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第二十二話 過去  人は受けるより与える方が幸せなのである

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私はお父様に呼び出されている。

そして、その横にはお義母さまがいた。

「マリア...お前の持ち物の所有権をロゼに移す、その様な書類を今見たのだが、これは本当か?」

「ええっ、本当ですよ、ロゼが欲しがり、お義母さまも渡した方が良い、その様なお話しでしたので、正式にお渡ししました」


「ちょっとマリア、私は...」

「大丈夫ですよ、お義母さまは、最後には反対してくれました、ただあの宝石箱はロゼがどうしても欲しそうでしたので進呈しました」


確かに【手元に置いておきたい】その反面、渡してあげても良いかな...そういう考えもありますからね。


「お前、あの宝石箱は、お前の祖母が先の王妃様を助けた際に頂いた品だ、本来はお前以外は所有は許されない品なんだぞ」

「はい...ですがロゼは妹です、しかもあの宝石箱は、私の物ですがドレーク家の大切な資産でもあります、その為あくまで【この家】の物です、ロゼが婚姻を結び出て行くときには返して貰えますから、大切な妹に今暫く預けても良いと思いました」

《本気でそんな事は言えないだろう...あれはマリアにとって一番大切な物の筈だ》


「そうか、随分大人なのだな! だが俺がお前の立場であれば、絶対にあれは渡さない、しかも【月女神の涙】まで渡したそうじゃないか?」


確かに貴族社会ならそれが当たり前でしょうね。

だけど、私は残念な事に美術品に一切価値を見出せないのよ。

前世の時でも、ブランド品を買う位なら新型のPCやスマホの方が欲しかった女。

彼氏にプレゼントに何が良いと聞かれた時に《カラーレーザープリンター》が欲しいと言う様な感じなのよ。


「私はお母さまから沢山の物を引き継いでいます、それに比べてロゼは余りにも物を持っていません、ならば、今ひと時、お渡ししても良いと思いました、それに私もお義母さまから素晴らしい物を頂きましたよ」


「ほうっ...ロザリーから一体何を貰ったと言うのだ!」

「一旦、部屋に戻って持ってきても構いませんか?」

「構わない」


《一体、何を貰ったと言うのだ...ロザリーがそこ迄の物を持っていると思えん》



「お父様、これです!」

「なんだ...その宝石箱は、どう見ても新しくて歴史があるようには見えないな」

《どう見ても、新しい品だ、王都に行けば普通に買えるような品に見えるが》


「すみません、そんな物を贈ってしまって...」


「お父さまにはこの宝石箱の価値が解らないのですね...この宝石箱の中には貴重なオルゴールが入っています、そして、そのオルゴールはお義母さまがこの家に嫁入りした時に持ってきた物なのですよ」

「それがどうした?」

「良いですか! この宝石箱は、お義母さまが大切にしていたオルゴールが使われているんですよ、私的には素晴らしい品だと思います」

「だが、あの宝石箱はお前の祖母からお前の母に引き継がれ、そしてお前へと引き継がれた大切な物ではないか」


「はい、ですが、あの宝石箱は【この家の物】でもあります、ロゼは器量良しですから直ぐに婚姻が決まるんじゃないでしょうか? それまで預けた、そう思えば良いだけです...ロゼだって馬鹿じゃないでしょうから、家宝や国宝を外に持ち出したりする訳はありません、精々部屋で眺めてオルゴールを奏でてて楽しむ位でしょう? なら私の部屋にあるかロゼの部屋にあるかの違いだけです」

「お前はそれで良いのか?」

「はい、実のお母様と二人目のお母様にこんな素晴らしい宝石箱を貰える私は凄く幸せですよ」

「マリアさん...そんな..ありがとう」


「ええっお義母さま、この宝石箱、大切に使わせていただきますね」


「だが、幾らなんでも国宝だぞ」


「『人は受けるより与える方が幸せなのである』これは私が読んだ書物に書いてあったことです、私はこの考えでいたいのです」


《なんでか解らないが、偶にマリアは子供の癖にやたらと大人みたいに話す時がある、この子が男なら、そのまま良き貴族になれる...親の贔屓目ではなく、子供でこんな考えや我慢がきく子は他にはいない》


「マリア...お前はもう、そんな難しい本を読んでいるのだな? 所で俺はお前が言う本を見て見たいのだが、なんていう本だ!」

「えーと《ヤバイ、これは多分前世に読んだ本だ》忘れました」

「そうか、今度タイトルが解ったら教えてくれ」

「はい」


《この子はもしかして『女神の愛し子』なんじゃないか? まぁあれは宗教上の伝説だから居る訳は無い...だがマリアと話していると、下手な部下より余程真面だ...神童、その言葉はマリアの為にあるのかもしれない...まぁ性格に問題はあるが》


これで良かったのかな?

多分、お父さまとお義母さまは私が思った以上に仲が良くない。

お義母さまは初婚で若い。

お父さまも若いが、初婚では無いし私という瘤つきだ。

若い頃に婚約者が決まる貴族社会では珍しい。

そこには色々な周りの思惑が絡んでいても可笑しくない。

多分、お義母さまに求められたのは男を産む事だ。

態々、私にあんな嫌味を言う位だからね。

だが、産まれたのはロゼ、女の子だ。

本来なら男子誕生に期待を込めて、2人目を望む筈が、その気配は無い。

しかも、私の伴侶がこの家を継ぐことになるなんて...少し可笑しな気がする。


そう考えると、お義母さんにはロゼの一回しかチャンスが無かったのかも知れない。

何故そうなっているのかは、子供の私に知らされる事は無いと思う。

まぁ、知る必要もないんだけどね。


「マリア...もう下がって良いぞ」

「はい」


物なんて...私には余り価値は無い。

どちらかと言えば、家族が揉めないでくれた方が...うん有難いな。



















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