上 下
85 / 182
3章 歪みゆくリオン

84話 敵の正体

しおりを挟む
 さて、敵が送り込まれてくる転移装置のもとまでたどり着いた。ここからどうすべきだろうか。
 この装置を使うのならば、敵の拠点に進むことになる。だから、ある程度の戦力はほしい。
 転移装置を壊すのならば、根本は残ったままだ。だが、今回の事件だけは終わる。

「ルミリエ、俺達の戦力で、この先の敵をどうにかできそうか?」

「大丈夫だと思うけど、フェミルちゃんは連れて行かないほうがいいかな」

「なら、ここでフェミルを守る人間も必要か。ノエル、ユリア、頼めるか?」

「分かったよ、リオンお兄ちゃん。みんなで待ってるね」

「本当はリオンさんに着いていきたいんですけどねっ。仕方ないです」

 これで大丈夫だろうか。気になるところだ。ノエルも戦いには慣れていないんだよな。
 とはいえ、ここで戦力を削って、本命の敵を倒せるかどうか。どうしたものか。

「それなら、サクラちゃんもここでみんなを守ってもらおうかな。たぶん、リオンちゃんとシルクちゃんで十分だと思うよ」

 ミナの判断なのだろうから、信頼してもいいか。
 それにしても、俺とシルクで戦うことになるなんてな。ずっと想像していなかった。
 ルミリエにサポートしてもらったクーデターの件といい、俺はみんなに戦わせてばかりだな。情けないことだ。

「なら、仕方ないわね。リオン、しっかりやりなさいよ」

「また恩が増えちゃったか。リオン、武運を祈るわ。女神アルフィラよ、お願いします」

 今のメルキオール学園にもまだ敵はいる以上、ここに居るから安心な訳ではない。
 それでも、敵の本拠地に向かうよりはマシだろうからな。みんなとまた無事に会えることを祈って、この先に進むだけだ。

 さて、どんな敵が待っているのだろうな。誰が相手にしろ、手加減はできそうにないが。
 メルキオール学園の生徒を殺そうなんて、ろくなやつだとは思えない。
 だから、遠慮なく始末をつけさせてもらおう。今のところは、犠牲者は見つかっていないとはいえ。

「じゃあ、行くか。シルク、着いてきてくれ」

「当然です。どこまでも、お供しますから」

「私とミナちゃんもサポートするね。しっかりと敵の情報を伝えるよ」

 ディヴァリアを除いたいつものメンバーになりそうだな。
 このメンバーで日常を過ごすのなら、何よりも嬉しいのだが。
 どうして戦いばかりが襲いかかってくるのだろうか。嫌になってくるよ。
 それでも、生きるためには戦い続けるしかない。悲しいことだがな。

「3人なら、安心して背中を預けられるな。よし、行こうか」

 そして俺とシルクは転移装置の先へと進む。そこは教会らしき場所で、まだまだ敵が居た。
 早速俺はエンドオブティアーズの剣を伸ばして攻撃する。そのまま大勢の敵が死んでいき、だいぶ道がひらけた。
 先は長そうだが、まずは第一歩だ。目標である親玉にたどり着くまで、しっかりと体力を残しておかないとな。

「リオン君、私も手伝います。一気に片付けましょう」

 シルクはアンガーオブドゥームの結界を大きく横に張り、あたり一面の敵を上下に分割した。
 とても恐ろしい技だ。ここまで凶悪だと、なかなか対処は難しそうだ。
 シルクが敵になることはないだろうが、どうしても対策を考えたくなるな。
 結局のところ、心奏具を使う余裕を持たせないというところに落ち着くのだろうが。
 真正面から戦って、俺はシルクに勝てるのか? そんな疑問が浮かぶほど、強力だ。

 まあ、結界を壊すことができれば、しばらくは再び発動できない。つまり、どうにかエンドオブティアーズで結界を抜くことが勝負になるだろう。
 いや、今考えるべきことではないな。それよりも、ここにいる敵をどう始末していくかだ。

 とはいえ、目の前にいる敵は弱いんだよな。つい油断しそうになってしまう程度には。
 だが、所詮は金で集められた素人だ。黒幕がどれほどの存在か分からない以上、気を抜く訳にはいかない。
 それに、いくら雑魚だとしても、シルクの命もかかっているのだから。しっかりやらないとな。

「ありがとう、シルク。無理はしていないよな?」

「否定します。この程度、どうということはありません。私にとって大切なものは、ハッキリしているのですから」

「後で苦しくなったりしたら、言ってくれよ。解決できなくても、言葉にするだけでも楽になる時はあるんだからな」

「同感です。だからこそ、リオン君はもっと言葉にすることを覚えるべきなんです」

「そうだよ。リオンちゃんは、ちょっと隠しすぎ。コソコソしすぎ。反省して?」

「す、すまん……」

 シルクのことを心配しただけなのに、こちらが責められてしまった。そんなに抱え込んでいるように見えるだろうか。
 まあ、今反省すべきことではない。敵を皆殺しにした後で、ゆっくりと考えさせてもらおうじゃないか。

 それからも、エンドオブティアーズの剣を駆使して刺し貫き、切り裂き、敵を駆除していく。
 やはり、雑兵相手なら心奏具の力は絶大だな。ほとんど抵抗できないまま、面白いように敵が死んでいく。
 なんだか楽しくなってしまいそうなくらいだ。だが、人殺しを楽しむ訳にはいかないよな。

「まったく、殺しても殺してもいてきて、面倒なことだ。ゴキブリか何かか?」

「もう、リオンちゃん! 女の子の前で、その虫の話をしないで! デリカシーが無いよ!」

「同意します。少し想像してしまいましたよ」

「わ、悪い……」

 確かに失敗だった。とはいえ、シルクの動きは乱れていないから、大きな問題ではないな。
 これがもっと余計な発言だったならば、シルクの集中を乱していた可能性がある。だから、しっかりとした反省が必要ではあるが。

 それにしても、シルクは初めての戦いの割に落ち着いているな。本人の言うように、どうということはないのかもしれない。
 だとしても、後でシルクの様子は確認するが。脳内物質でごまかされているだけならば、後が大変だろうから。

 シルクの様子を横目に見ながら、まだまだ俺は敵を片付けていく。
 いいかげん、敵にもおびえが出てきたようで、逃げ出そうとする相手もいる。
 交戦するつもりの相手と押し合って、いい感じに混乱してくれた。
 そのスキをついて、今までよりも効率的に敵を殺していける。ありがたいことだ。

 所詮、金のために人を殺そうとする奴らだ。死んだとしても心は傷まないな。
 それよりも、余計なところで被害が増えないように、ここでしっかりと処分しておいた方がいいかもしれない。
 もしディヴァリアの孤児院にでも目をつけられたらと思うと、さっさと殺してしまいたいくらいだ。
 なにせ、あの孤児院は金があると思われているからな。狙うやつが居てもおかしくはない。

「さあ、リオンちゃん。あとちょっとだよ」

「理解しました。この先に黒幕が居るのですね」

 ルミリエの言葉で、俺は改めて気合を入れる。ここからが本番だ。なにせ、今みたいな大きな事件を計画できるのだから、警戒が必要な相手だろう。

 そして俺は敵を殺しながら進んでいき、教会の広間まで出る。
 大勢に対して語りかけている人物が居て、ときの声のようなものがあがっている。

「さあ、メルキオール学園の生徒を誰か殺せば、一生遊んで暮らせるだけのお金が手に入りますよ! 我こそはと思うものは、全力でこの先に向かうのです!」

 そんな演説をしているものが居た。
 聞き覚えのある声に、まさかと思いながら演説の中心を見る。

 その先に居たのは、エギルだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

大前野 誠也
ファンタジー
ー  子供頃から体の弱かった主人公は、ある日突然クラスメイトたちと異世界に召喚されてしまう。  しかし主人公はその召喚の衝撃に耐えきれず絶命してしまった。  異世界人は世界を渡る時にスキルという力を授かるのだが、主人公のクラスメイトである灰田亜紀のスキルは死者をアンデッドに変えてしまうスキルだった。  そのスキルの力で主人公はアンデッドとして蘇ったのだが、灰田亜紀ともども追放されてしまう。  追放された森で2人がであったのは――

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...