に頭が痛いわ」

フリード殿は三男なので、貴族籍を持っていない人間と結婚したら貴族で無くなる。

それはうちのロゼも同じで相手の男性が貴族籍を持ってなければ、貴族で無くなる。

フリードの家は長男が継ぐからフリードに貴族籍が行く事は無い

そしてロゼも家はマリアが継いでその夫が当主になるから貴族籍は与えられない。

フリードもロゼも婚姻相手が【爵位持ち】で無ければ貴族で無くなるのだ。


「こうなった以上は彼らに温情を掛けるかどうか疑問だが、俺としては愚息とは言えフリードは可愛い息子だ、だが貴族で居られる様にするには爵位を購入するしか方法はない...あれだけの貴族の前で婚約を宣言した以上は...最早、他の者との縁談は無理だろう」

「アーサー様がその場にいたのだから、今更【婚約は間違いでした】とは言えないだろう、ロゼにも縁談の話が来ていたのだが、もう無理だ」

「申し訳ない」

「いや、此方はお互い様だ、姉の婚約者を受け入れた、もしくは誘惑したロゼも悪い...問題はこれから、どうするかだ!」

「貴族籍を買ってやり貴族で居させるか、平民に落とすか…」

「ああっだが、この国は平和で豊かだ、今の世の中、貴族籍を売る様な者はまず居ない、恐らく買う事が出来ても精々が【騎士爵】、男爵以上などまず売りに出ない」

「そうであったな、更に言うなら今回みたいな馬鹿な事をした人間と付き合いたい貴族がいるかだが、居ないだろう」

「その通りだ」

「そこから考えたらロゼ嬢も愚息も貴族で居させるのは難しい...どうだろうか? 愚息のフリードとロゼ嬢にはドリアーク家から結納代わりに手切れ金を出そうと思うのだが、それで終わるしかないのではいか」

「ならば、ドレークからも同じ金額をフリード殿と娘のロゼに出し、それで終わりにするか」


「貴族で無くなるが、当人が選んだ道だ仕方あるまい」

「そうだな」


結局、両家の出した結論は


1.婚約は破棄になったが両家の仲は良好であり問題無い

2.スズラの森の開発はこれまで通り、両家で責任を持ってやる。

3.王家に承認を貰った婚約を破棄した責任としてスズラ森の開発で手に入った利益の20%を王家に向こう10年差し出す

4.今回問題を犯した二人には貴族の資格は無いと判断し貴族籍等は与えず、市民に落とす

5.仲人を打診していたオルド―伯爵には顔を潰した償いとして金貨1000枚を支払う

それで話し合いは終わった。


「こんな所か?これで王家が許してくれると良いのだが」

「そうだな、オルドー伯爵、貴殿もこれでどうにか許して貰えぬか、この通りだ」

「本当に迷惑を掛けたすまない」


俺とドリアーク伯爵はオルド―伯爵に深く頭を下げた。


今迄、ただ聴いていたオルド―伯爵が初めて口を開いた。

「私の方は、金貨1000枚は要りませんよ、私に使う位なら傷ついたマリア嬢に使ってあげて下さい、多分この条件なら王家も許して下さると思います、あとはユーラシアン様にもお詫びの品を用意した方が良いと思いますよ、宰相の仕事も忙しいのに駆けつけてくれたのですから」

これでオルド―伯爵に大きな借りを作ってしまった。

貴族が借りを作る、こんなに怖い事は無い。

これで俺もドリアーク伯爵もオルド―伯爵に暫くは頭が上がらない。


「お気遣い頂きすまない、マリアの父としてお礼を言わせて貰う、ありがとう」

「お気になさらずに」

「愚息のせいで本当に申し訳ない」

「お二人とも、本当に気になさらないで結構ですから」


次の日、話し合いで決まった事を、宰相であるユーラシアンに伝えた。

勿論、謝礼金もこっそりと裏で渡してある。


「この内容であれば、王も罰などとはおっしゃらないと思います...ただ事が事ですから【登城】の可能性もある、そう考えていてください」


「「解りました」」


宰相ユーラシアンは、ドレークの馬車に揺られながら帰っていった。

俺はは此処にきてようやく胸をなでおろした。
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