オメガ♂に惚れたインフィニティスターの話

１９ 楽しみ過ぎてチンコがキツイ

　俺とひなたの楽しい時間を削ぐんじゃねぇ。
　救いはひなたがまだプルプルしていて、ナンパに気付いていない事くらいだ。
　クソアマいつまでも戯れ言垂れ流してんじゃねーぞ。
　ひなたがガードを緩めないように、ほどほどにちょっかいをかけ桜色の爪を舐める。

「全員と最後までじゃなくてもいいですからぁ～」
「全部ちゃあんとご希望に添いますよぉ～」
「私達全員何個もトゥインクルついてるんですよぉ。がんばりますぅ～」

「黙れブス」

　女共が硬直した。
　イチャついてる俺に声を掛けてくるだけあって、客観的に見ればなかなかに容姿レベルが高い方だとは思う。しかも全員が複数回トゥインクル成功してると。
　そりゃオメガ相手だろうと自信満々でナンパしてくるわな。

　この場合、一般的な男の対応としては、好みだったら、その場で乗り変えずともエントリーは交わしてキープしておくのが普通だ。
　そもそも本気で男を嫌がる女なんて、表向きは存在しない。
　男から言い寄られて拒否した場合、訴えられれば生殖義務違反で人生詰む可能性すらある。

　狙っている相手がいて、それを証明できれば問題ない程度だが、もしひなたのような場合はあっけなく詰む。ひなたはオメガなので、とりあえずしばらくは卵子提出だけしていれば赦されるだろうが。
　だから女共の言動も一概に間違いだとは言えない。女から声を掛けなければ出会いの可能性などほぼ無いのだし。
　但し、相手が俺とひなたじゃなければ、だ。

「男の邪魔はするなと学校で習わなかったのか？　ああ？」

　女共が自分達の失態に青褪める。複数のトゥインクル持ちに靡かない男もいると、ようやく気付いたようだ。

「こういう嗜好の男もいる。良かったな、一つお勉強になって」

　冷めた顔で言ってやれば、今度は真っ赤な顔をして口々に謝罪を述べ隣の車両へ移って行った。
　もし次にこんな場面に出くわしたら、あいつらは「恥ずかしいけど私も虐めて下さい」とでも言ってナンパするのだろうか。
　俺は嗜好と言ってもひなた限定な。他の奴じゃ演技とバレバレで白ける一方だ。
　ひなたに向き直り、そっと両手を外す。

「ひな、口直し」

「へ？」

　有無を言わさず口付ける。ひなたからのキスはまた今度ゆっくり教えよう。
　ひなたはどこもかしこも甘い。唇や手で触れても、においを嗅いでも、声一つでも、ひなたの存在は俺のチンポを直撃する。そのうち姿を見ただけで完勃ちするかもしれない。
　列車内は香水の臭いだか何だか知らないが、鼻先に付き付けられているような、わざとらしい甘ったるい臭いが充満していて不快でしょうがない。もっと換気頑張れ。
　乗ってる間はひなたの首元に顔を埋めていたい。つーかこれからそうしよう。

　ひなたの唇を貪りながらチンポを押し付ける。
　あーヤバイ出したい。今度献精センター行った時、精子回収具コンドームフィルムくれねーかな。
　……フィルムをそんな風に使う奴なんていないわな～。センター外でフィルムに出してもその精子は使えるのかな？　もし使えずカウントされずなら無駄打ちもいいとこだもんな。フィルムに出すくらいならナカに出せってーの。
　……出せたら苦労しないっつーの。あーもう！

　一人欲望と戦いながら、だったらキスを止めろって話だけど止まれなかったキスは、麻武学園前駅のアナウンスがあるまで続いた。


　ひなたと手を繋いで登校するのは気分が良い。女に囲まれないのが素晴らしい。
　ひなたは隙あらばすぐ手を引っこ抜こうとするがそんな事は許さない。そのたびニッコリ笑ってキスを落としてやればやがて諦めたようだ。
　教室で席につく前、ひなたが溺れるようなキスをして開放する。
　腰が砕けペタリと席に座り込むひなたの耳元に囁く。

「それじゃひなた、放課後な」

　やっと俺と離れられる事にほっとしているようだが、今日はこれからが大変だと思うぞ。精々頑張れ。
　シンと静まっていた教室が、俺がひなたから離れた瞬間動きだした。
　あっという間にひなは女子に囲まれる。

「香坂さん、どういう事！？」

「龍玖クンと付き合ってんの！？」

「誰とも付き合わないんじゃなかったの！？」

「その右耳……まさかエターナルじゃないわよね！？」

「人工樹脂じゃないの！？」

「待って！　龍玖クンもピアスしてる！」

　ハチの巣をつついた様とはこのことか。
　俺は俺で男子からの質問攻めにあう。

「龍玖が超絶キスかますとは！」

「リュークン、マジで落としちゃったワケ？」

「あの鉄壁の乙女を！？」

「もーヤった？　ひなたチャンどーだった？」

「なんて言って落としたんだよ」

「エターナルってマジかよ！？」

　その勢いに若干引くが、たぶん一番衝撃的な事から言ってみよう。

「まだヤってない」

「えええーーー！！？」

　あまりのうるささに思わず耳を塞ぐ。

「マジで！？　龍玖が食ってないの？」

「リュークンとＴＳならすでに受精ヒットしててもおかしくないと思ってたのに」

「やっぱ鉄壁の乙女がヤらせてくんないわけ？」

「ん～？　成り行き？」

「なんだそれ」

　つか鉄壁の乙女と言うあだ名に、こっちの方がなんだそれな気分なんだけど。
　ひなたはああ見えて押しに弱い。ツンツン拒否っているように見えるが、あんなの仔猫レベルの虚勢だ。
　おっぱいこそ痛がっていたがあれはたぶん身体の変化途中だからだ。どのくらいで完全にオメガ化するのか知らないが、あの身体は快楽に弱いと思う。
　楽しみ過ぎてチンコがキツイ。

「つーかあのデカさのエターナルってハンパねーな、すげーよリュークン」

「相当しただろ。虫除けには最高だな。まだヤってねーけど。ぶふっ」

「いやいや、あの龍玖がヤってないやつにエターナルって！　ぐふっ」

「笑いたきゃ笑えよ」

「いやーあっはっはっは！　さっすが鉄壁の乙女！」

　天然石だと微塵も思ってねーな。もし言ったらドン引きされること間違いなしだ。ひなたも絶対言わないだろう。
　ひなたはあの女子からの怒涛の攻めに、何て答えているんだろうか気になる。


　ランチはどうするのかと見てれば、本日もクインビー達に連れられて行った。と言うかひなたの脇を固めていたのがその集団で、その周囲を他の女たちもついて行った。
　オメガ狙いで来た他校生を一網打尽にする計画でも立てたのだろうか。
　エターナルを見た野郎共がガックリきているところを、女郎蜘蛛のように絡め取っていくのが目に見えるようだ。

　今ひなたは、国民の生殖義務を一つも果たしていない訳だが、これでも十分貢献しているんじゃないだろうか。結果的に出会いの斡旋をしてるんだから。
　今日もひなたの顔が見えるところに陣取れば、友人たちは賭けに興じていた。

「昨日を凌いだんだからもう少しもつと思う。オレは手堅く今週末にしとくわ」

「男時代から続く鉄壁の乙女の名はダテじゃないっしょー。２週間！」

　男の時からそのあだ名付けられてたのかよ。なんて不憫な奴だ。

「我らがリュークンよ？　本日中一択！」

「おおお～、攻めてくねえ！」

「それで？　その賭けそれは何割俺にバックくるんだろーなあ？　おい」

「もちろん落としたお祝いには、豪華美女たちとのハーレムナイトをプレゼント！」

「それいつもと変わんねーじゃん、ぎゃははは！」

「リュークンが搾り取られちゃう～」

「豪華エアシップにペアご招待とかねーの？」

「オレらじゃムリムリ～、自腹でおなしゃーす」

　盛り上がってる男子はここしか居なかった。あとは女子に絡まれている。付け入る隙を与えるなんて甘いね諸君。
　時折ギンッ、ギラッと野郎が睨み付けてくるが無視だ。野郎に見られてもちっとも嬉しくない。
　あ、女からでも嬉しくなかった。
　肝心のひなたはチラともこっち見ねーな。と思ってひなたを見ればすでに席を立っていた。いつの間に。