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5.新入生歓迎会

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 今年も私立しりつ桜月学園さくらづきがくえん付属ふぞく桜ノ女子さくらのじょし高等学校こうとうがっこうの講堂で、新入生歓迎会が行われる。

 ブザー音が鳴り響き、落とされる照明。

 暗闇に落とされた客席と舞台。

 射し込んだひと筋のスポットライトの中に立つのはひとりの女子生徒。

「新入生のみなさん! 入学」

「ちょっと待ったあああ!!」

 突如として開かれた客席後方の扉から、場違いな光が射し込む。

 いよいよ始まろうとしていた新入生歓迎会に現れた乱入者。

 なにごとかと、新入生たちは逆光の中、舞台に向かう乱入者を見る。

 「新入生歓迎会」という学校から正式に認められているこの集会に、異議申し立てをしようなどという人物がいるのだろうか。

 新入生たちに走るのは緊張。

「私をパシらせている間に、ひとりで歓迎会を始めるんじゃない!」

「そんなこと言われても、遅いんだもん。それで、買って来てくれた?」

「はい。例のプリン。先生はバレないようにしてよ。途中で抜けるのは校則違反なんだから」

「バレてますよ」

 そこまで見ていた新入生たちは理解した。

 これはトラブルではなく、演出なのだと。

 舞台にあがる、女子生徒2人と教師。

 プリンの入ったコンビニ袋、という体の袋を取り上げられて嘆く。

 中身はプリンに見せかけたそれっぽいなにかだ。

 本当にプリンを買ってくるわけがない。

 教師も交えて実演し、新入生に校則のいくつかを説明するのが我が校の伝統なり。

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「ユイ、インカム」

「おっと、ほいほい」

 せっかくのってきたというのに、隣に座るサユリに筆を止められてしまった。

 いや、まあでも仕方ない。

 ここは調光室。

 この壁を隔てた向こう側の世界では、目下新入生歓迎会が繰り広げられているのだから。

 そして、その舞台上の照明を一手に担うのが私、北川きたがわゆいの役目よ。

[結、また調光室で原稿書いてたんじゃないでしょーね]

 インカムから聞こえてくる台詞に、あちゃーと頬をかく。

 いやー、だって照明をイジらない時間は暇なのよ。

 新入生歓迎会なんてイベント、滅多に味わえないこの空気、目の当たりにしたら文字に起こしたくなるのよ。

「大丈夫でーす。サユリが見張ってまーす」

 横でサユリが助け舟を出してくれた。

 さすが私の相方、音響担当。

 サユリの音があってこそ、私の光が際立つというものよ。

[舞台上、準備OK]

「音響、準備OKです」

「照明、準備OKです」

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 再び、暗闇に落とされた空間。

 声を聞くことのできるものだけが、その合図を知ることができる。

[音響キュー]

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 照明は、音響の合図からおよそ3秒。

 音の盛り上がりに合わせて、照明をつける。

 舞台上には、生徒がひとり。

 舞台上から客席へ、高らかに告げる。

「新入生諸君! ようこそ!」

 --- 5.新入生歓迎会 ---

 *** 春、4月、出会い、いろいろ。 終 ***
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