上 下
123 / 182
4章 フェイトオブデッドエンド

122話 打ち破るべき敵

しおりを挟む
 帝都にまで進むことを決めた俺達だが、意外なほどにあっさりと侵入できた。
 それでも、ここからは簡単ではないだろう。少なくとも王城で、絶対に敵に出会う。

 もちろん、王城の周りにだって警備はいるはずだ。流石に戦闘をこなさず侵入できるとは思えない。
 ここからが正念場だな。少なくとも、シャーナさんの言っていた3組には出会うはずだ。
 双翼の双子、近衛騎士団長、暗闇の短剣。どんなやつかは知らないが、警戒に値する敵のはず。
 他にも敵はいるのだろうから、慎重に進みたくもある。
 だが、他から援軍を呼ばれる危険性だってあるからな。持久戦は厳しい。

 なるべくまっすぐ皇帝の元へ向かって、そのまま倒してしまいたい。

「さて、どうやって侵入する?」

「うちが敵を引き付けてやる。そのスキに、お主たちは王城に入っていけば良い」

「大丈夫なんだよな?」

「ああ、もちろん。お主が心配するようなことはない。うちとて、そこらの雑兵とは比べ物にならん」

「これからの戦いで、なにか気をつけるべきことはあるか?」

「あまり大勢で敵に挑むな。リオンと誰か。その2人で戦うことを基本にしろ」

 俺は皇帝との戦いまで消耗できないはずなのに、シャーナさんはどういう意図で今の提案をしたのだろうか。
 まあ、理由なんてどうでもいい。未来視で重要だったのだろうからな。そこは信頼できる。
 だから、素直に言うことを聞いておこう。みんなで生きるために、きっと必要なのだろうから。

「ミナちゃんの調べてくれた感じだと、名のある敵は私達の数と同じくらいだね。だから、悪くないと思うよ」

「そうか。なら、シャーナさんの指示に従うか。相性の良さそうな相手は居るか?」

「ああ、なるほどね。その考え方なら、納得だよ。みんながそれぞれに活躍できると思う」

 つまり、それぞれに個性がある敵がいると。なら、納得だな。
 心奏具の相性を考えれば、近接戦闘が得意な相手にはソニアさんをぶつけるような考えがある。
 室内だから、遠距離から近接を封じるという戦いは難しいだろうからな。
 そうなると、ノエルの活躍の場はどこになるだろうな。まあ、俺とも組むわけだから、やりようはあるか。

「それなら、あたしとリオンの敵は誰になりそうかしら?」

「双翼の双子じゃないかな。心奏共鳴がやっかいなんだよね」

 それなら、ノエルやユリアの可能性もあるけどな。
 まあ、ミナが知らない訳はないから、別の理由で他の敵と戦うのだろう。

「わたしはどうですかっ?」

「ユリアちゃんは、灰の狼かな」

「どんな敵なんだ?」

「武術の達人って感じかな。武器は使わないんだけど、結構強いよ」

 なるほどな。ソニアさんには近衛騎士団長の相手をしてもらうはずだ。
 最強の手駒は強い敵にぶつけるのが鉄則だからな。俺達の中で一番強いのは、ソニアさんだから。
 そして、ユリアが双翼の双子を相手にしない理由は分かった。武術の達人なら、サクラは相性が悪いよな。

「ミナやシャーナさんがいてくれて助かるな。俺1人だったら、そこまで考えられなかった」

「リオンちゃんがそろえた力だよ。私達みんな、あなたに助けられた人だから」

「ああ。お主がいたから、今このメンバーになっているのじゃ。まぎれもなくお主の力。紡いできた絆のな」

 ありがたいことだ。俺に力を貸すことを当然だと考えてくれる人がいる。
 だからこそ、どんな手段を使ってもみんなで生き延びたい。
 人質を取れば解決するのなら、俺はそうする。民衆を巻き込めば良いのなら、同じ事だ。
 もはやどこまで堕ちようが関係ない。俺のやるべきことも、やりたいことも決まり切っているのだから。

「それで、ノエルの相手は?」

「七色の杖。魔法使いだね。でも、ノエルちゃんなら相性が良いと思うよ」

 名前の感じからして、多種多様な魔法を使えるのだろうな。
 だが、遠距離の攻撃ならノエルに分があるだろうというのは俺も感じる。
 建物の中だから遠ざかれないのだとしても、ミラクルオブエンカウンターの力は汎用性が高い。
 いくらでも自在に操作できるエネルギーの矢が、どれほど便利なことか。
 俺が近距離を受け持つのなら、十分に勝てるだけの材料はあるはずだ。

「小生は近衛騎士団長を受け持ちます。帝国と王国、どちらの近衛が強いのか、教えて差し上げましょう」

 俺も同じ事を考えていた。何ならソニアさん1人で勝てそうな気もするが、シャーナさんの言葉がある。
 しっかりとソニアさんの力になれるように、心の準備をしておこう。

「よろしく頼む。俺は皇帝とも戦うんだよな。何が何でも勝たないとな」

 それで結局、暗闇の短剣とは誰が戦うのだろうか。暗殺術を使える人間なんて、この場にはいないぞ。
 どうしたものかな。今ここで聞いて良いものなのだろうか。
 まあ、俺が聞いてはまずいなら、シャーナさんが警告してくれたはずだ。やるか。

「暗闇の短剣の対策は良いのか?」

「ああ、帝国で有名な暗殺者だね。確かに皇帝が雇っているらしいよ」

 なら、備えが必要だよな。どんな手が効果的なのかは分からないが。

「どうやって勝てば良いものかな」

「こっちで準備しておくね。秘策があるんだ」

 なら、安心だな。ミナが考えた策ならば、十分だろう。
 そして、方針は定まった。後は突き進むだけだ。

「シャーナさん、頼む」

「ああ、任せておけ」

 シャーナさんは空へと舞い上がっていく。
 そういえば、前は気にしていなかったが、どうやって空に飛んでいるんだ。
 俺はエンドオブティアーズを伸ばしてなんとか飛び上がるだけだったぞ。

「さあ、食らうが良い!」

 そのままシャーナさんは炎の雨を降らせていく。
 何も詠唱していない。魔法の名前すら口に出していない。
 にもかかわらず、シャーナさんの攻撃はまるで止まらない。
 おそらくは、無詠唱の魔法が使えるとか、そんなところではあるのだろう。
 だが、常識的な魔法使いからは考えられないほどの技だ。敵でなくて良かった。

 王城を警備している者たちは、シャーナさんの攻撃にまるで対処できていない。
 それでも、なんとかシャーナさんを倒そうと集まっている。
 心配ではあるが、未来視の上での判断だ。俺達は進むべき。

「みんな、行くぞ!」

「リオンちゃん、私が案内するね」

「では、参りましょう」

「さあ、みんな殺してあげますっ!」

「あたしも負けてられないわね」

「どんな敵が来ても、倒すだけだよ」

 みんな、頼りになることだ。
 そう思いながら、ルミリエの指示に合わせて王城を進んでいく。
 あるていど駆け抜けていくと、敵の気配があった。

「七色の杖だね。リオンちゃん、ノエルちゃん、準備して」

「分かった。いくぞ、ノエル」

「うん、リオンお兄ちゃん。頼りにしていてね」

 俺達の目の前に現れたのは、身の丈ほどの杖を持った老人。
 だが、油断はできない。ルミリエが名を挙げたほどの存在で、王城を守っている相手なんだ。
 ノエルの命もかかっている以上、どんな小さな違和感でも気づいてみせる。
 さあ、戦いの始まりだ。ここから続く連戦に、改めて気合を入れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

どーも、反逆のオッサンです

わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...