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初等部
高学年
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小春が5年生になって僕は中学生になった。中学校は桜月学園の中等部じゃなくて、付属の月ノ男子中学校への進学を選んだ。
小春がいないなら、共学でも男子校でも僕にとっては違いがなかった。ただ、小春と同じように異性のいない環境で生活してみようと、小春と同じ生活を送りたかった。
小春との登校は今でも続いている。日和は、入学して1ヶ月で僕たちと登下校するのを拒否し始めた。友達と一緒の方がいいと、渋い顔をする小春やお母さんを半ば強引に押し切って友達との登下校を始めた。
おかげで、僕はまた小春と2人きりで登下校することができている。
中学生になってから、毎日一緒に下校することはできなくなったけれど、それでも朝は毎日一緒。帰りも、可能な限り一緒。必ず僕が小春の小学校まで迎えに行くんだ。
00年7月21日金曜日。今日は終業式で学校は午前で終わる。部活にも入っていない僕は、誰よりも早く学校を出ることができた。向かうのはもちろん、小春がいる桜月学園付属桜ノ女子小学校の校門前。付属校とはいえ部外者である僕は、この門をくぐって先に進むことはできない。
――早く小春に会いたい……。
そんなことを想いながら、小春がいる校舎を見ると、車が1台門の奥から走って来た。よく見る白いスポーツカー。この学校に通う女子児童の保護者の迎えの車だ。それが出て来たということは、小春ももうすぐ来るはず。
ほんの少し時間が過ぎると、わらわらと校舎から女子児童が出て来た。
同じ制服を着た、僕より小さな女の子たち。その中に小春を見つけた。どんな集団の中にいても、僕は小春を見つける自信がある。
「マナ君!」
小春も僕に気づいて、駆け寄ってくれた。この瞬間がたまらなく嬉しい。
「帰ろうか」
「うん」
小さな小学生たちの中、小春と歩く。もう少し歩けば、男子小学生や中学生も混ざって来て景色が変わる。
「明日から、夏休みだね」
「そうだね」
特に何があると言うわけでもないけれど、何となく口にしていた。何かあるとすれば、明日からしばらく、小春と登下校できなくなるということか……。
「夏休み、1日だけ貸してって言ったら小春、怒る?」
「どうして?」
首を傾げる小春に、僕は言う。
「もうすぐ、お母さんの誕生日なんだ。だから、プレゼントを一緒に選んでもらえないかと思って。女性の喜ぶものは僕にはわからないから」
本当は、ただ、小春と一緒にいる口実をつくりたいだけ。夏休みの1日だけでも小春といられる日を、僕がつくりたいだけ。
「いいよ!」
僕の邪な考えなんて知りもしないで、小春は承諾してくれた。
これで小春の夏休みの1日を独占する権利を得ることができた。
でもまさか、それが僕たちの運命を大きく変える日になるなんて思いもしなかった。
小春がいないなら、共学でも男子校でも僕にとっては違いがなかった。ただ、小春と同じように異性のいない環境で生活してみようと、小春と同じ生活を送りたかった。
小春との登校は今でも続いている。日和は、入学して1ヶ月で僕たちと登下校するのを拒否し始めた。友達と一緒の方がいいと、渋い顔をする小春やお母さんを半ば強引に押し切って友達との登下校を始めた。
おかげで、僕はまた小春と2人きりで登下校することができている。
中学生になってから、毎日一緒に下校することはできなくなったけれど、それでも朝は毎日一緒。帰りも、可能な限り一緒。必ず僕が小春の小学校まで迎えに行くんだ。
00年7月21日金曜日。今日は終業式で学校は午前で終わる。部活にも入っていない僕は、誰よりも早く学校を出ることができた。向かうのはもちろん、小春がいる桜月学園付属桜ノ女子小学校の校門前。付属校とはいえ部外者である僕は、この門をくぐって先に進むことはできない。
――早く小春に会いたい……。
そんなことを想いながら、小春がいる校舎を見ると、車が1台門の奥から走って来た。よく見る白いスポーツカー。この学校に通う女子児童の保護者の迎えの車だ。それが出て来たということは、小春ももうすぐ来るはず。
ほんの少し時間が過ぎると、わらわらと校舎から女子児童が出て来た。
同じ制服を着た、僕より小さな女の子たち。その中に小春を見つけた。どんな集団の中にいても、僕は小春を見つける自信がある。
「マナ君!」
小春も僕に気づいて、駆け寄ってくれた。この瞬間がたまらなく嬉しい。
「帰ろうか」
「うん」
小さな小学生たちの中、小春と歩く。もう少し歩けば、男子小学生や中学生も混ざって来て景色が変わる。
「明日から、夏休みだね」
「そうだね」
特に何があると言うわけでもないけれど、何となく口にしていた。何かあるとすれば、明日からしばらく、小春と登下校できなくなるということか……。
「夏休み、1日だけ貸してって言ったら小春、怒る?」
「どうして?」
首を傾げる小春に、僕は言う。
「もうすぐ、お母さんの誕生日なんだ。だから、プレゼントを一緒に選んでもらえないかと思って。女性の喜ぶものは僕にはわからないから」
本当は、ただ、小春と一緒にいる口実をつくりたいだけ。夏休みの1日だけでも小春といられる日を、僕がつくりたいだけ。
「いいよ!」
僕の邪な考えなんて知りもしないで、小春は承諾してくれた。
これで小春の夏休みの1日を独占する権利を得ることができた。
でもまさか、それが僕たちの運命を大きく変える日になるなんて思いもしなかった。
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