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第三十三話 過去 マリアは残酷な悪女...

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「全く、あの馬鹿は本当に使えないわね」

「シャルロッテ様、余りそういう事は言わない方が...」

「そうね、まぁ当人の前では言わないわ」

「ですが、ロゼ様は伯爵家の方とはいえ次女ですよ? あの位持っているだけでも凄いと思いますが」

シャルロッテは少しイラつきながらシレ―ネの方をむきながら答えた。

「シレ―ネ、解っているわ...だからこそ、見るだけなのです、ドレーク伯爵は娘には甘い所がありますから、ロゼが言えば宝物であっても『貸す』と思います...その証拠に本来はマリア様の持ち物なのに、『幸運の女神の笑顔』をロゼが持っている位ですから」


恐らく、マリア様も妹には優しいのでしょう。

そうで無ければ、あの宝石箱をロゼが持っている訳が無い。

「シャルロッテ様、お聞きしても良いでしょうか?」

「どうしたのかしら? 改まって」


「あの、なんでマリア様でなくロゼさんなのでしょうか?」

「そうね、ロゼを除き全員が居ますから、伝えておいた方が良いわね」


【ロゼ派】


ロゼ=ドレーク (伯爵家)

シャルロッテ=ジャルジュ(伯爵家)

マリーネ=グラデウス(男爵家)父 王都警備隊 隊長 ※親友 シレ―ネ

シレ―ネ=フェルバン(男爵家)

ソフィ=マルゾーネ(準男爵家)

ケイト=アルトア(騎士爵家)

ティア=シャイン(騎士爵家)

シャルロン=ロワイエ(騎士爵家)

マレル=コーデニア(騎士爵家)

マーガレット=マンスリー(騎士爵家)

※ この世界の設定では『騎士爵=騎士』ではなく、一番下の正式な貴族が騎士爵です。
  学者や、商家で実績をあげて騎士爵を貰い...剣も持った事も無い騎士爵も少数います。
  ロゼ派の騎士爵の方の多くは...『殆どがこちら』です。


※ 長女、次女などについてはまだ考え中なので此処では書きません。



「私が何故、マリア様に手を出さないか? それは...マリア様は凄く怖い方だからよ...」


「シャルロッテ様が...怖いまた可笑しな事を言いますね」

《この方は、自分がのし上がる為なら何でもするし、王家すら恐れて無い様な人の筈ですが》


「マリア様が怖い? 何かの勘違いでは無いですか? お優しくて物静かな方ですよ」

「そうですよ...多分ビンタでもしたら、そのまま泣いてしまう様な方にしか思えませんよ?」


はぁ、あの怖さは直接、感じた人間にしか解らないわ。

まるで爬虫類みたいな感情の無い顔。

人を殺しても笑みを浮かべそうな破綻した性格。

そして、感情も無く人を殺せそうな、ガラス球みたいな目。

あれは、悪女...まるで黒薔薇を彷彿させる様な、悪魔の様な女。

あれは敵に回してはならない...恐ろしい女。

あの女が蛇の生まれ変わりだと言っても信じるわ。


「そうね、それじゃ私の仲間が私を裏切った場合、貴方達なら私はどうすると思う?」


「そうですね、私は絶対に裏切りませんが、家ごと潰されるか、場合によっては殺されるでしょうか?」

そこ迄しませんよ...そこ迄はね。

だが、マリア様は...それではすまない。

「正解...ではマリア様ならどうすると思う?」

「多分、笑って許してくれるのでは?」

「些細な事なら多分そう...だけど、本当に怒らせたら、恐らくは壮絶な拷問を与えて『殺して下さい』そう哀願する位死よりも残酷な事をすると思うわ」

「あはははっ、そんな冗談は止めて下さい! マリア様ですよ」


本当の怖さを知らないから、そう思うのね。


「そんな、生半可な人間をあの、イライザ様が派閥に望むと思う?」


「それは、なにか理由があるのでしょうか?」


「良いわ、話してあげる」



【さらに過去の話】


あの子は一体なんなのかしら?

大人ぶっていて、斜に構えているような気がする。

話掛ければ、話はしてくれるけど、それだけ。

観察してみていれば、良く解る。

人の輪に加わりたくない。

そう見えてくる。

自分が、伯爵家、それも私の家と違い古くからある家柄。

だから...『全てを見下している』多分、そう。

だが、それは私だから見破れた事。

他の人間には『地味で静かで気が弱い』完全にそう思わせている。

凄いわね...多分、それには誰も気がついていない。

イライザ様ですら...


だけど、私には解る。

あの子の凄さが。

公爵家の令嬢相手に普通に話、王族相手にも物怖じしないで話す。

そんな事が出来る人間が『地味で静かで気が弱い』わけ無いわ。

あれは、そうね、擬態だわ。

狼が犬に混じって生活するには...そうするしか無いわね。

さぞかし、この場も退屈で仕方ないのでしょうね。


私は彼女が気になって話しをしてみた。

「初めまして、マリアさん」

同じ伯爵家だ、これで良い筈よね。

「えーと、確かシャルロッテさんで良いのよね?」

「はい」

「どうかしたのかな?」

「いえ、退屈そうにしていましたので、お話しでもしませんか?」

「そうね、確かに暇ですから良いですよ」


やっぱり...違うじゃない。

本当に『地味で静かで気が弱い』そんな人間なら初見の人間相手にこんな普通に話せないわ。

そのまま普通に他愛のない会話を続けた。

そのまま続ければ良かったのだが、つい好奇心が起きてしまった。

だから、ついやってしまった。

「これは仮なんだけどさぁ...もし、爵位が上で気にくわない令嬢が居て引き摺り降ろしたいとしたらどうする? 」

《シャルロッテさんも、もしかして『読書家』なのかな? こういう時は、悪女物の本を参考に答えるのよね、多分》

「簡単ですわ、シャルロッテさん、そうですわね...相手に護衛が居ないなら、下賤な男に犯させれば、それで終わりです、恥ずかしくてもう表舞台には立てなくなります」

「あの、マリアさん」

「そうで無ければ、毒を顔に掛けて二目と見れない顔にしてしまうとか...」

「何をいっているの」

「後はどうにか誘拐して四肢切断のうえ死ぬまで拷問とか、王家への謀反の証拠をねつ造して国外追放...その上で盗賊に襲わせて奴隷落ちか、殺してしまうとかかな?この辺りが王道かもしれません」

「...凄い話ね」

「はい、私の知っている《本の中の》の令嬢ならこの位は当たり前の様にしていますよ~ ...他には手足切断して樽の中で死ぬまで飼うとか」

「そんな人...いるの」

「はい」


怖い...貴族の中には昔は夫の代わりに拷問をしていた夫人が居ると聞いたけど...まさか『その家系』なの。

知っているって...私はそこ迄危ない人物は知らない。

マリア様は...危なすぎる。

※注意:あくまでマリアは『悪女物の小説』の話を勘違いして話しています。



【元に戻る】


「あの、それ多分マリア様の冗談ですよ...」

「あのね、もし今聞いたのなら、私もそう思うわ...だけど、この話は幼児の時に聞いた話なの、文字も読めない様な子供だったら、こんな話し見なければ出来ないわ...その証拠にあの時の私は、暫く夜は眠れなくなってしまったわ」

「あの...本当ですか?」

《言われてみれば...マリア様は何時もつまらなそうに皆を見ていた...そして今は》

「良く考えたら...マリア様は、確かに他の方と違うし...観察するように私を見ていた気がします」

「昔の貴族の婦人には『家族を暗殺から守る』そういう仕事もあったと聞いた事があります...確かにマリア様は古い家系で長女ですね...」



「いい、私達はあくまで『法律の中』その中で搾取するのよ...それなら多分マリア様は『裏の顔』をしないと思うから、良いわね、あくまで『法の中』でのみロゼから搾取するのよ...すり替えや物を奪う事は無しよ...良いわね」


「「「「「「「「解りました」」」」」」」」


《これがシャルロッテ様が、マリア様に『様』をつける訳なのね...確かに貧乏だからお金が欲しい、だけどお金の為に地獄の様な人生は嫌すぎる》


《マリア様に裏の顔がある...確かにしっくりくる、どう考えても子供の時から、まるで自分の母親と話している錯覚がした...これがその原因だったのね》

《本当にロゼさんにこんな事してて大丈夫なのかな...不味い事ならないかな、私は...平和に暮らしたい》


誤解は加速していった。



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