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9章 価値ある戦い

316話 ミーア・ブランドル・レプラコーンの未来

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 私は、王女としてレックス君を支えているわ。今回だって、私が敵の情報を伝えたから、すぐにレックス君が対応できたんだから。

 とはいえ、それだけでもないのだけれど。どうしても、私には敵が多い。その始末という意味でもあるわ。私が殺すのは簡単だけれど、それではダメだもの。

 私は、みんなの太陽じゃないといけないわ。王女というのは、そういうものよ。だからこそ、あまり手を汚せないの。悲しいことではあるけれど、仕方のない現実よね。

 もちろん、隠れて殺すのは有効なんだけどね。とはいえ、私の光魔法は目立つから、こっそり殺すには向かないわ。せっかく戦力を持っているのに、残念よね。

 それもあって、レックス君を狙う敵がいるというのは、都合が良いの。なんて残酷な計算なのかしらね。レックス君が好きになった私は、もう居ないのかも。

 結局、今回だって、レックス君を狙う敵を出さないように動くことはなかったわ。もちろん、レックス君に傷をつけられる戦力じゃないことを分かっているからではあるのだけれど。

 レックス君が死んでしまうのなら、そんな世界に何の意味もないもの。だからこそ、打てる手は打っているのよ。レックス君が、少しでも安全に戦えるようにね。

「レックス君が狙われているのは、とても悲しいわ」

 私にとっては、大好きな人だもの。そんな人が命を狙われているのは、いい気分ではないわ。それでも、どうやって利用するかを考えている私もいる。

 結局のところ、私も冷たい理屈で生きている人間だということよね。これまでに見てきた人たちと、変わらないのかもしれないわ。でも、それでいいと思う部分もあるの。

 だって、ただ善人でいるだけでは、幸せはやってこない。レックス君を見ていて、強く感じることよ。そんなレックス君と一緒に幸せになるためにも、私が策を練らなくちゃいけないの。

 そう考えると、ちょうど良い機会ではあるのよね。レックス君には、悪いと思うけれど。

「でも、良い事はたくさんあったわ。レックス君といつでも話せるなんて、とっても素敵よね!」

 その魔法を作ってもらえただけで、十分な利益だと思うわ。レックス君は、傷ついているのでしょうけれど。

 私は、大切な人ですら策の材料として使う存在よ。レックス君とは大違いよね。でも、そんな私は嫌いじゃないの。だって、レックス君との幸せな未来に、みんなが笑顔で居られる世界に、一歩ずつでも近づけている感覚があるもの。

 きっと、レックス君は私の本性を知っても好きでいてくれるわ。そんな確信があるからよね。ごめんね、レックス君。私は、悪い子なの。

 でもね、その悪い子だからこそ、レックス君に足りないものを補えるとも思うの。レックス君には、悪意も計略も足りないから。その分は、私が実行する。そうやって助け合うのが、友達ってものよね。だから、ずっと仲良くしていたいわ。

「レックス君と会う機会も、これまでより増やせるわ!」

 いつでも話せるというだけで、予定を合わせるのも簡単になるもの。とっても良い魔法を、作ってもらえたものだわ。レックス君も、気軽に知り合いと話せて嬉しいと思うの。

 これこそが、お互いに得をする取引というものよね。レックス君から、いつか聞いたような言葉よ。やっぱり、私たちはお似合いだと思うの。

 レックス君に近づく脅威を、協力して振り払う。物語の主役とヒロインみたいなものよね。

「なんて、レックス君を危険視する人を増やしたのも、私なんだけどね」

 王家に反逆した父を殺した。それって、私の味方であると示したことではあるわ。でも、父ですら切り捨てられる人間だという証でもあるのよ。

 そして、レックス君は闇魔法使い。強いことは、情報を集めていなくても理解できるもの。危険だと思われるのは、当然のことよね。だから、今回も狙われた。

 だけど、私の策通りでもあるの。レックス君に敵対した人がどうなるのか、よく分かるはずよ。それに、私とレックス君が裏で共謀する道筋を作れたもの。

 なら、私がレックス君を嫌っているフリだって、できるわよね。表向きは仲良くしているけれど、本当は危険視しているんだって。というか、今もそうやって動いているもの。

「そうすれば、レックス君の力をみんなに教えられるもの! 犠牲者が強ければ強いほど、ね」

 つまり、レックス君に敵対することがどれほど危険かを思い知らせることができる。そして、その力を私が制御できる利益もね。

 私としては、レックス君を強く縛ろうとは考えていないわ。というより、縛る意味がないもの。レックス君は、自分から誰かに攻撃を仕掛けようとする人じゃないもの。でも、対外的には違うものね。

 だからこそ、私の愛に触れて優しくなったレックス君という物語が作れるのよ。

「私に、王家を継ぐものにふさわしい存在だって、きっと知ることになるわ!」

 そうして、誰からも祝福される結婚をするの。祝福しない人は、みんなじゃないわ。それだけは、確かな気持ちよね。

 私たちは幸せな物語を紡ぐ。その未来を邪魔する人たちは、いらないわ。

 だからこそ、しっかりとレックス君の強さを知らしめないとね。

「フェリシアさんには、先手を打たれてしまったもの。それを挽回しないと、ね」

 見事な策だったわ。私も感心しちゃうくらいには。フェリシアさんが側室なのは、構わない。レックス君だって、みんなが大好きなんでしょうから。

 でも、私の伴侶として、レックス君が国王になる未来は譲らないわ。ただ、きっと実質的な政務は私が実行するのでしょうけれど。

 だから、立ち止まってなんかいられないわ。王族としてできることは、なんだってするのよ。

「レックス君と私が結ばれるために、まだまだ手を打たないといけないわ!」

 打てる手を全部打って、それからが始まりよね。私とレックス君が結ばれた先でも、私たちの物語は続くんだもの。結ばれて終わりじゃないんだから、やることはいくらでもあるわ。

 とはいえ、未来のために手を打つだけじゃダメよ。まずは、足元を固めないとね。

「そうね。まずは今回の黒幕を、しっかりと殺してもらわないとね」

 レックス君が敵を打ち破る。そこが第一歩だわ。黒幕の正体なんて、もう当たりが付いているけれど。でも、どうせならレックス君の手柄もあった方がいいわよね。

 もちろん、それだけで終わらせないのが、戦略ってものよ。

「私とレックス君の結婚に反対する人を、減らしてもらうわ!」

 一度に複数の目的を達成してこそ、真の策というものだわ。やっぱり、私には戦術の才能があったみたいよね。

 でも、ちょうど良いわよね。レックス君には足りないものだもの。お互いに補えてこそ、素晴らしい夫婦ってものよね。

 そうなるためにも、まずはしっかりと反乱の意図を持った人を殺してもらわないとね。なんて、証拠は捏造するんだけど。

「その功績を、私と結ばれるために利用するの。ふふっ、楽しみだわ」

 その先の未来で、私たちが結ばれる。まだまだ遠いけれど、確実に近づくのよ。楽しみだわ。

「リーナちゃんだって、レックス君とすぐに会えたら嬉しいわよね」

 私達が夫婦になれば、妹であるリーナちゃんは、いつでもレックス君に会えるわよ。それって、とても素晴らしいことよね。

 家族みんなで仲良くするためにも、必ず叶えないとね。

「私達の未来は、とっても素敵なものになるの。それだけは、決まっているわ」

 そのためには、どんな手でも使うわ。私達の未来に必要ない人は、どれだけだって地獄に送るわ。そうして、初めて未来につながるのよ。

「ありがとう、レックス君。あなたのおかげで、今がとっても幸せなの」

 レックス君と出会えてからの私は、いろんな物を手に入れられたわ。信頼できる友人、大切な妹、大好きな人。そして、本当の私。

 その全部が、私の幸福につながっているの。レックス君への感謝は、一生忘れないわ。

「だから、あなたを必ず幸せにしてみせるわ。待っていてちょうだいね、レックス君」

 私達の結婚は、その始まりよ。だから、楽しみにしていてね。

 お願いよ、レックス君。
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