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3章 歪みゆくリオン
92話 リオンの限界
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孤児院が謎のモンスターに襲われて、そろそろ限界を迎えそうになっていた。
それでも、もうすぐシルクがやってくるという知らせがルミリエから届く。
なら、後はもうちょっとだ。油断する訳にはいかないが、ゴールが見えたのはありがたい。
シルクがやってくるまで体がもてばそれでいい。最悪、腕が折れようが構わない。
死んでさえいなければ、シルクならば治療できるのだから。今いちばん大事なのは、子ども達を何が何でも守ること。
だから、もう出し惜しみなど必要ない。命を燃やして、最後まで出し尽くすだけだ。
「エルザさん! 話は聞いたな!? あともうちょっとだ! 頑張ってくれ!」
「お兄ちゃん! がんばって!」
「リオンお兄ちゃん……!」
「私達のことは心配しないでください! なんとか耐えてみせますから!」
エルザさんの言葉に甘える訳にはいかない。基本的に、みんな戦えないんだから。
無理をさせれば、犠牲が出てしまう。ナイフでも持って攻撃してくれるだけで、俺は楽ができるだろうさ。
いま目の前にいるモンスターたちは、ちょっとしたことで倒れて消えるのだからな。
それでも、子ども達の安全には代えられない。俺の負担は、シルクの回復魔法で治せる程度。
今の状況を考えれば、多少の無理をしてでも耐えるべき場面だ。
子ども達に不安を与えれば、きっとじっとしていられないだろう。だから、余裕があるフリをしないと。
全身が強く痛むが、そんなものは無いのだと思え。簡単に勝てる相手だと、子ども達に信じてもらうんだ。
「サクラ! まだやれるよな!」
「当たり前でしょ! あたしはあと何時間だって楽勝だわ!」
頼りになることだ。声色からすると、本当に楽勝なのだろう。
体力や魔力は問題なくとも、防衛戦という状況に疲れているかもしれないと考えていた。だが、大丈夫らしい。
本当にサクラは強くなった。明らかに、俺を上回っている。
悔しさはあるが、今はありがたい。サクラがいなければ、誰かに犠牲が出ていたはずだ。
俺も負けていられない。あと少し耐えるだけで、シルクが助けに来てくれるんだ。
ここで頑張らないで、いつ頑張るんだ。どれほど苦しかろうが、あと少し耐えるだけなんだから。
エンドオブティアーズを伸ばして突き、ウインドで加速して斬りかかり、なんとか子ども達を守っていく。
あと少しだと分かっていても、ウインドで無理やり加速する負担には、心が折れそうだ。
でも、俺の苦しみ程度でみんなが守れるのなら、間違いなく安い対価だから。
「この程度で、俺達が負けるとでも思ったか! 俺とサクラがいて、勝てないわけがないんだ!」
自分を鼓舞するための言葉だが、子ども達にも響いたようだ。声を上げて応援してくれている。
本当に嬉しい。みんなの応援は、苦しいだけの戦いに喜びを与えてくれる。
そんな希望が生まれたころ、モンスターの数が増えだした。もしかしたら、最後のひと勝負なのかもしれない。
モンスターを簡単に増やせるのなら、もっと早くに子ども達に犠牲を出せたはずだからな。
俺としては、相手もそろそろ限界なんじゃないかと思える。
だが、俺も厳しい。筋を痛めているような気がする。動くから問題はないが。仮に動かなかったところで、ウインドで動かせばいいだけだ。
「リオン、行くわよ! こんなモンスターなんかに、子ども達を殺させるもんですか!」
「あとちょっとだよ、リオンちゃん! もうちょっとだけ頑張って!」
「任せておけ! 絶対に、誰も傷つけさせはしない!」
口では気合い十分な俺だが、ハッキリ言って状況が悪い。全身が痛くて、集中が切れそうになっている。
それでも、みんなを不安にさせる訳にはいかないからな。あとちょっとだというのなら、なおのこと。
エンドオブティアーズの剣で、全力で攻撃を仕掛けていく。それでも、一気に大勢を巻き込めないのがつらい。
剣を長く伸ばして薙ぎ払えば、建物に大きなダメージが加わる。結果として、建物は崩壊する。
だから、子ども達を守るためにも、俺はウインドでの加速に頼るしか無いんだ。
サクラだって、上級魔法を放てば一掃できる相手に、初級魔法を細かく撃って立ち回っている。
なのに、俺がサクラの努力を台無しにする訳にはいかないよな。それに、子ども達を守ることが一番大事なんだ。モンスターを倒すことじゃない。
分かってはいるが、腕も足も背中も、何もかもが痛い。全力で突風をぶつけて、加速だけでなく方向転換までしているからな。
だが、今の苦しみに耐えるだけで子ども達が助かるのなら、耐えるしか無いだろう。
アザのようなものまでできている気がするが、この程度で死にはしないのだから。
ただ、本当に苦しい。痛い。どうにかなってしまいそうだと思うほどに。これなら、事前にもっと練習しておけばよかった。
シャーナさんには、負担があると言われていたのだから。何らかの形で軽減できないか、あるいはごまかせないか。いろいろと検証しておけば。
だが、いま後悔しても仕方がない。眼の前の敵に集中することが、子ども達のためだ。
ここでみんなを守りきれなかったら、俺の苦しみにだって意味はなくなるのだから。
「まだまだ終わりはしないぞ! 絶対に、何があっても、みんなを守る!」
「当たり前よね! ディヴァリアだって、ここの子たちは大切でしょうよ!」
それはどうだろうか。ノエルとエルザさんが大切なのは、俺にも分かる。
だとしても、他の子供達まで大事に思っているのかは怪しいんじゃないか?
まあ、いまここで言って良いことではないから、黙っているつもりではあるが。
それよりも、モンスターを倒さないと。徐々にラインを押されている。後は時間との勝負だ。
シルクが間に合うか、俺達が限界を迎えるか。どちらの方が早いかの。
だが、この勝負で負ける訳にはいかない。たとえ腕を、脚を折ることになったとしても、絶対に守り切ってみせる。
必死でエンドオブティアーズを手に駆け回っていくが、本当に限界が近い。
ラインを割られそうという意味でも、俺の体力や精神という意味でも。
じわじわと追い詰められていく感覚が焦りを生むが、変な行動をしたら余計に窮地に陥るだけだ。
落ち着け。冷静になれ。今できることに全力を尽くすことだけが、最善の道だ。
一発逆転の手段なんて存在しない。だから、的確に敵を倒していくんだ。
それでも、子ども達の目と鼻の先と言えるくらいまで、モンスターは近づいていく。
後どれだけでシルクはやってくる。もう、時間はないぞ。
「きゃーっ!」
近くに敵が現れて、冷静さを失ったらしい子供が走っている。
そして、その子供に向けてモンスターは攻撃をしようとしている。
エンドオブティアーズの剣を伸ばすことはできない。俺から見て、手前に子供がいるから。
なら、やれることはひとつだけ!
俺は全力で子供のもとへと駆け寄り、盾でかばう。
なんとか子供への攻撃を防ぐことができた。だが、いま無理に加速したせいで、足が折れてしまった。
衝撃に押し倒されて、立ち上がることすらできない。
なんとかエンドオブティアーズの剣でモンスターは貫けたが、まだ敵は近寄ってきている。
幸い、モンスターは俺の方によってきている。なら、子ども達はいますぐ犠牲にならない。
そう考えていた俺に、後ろから声が聞こえる。
「お兄ちゃん!」
エリスの声だ。そして、俺に向けて攻撃しようとしてくるモンスターに、エリスは立ちはだかっていく。
俺は、エリスに向けて攻撃を仕掛けるモンスターを、ただ見ていることしかできなかった。
それでも、もうすぐシルクがやってくるという知らせがルミリエから届く。
なら、後はもうちょっとだ。油断する訳にはいかないが、ゴールが見えたのはありがたい。
シルクがやってくるまで体がもてばそれでいい。最悪、腕が折れようが構わない。
死んでさえいなければ、シルクならば治療できるのだから。今いちばん大事なのは、子ども達を何が何でも守ること。
だから、もう出し惜しみなど必要ない。命を燃やして、最後まで出し尽くすだけだ。
「エルザさん! 話は聞いたな!? あともうちょっとだ! 頑張ってくれ!」
「お兄ちゃん! がんばって!」
「リオンお兄ちゃん……!」
「私達のことは心配しないでください! なんとか耐えてみせますから!」
エルザさんの言葉に甘える訳にはいかない。基本的に、みんな戦えないんだから。
無理をさせれば、犠牲が出てしまう。ナイフでも持って攻撃してくれるだけで、俺は楽ができるだろうさ。
いま目の前にいるモンスターたちは、ちょっとしたことで倒れて消えるのだからな。
それでも、子ども達の安全には代えられない。俺の負担は、シルクの回復魔法で治せる程度。
今の状況を考えれば、多少の無理をしてでも耐えるべき場面だ。
子ども達に不安を与えれば、きっとじっとしていられないだろう。だから、余裕があるフリをしないと。
全身が強く痛むが、そんなものは無いのだと思え。簡単に勝てる相手だと、子ども達に信じてもらうんだ。
「サクラ! まだやれるよな!」
「当たり前でしょ! あたしはあと何時間だって楽勝だわ!」
頼りになることだ。声色からすると、本当に楽勝なのだろう。
体力や魔力は問題なくとも、防衛戦という状況に疲れているかもしれないと考えていた。だが、大丈夫らしい。
本当にサクラは強くなった。明らかに、俺を上回っている。
悔しさはあるが、今はありがたい。サクラがいなければ、誰かに犠牲が出ていたはずだ。
俺も負けていられない。あと少し耐えるだけで、シルクが助けに来てくれるんだ。
ここで頑張らないで、いつ頑張るんだ。どれほど苦しかろうが、あと少し耐えるだけなんだから。
エンドオブティアーズを伸ばして突き、ウインドで加速して斬りかかり、なんとか子ども達を守っていく。
あと少しだと分かっていても、ウインドで無理やり加速する負担には、心が折れそうだ。
でも、俺の苦しみ程度でみんなが守れるのなら、間違いなく安い対価だから。
「この程度で、俺達が負けるとでも思ったか! 俺とサクラがいて、勝てないわけがないんだ!」
自分を鼓舞するための言葉だが、子ども達にも響いたようだ。声を上げて応援してくれている。
本当に嬉しい。みんなの応援は、苦しいだけの戦いに喜びを与えてくれる。
そんな希望が生まれたころ、モンスターの数が増えだした。もしかしたら、最後のひと勝負なのかもしれない。
モンスターを簡単に増やせるのなら、もっと早くに子ども達に犠牲を出せたはずだからな。
俺としては、相手もそろそろ限界なんじゃないかと思える。
だが、俺も厳しい。筋を痛めているような気がする。動くから問題はないが。仮に動かなかったところで、ウインドで動かせばいいだけだ。
「リオン、行くわよ! こんなモンスターなんかに、子ども達を殺させるもんですか!」
「あとちょっとだよ、リオンちゃん! もうちょっとだけ頑張って!」
「任せておけ! 絶対に、誰も傷つけさせはしない!」
口では気合い十分な俺だが、ハッキリ言って状況が悪い。全身が痛くて、集中が切れそうになっている。
それでも、みんなを不安にさせる訳にはいかないからな。あとちょっとだというのなら、なおのこと。
エンドオブティアーズの剣で、全力で攻撃を仕掛けていく。それでも、一気に大勢を巻き込めないのがつらい。
剣を長く伸ばして薙ぎ払えば、建物に大きなダメージが加わる。結果として、建物は崩壊する。
だから、子ども達を守るためにも、俺はウインドでの加速に頼るしか無いんだ。
サクラだって、上級魔法を放てば一掃できる相手に、初級魔法を細かく撃って立ち回っている。
なのに、俺がサクラの努力を台無しにする訳にはいかないよな。それに、子ども達を守ることが一番大事なんだ。モンスターを倒すことじゃない。
分かってはいるが、腕も足も背中も、何もかもが痛い。全力で突風をぶつけて、加速だけでなく方向転換までしているからな。
だが、今の苦しみに耐えるだけで子ども達が助かるのなら、耐えるしか無いだろう。
アザのようなものまでできている気がするが、この程度で死にはしないのだから。
ただ、本当に苦しい。痛い。どうにかなってしまいそうだと思うほどに。これなら、事前にもっと練習しておけばよかった。
シャーナさんには、負担があると言われていたのだから。何らかの形で軽減できないか、あるいはごまかせないか。いろいろと検証しておけば。
だが、いま後悔しても仕方がない。眼の前の敵に集中することが、子ども達のためだ。
ここでみんなを守りきれなかったら、俺の苦しみにだって意味はなくなるのだから。
「まだまだ終わりはしないぞ! 絶対に、何があっても、みんなを守る!」
「当たり前よね! ディヴァリアだって、ここの子たちは大切でしょうよ!」
それはどうだろうか。ノエルとエルザさんが大切なのは、俺にも分かる。
だとしても、他の子供達まで大事に思っているのかは怪しいんじゃないか?
まあ、いまここで言って良いことではないから、黙っているつもりではあるが。
それよりも、モンスターを倒さないと。徐々にラインを押されている。後は時間との勝負だ。
シルクが間に合うか、俺達が限界を迎えるか。どちらの方が早いかの。
だが、この勝負で負ける訳にはいかない。たとえ腕を、脚を折ることになったとしても、絶対に守り切ってみせる。
必死でエンドオブティアーズを手に駆け回っていくが、本当に限界が近い。
ラインを割られそうという意味でも、俺の体力や精神という意味でも。
じわじわと追い詰められていく感覚が焦りを生むが、変な行動をしたら余計に窮地に陥るだけだ。
落ち着け。冷静になれ。今できることに全力を尽くすことだけが、最善の道だ。
一発逆転の手段なんて存在しない。だから、的確に敵を倒していくんだ。
それでも、子ども達の目と鼻の先と言えるくらいまで、モンスターは近づいていく。
後どれだけでシルクはやってくる。もう、時間はないぞ。
「きゃーっ!」
近くに敵が現れて、冷静さを失ったらしい子供が走っている。
そして、その子供に向けてモンスターは攻撃をしようとしている。
エンドオブティアーズの剣を伸ばすことはできない。俺から見て、手前に子供がいるから。
なら、やれることはひとつだけ!
俺は全力で子供のもとへと駆け寄り、盾でかばう。
なんとか子供への攻撃を防ぐことができた。だが、いま無理に加速したせいで、足が折れてしまった。
衝撃に押し倒されて、立ち上がることすらできない。
なんとかエンドオブティアーズの剣でモンスターは貫けたが、まだ敵は近寄ってきている。
幸い、モンスターは俺の方によってきている。なら、子ども達はいますぐ犠牲にならない。
そう考えていた俺に、後ろから声が聞こえる。
「お兄ちゃん!」
エリスの声だ。そして、俺に向けて攻撃しようとしてくるモンスターに、エリスは立ちはだかっていく。
俺は、エリスに向けて攻撃を仕掛けるモンスターを、ただ見ていることしかできなかった。
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