上 下
23 / 91

第二十三話 過去 私の欲しかった存在はお義母さま...かもしれない。

しおりを挟む
「ちょっと待ってマリア」

「お義母さま、どうしたんです?」

これから、私は部屋に引き籠り、読書をしようと思っていたのに...

「あの、さっきはありがとう...その庇ってくれたのよね」

「確かにそれもありますが、前にお義母さまに『貴方は伯爵家で生まれてから育ち、実の母親から沢山の物を引き継いでいます、それに対して私は貧乏子爵家出身だからロゼには大した物を与えていません』って言われたじゃ無いですか? よく考えたらそれは正しいな、と思い出しましてね、だからこれからは、色々な物をロゼや、勿論お義母さまにも分けようとおもいました」

《確かにそうは言いましたが...それらの物の多くはマリアにとっては半分遺産であり、形見の品です、あの時の私は短絡的で目が曇っていました》


「本当にごめんなさい、私は貴方に酷い事ばかり言っていました...確かに貴方は沢山の貴重な物を持っています、ですが、それは貴方にとって形見であり、遺産だった、あの言葉は間違いだった、訂正させて頂きます...本当にごめんなさい」


本物の令嬢なら、ひにくを言ったり文句を言うんだろうな...

ですが、私は心の中は令嬢ではありません。


「別に謝らなくても良いですよ、確かによくよく考えれば、私は沢山の物を持っています、これらの品は私の物である反面、家の物でもあります、そう考えたらお渡ししても良いと思いました...ただ、私からは言いにくいのでお義母さまからロゼに、家宝を手にした者の義務を教えておいて下さい」

「義務?」

「はい、例えば今回の宝石箱ですが、常に磨かないとくすんでしまいます、宝石は目の細かい特殊な布で常に拭いて、金やプラチナの部分は偶に専用のクリームで磨かないとなりません...まぁ執事やメイドでも上位の物なら知っていますが...家宝ですから渡す訳にいきませんのでそれらの品は、ご自分で手入れをするのがマナーです」


「そういう物なのね?」

「はい、お父さまも良く執務室に置いてある竜の置物を磨いているでは無いですか? あれと同じです」

「言われて見ればそうですね」

「はい、お義母さまも、何か欲しい物があったら、おっしゃって下さいな、正式な手続きを得てお渡ししますわ」


正直言えば手入れが凄くめんどくさいのよね...

時計なんて、常にゼンマイをまかないといけないし、可笑しいと思ったら王都の職人に直させなくちゃいけない。

貴金属は磨かないといけないし。

余り価値を感じない私には、結構な苦行だわ。


「良いのですか?」

「はい、その代わり、お義母さまが結婚した時に持ち込まれました本を読ませて頂きますか?」

「恋愛小説ばかりで...その貴方にはまだ早い気もしますが、そんな物で良いなら構いませんよ」


そんな物...

私には、余程価値がありますよ。

スマホがもし無ければ、前世の私はきっと部屋中本だらけです。

前世の私は、DLした小説が3万冊スマホにやノートPCに入っていました。

この世界にも小説はあるのですが、発行部数が少なく貴重品です。

だから、小説が読みたければ、新作を本屋で高いお金で買うか、持っている人から借りなくてはいけません。

お義母さまは結構な読書家で、結構な本を持っていましたから楽しみです。


「私は社交界に行くよりも、本を読むほうが好きです、それに本を読むのにはもう一つ楽しみがあります」

「楽しみですか?」

「はい、同じ本を読んで、お互いの感想や意見を言い会う事です...私にはそういう知り合いが居ませんから...そういう相手にお義母さまになって欲しいのです」


《マリアの年齢で、本をこんなに読む子供は居ないわね...大体が親に言われて仕方なく本を読む人ばかりだわ》


「本を読んで感想や意見を言い合う...凄く楽しそうですね、実は私の友人関係は読書家は多いのよ...そうね一回一緒にいってみますか?」


「はい、お義母さま...大好き」

「マリア、はしたないですよ」

「ごめんなさい」


《偶に年上と話している錯覚を起こしますが、こういう所は本当に子供ですね、社交界好きのロゼと違って、この子は本当に読書が好きみたい...なんだか昔の自分に近いのかも知れません、最も、私の場合は綺麗な宝石やドレスを余り持っていなかったから、貴族の家なら何処にでもある本に走っただけですけど》

「良いのよ、そうねとりあえず3日後のお茶会に一緒に行ってみましょう」

「本当にありがとうございます、お義母さま」


私が欲しい者...その一つはお義母さまだったりする。

自分に意地の悪い義母に何故? そう思うかも知れない。

『市民落ちしても良い』その様にお義母さまに言ったこともあるけど...この家の爵位と括られた今はもう無理。

そう考えたら...嫌でもお義母さまとは、どちらかが死ぬまで一緒に居る事になる。

ロゼは、婚約相手がみつかれば嫁いでいくから、そんなに長い付き合いじゃない。

だから、義母さまとは仲良くしないと本当に不味いわ...なんて思いながら見ていたんだけど。


見れば見る程...いいなぁこの人。

だって、私と同じで本が好きだし、持っている本も前世で私が好きなジャンルの本ばかりだ。

前世の私は紙の本は余り持っていなかったが、お金を使い結構な小説を課金してDLしていた。


そしてよく、その内容について友人や掲示板で語り合っていた。

腐女子...まではいかないけど、多分その素養はあったと思う。


だけど...お茶会に行っても、ダンスパーティーに行っても、【居ない】。

何処にもライトノベルやアニメにでてくる、地味で本が好きな人物なんて居ない。

多分、まだ齢が若いからか、本よりも、宝石やドレスの話題ばかり。


『恋ばな』なんて...本当の貴族はしないんだとショックも受けたわ。

そりゃあ...婚約者が割と早い時期から決まるんだから無理だわ。


その分、小説のなかでは、現実では無理なせいか『恋愛』のジャンルは多い。


結局の所、貴族の子供のお茶会は、『子供の見栄の張り合い』にしか思えない。

イライザ様は他の子よりは大人だけど...他は子供が頑張って見栄を張る場所にしか見えない。

本当に気を使う...権力を持った子供相手に【接待】している様な物だわ。

本当の子供なら良いんだけど、私は前世の記憶があるせいか、つい処世術がでてしまい、気が休まらないの。



だ.か.ら...本を語りあえるような存在は義母のロザリーしか周りに居そうにないわ。

どうにか、仲良くなれそうな兆しが見えてきたわ。

これでお茶会のお義母さまの友達が【私の思っている様な人達」だったら...


うん、凄く素敵だわ。








しおりを挟む
感想 483

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。) 私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。 婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。 レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。 一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。 話が弾み、つい地がでそうになるが…。 そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。 朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。 そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。 レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。 ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。 第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」  ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。  何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。  えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。  正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。  どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?

【完結】婚約者は偽者でした!傷物令嬢は自分で商売始めます

やまぐちこはる
恋愛
※タイトルの漢字の誤りに気づき、訂正しています。偽物→偽者 ■□■ シーズン公爵家のカーラは王家の血を引く美しい令嬢だ。金の髪と明るい海のような青い瞳。 いわくつきの婚約者ノーラン・ローリスとは、四年もの間一度も会ったことがなかったが、不信に思った国王に城で面会させられる。 そのノーランには大きな秘密があった。 設定緩め・・、長めのお話です。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

処理中です...