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第六話 私はこの程度じゃ傷つかない

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ああっ、本当に気が重い。

これから、一番の被害者である、我が娘マリアへの報告がある。

あの子は、何時もなにも文句を言わなかった。

だからこそ、その埋め合わせとして【貴公子】と名高いフリードを選んだのに何たるざまだ。


「すまない、ドレーク伯爵」

顔に出ていたのか?

「気になさるな、今回の件はうちのロゼも絡んでいる、全部そちらが悪い訳でない」

「そう言って頂けると...本当に救われる、すまない」


あの、傲慢で意見を違えない男がこうも低姿勢だと困ってしまう。

いつも会議の席で私と怒鳴り合う姿に戻って欲しい物だ。

「ドリアーク伯爵、この話が終わったら、何処かのサロンで飲もうでは無いか? それで全部終わりにしよう、貴殿がその調子では俺もどうして良いか困ってしまうぞ」


「俺とて、間違いをすれば正しもするし、詫びる、今回は愚息の事で少々疲れただけだ」


そう言うドリアーク伯爵は10歳以上老けた様に思えた。


そうこうしている間にマリアの部屋にたどり着いた。


息を数回吐くと俺はマリアの部屋をノックした。




【マリアSIDE】


ドアのノックの音がした。

恐らくは、話し合いが終わって私に報告をしにお父様たちが来たのだろう。

「どうぞ」

私がそう伝えると、お父様とドリアーク伯爵、お義母様が入ってきた。

多分二人は後で来るのだろう。

顔色は凄く良く無く青白い。

しかも、その表情からは...【本当にすまない】そんな感じが漂ってくる。


私としては【そんな顔しないで良いのに】そんな思いで一杯だ。

前世の記憶がある私としては【そんな大事な事じゃないのに】とつい思ってしまう。


普通に女子高生をして短大に入りOLとなった経験を覚えている私にとっては本当に【どうでも良い】事だ。

異世界とは違い、前の世界では正に恋愛は戦いだ(一部の人にとって)

イケメンで優良株の男には女が群がり、水面下で泥沼の様な戦いをしていた。


実際に女子短大時代に出来た彼氏は【肉食派の自称、私の親友】に寝取られた。

既に同棲までしていた彼を取られた経験がある。

これよがしに、明かにラブホの中でキスする写真を送ってきた。

貴族という立場を考えたら、ロゼもフリードも、最後の一線はおろかキスすらしてない可能性が高い。

精々が手を握ったり、抱きしめ合う健全な関係だろう。

そう考えたらこれは【寝取り】ですら無い。




大体、余程の美少女で無ければ、小学生の時に好きな男子はクラスのマドンナみたいな子に夢中になり付き合えない。

中学でも高校でも人気のある男子は競争率が激しく、サッカー部のエースでイケメンとかなら他の女の子がひっきりなしに狙ってくる。


はっきり言ってしまえば...前の世界なら【良くある話】である。

確かに婚約者の相手を奪えば、前の世界でも慰謝料がとれるが...それは微々たるものだ。

本当に嫌な思いをして相手二人が不誠実でも300万とれたら良い方だ。


確かにフリードはイケメンで貴族、前の世界に直せば凄く優良物件だ。

そして、私の婚約者ではある。

婚約者ではあるが...前の世界で考えるなら【付き合っていない状態に等しい】

だって、顔合わせして、文を貰う事数回、お茶をした事数回....

前の世界だと、お見合いして文通して、喫茶店でお茶を飲んだだけの相手にしか過ぎないのよ。

それが幾ら一流企業のイケメンでも恨むまではいかないわ。

精々が「ロゼ子の奴、あたしの彼を奪ってムカつくわ」と友達に愚痴を言って酒飲んで、1週間で忘れるよ。

そう考えたら、フリードに執着心なんて、そんなに無いのよ。

そんな事で傷つくようなメンタルじゃ無いわ。


私のなかでは寧ろ【今でよかった】【相手がロゼで良かった】そんな思いすらある。


だって、もし正式に結婚した後にこんな事になったら、私は立場的にロゼを追求しなければならない。

場合によっては【国外追放】すら言い出さなければならなくなる。

昔なら解らないが、最近のお義母様は凄く優しく、まるで本当の母の様に私に接してくれている。

私も、お母様とは正直思えないが、年上の親友の様にお義母様を思っている。

そんなお義母さんの娘のロゼに酷い事はしたく無い。


またフリードが手を出したのが【ロゼ】で本当に良かった。

もし手を出した相手が使用人や平民なら、貴族として処罰しなくてはならない。

もし、他家の貴族の令嬢なら、恐らく遺恨を残し確執を生む。

貴族の中に敵が出来るのは好ましくない。

だから、これは【不幸中の幸い】だったんだと思う。


「マリアよ、ショックを受けているのは解るが、そこを通してはくれないか?」


「ごめんなさい、直ぐにお通し致します」


私はお父様たちに部屋に入って貰った。


















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