上 下
254 / 392
7章 戦いの道

253話 フェリシア・ルヴィン・ヴァイオレットの流儀

しおりを挟む
 わたくしは、ヴァイオレット家の当主となりましたわ。ですが、それは始まりでしかありません。わたくしとレックスさんが、対等となるための道のね。

 ですから、その先に何をするべきなのか、形にしないといけません。だって、わたくしの目標は、まだずっと先にあるのですから。

「ヴァイオレット家をわたくしの支配下に置いた。それだけでは、まだ何も始まりませんわよね」

 結局のところ、当主という立場など、単なる道具でしかないのです。わたくしの望みを叶えるための。ですから、すぐに次に進みたいところでしたわ。

 わたくしに必要なのは、まずは力。わたくしの支配を万全とするための。レックスさんの力になるための。

「わたくしは、レックスさんのパートナー。それにふさわしい自分でいる必要があるのです」

 レックスさんに助けられるだけの人間でなど、いるつもりはありませんもの。わたくしは、お互いに支え合うために、前に進むのです。

 単に助けられておいて、レックスさんをからかうのは問題ですもの。わたくしに感謝されているからこそ、意味があるのですから。わたくしを大事にするレックスさんの感情こそが、からかいに色を付けるのです。

 ですから、立ち止まるなど、あり得ません。わたくしは、レックスさんを超える何かを持っている必要があるのです。そうでなくては、パートナー足りえませんもの。

 レックスさんの感謝を受けることだって、心地いいのです。わたくしは、レックスさんを大切に想っているのですから。彼の幸福を望む者なのですから。

 もちろん、レックスさんだって、わたくしの幸福を願ってくれています。だからこそ、信じているし、助けたいと思うのです。愛しているのです。

 だからこそ、わたくしには必要なものがある。レックスさんを支えるためのなにか。そうですわよね。

「単純に力で追いつくのは、現実的ではありませんわ」

 レックスさんの才能は、わたくしが成長するほどに、より強く感じます。ハッキリ言って、異常と言っていいでしょう。

 誰が、学生のうちにフィリス・アクエリアスを倒せることになる自分を想像するでしょうか。きっと、魔法というものを知らぬ幼子くらいのものでしょう。そんな空想を、レックスさんは達成してみせた。驚くべきこと。そんな軽い言葉では言い表せない偉業なのです。

 だからこそ、魔法で競うことには限界があるのです。わたくしは、あくまで一属性モノデカ。その限界は、きっと闇魔法の限界よりも、遥か手前にあるのでしょう。

 言い訳だと言う方も居るでしょう。ですが、これは単なる現実。わたくしが、必ず向き合うべきもの。それを理解せずに突き進んだところで、当然のように無様をさらすだけなのです。

「もちろん、研鑽を止めるつもりはありませんけれど」

 わたくしは、一歩一歩確かに歩んできた。それを止めるつもりは、ありません。いくら才能で劣っているからといって、その限界に達しないのならば怠慢でしかない。わたくしの誇りは、堕落を許すものではありませんわ。

 それでも、足りないものもある。どうにかして補わないことには、何もつかめないのでしょう。

「レックスさんと対等になるには、別の力を身につける必要があるのです」

 魔法だけなら、他の人の方が優れている。特に、フィリスは。その現実を認めないことには、始まりません。ですが、フィリスは持っていないものを、わたくしは持っている。それを利用するのは、当然の道ですわよね。

 つまり、貴族の血と、自らが収める領。それをどう扱うかに、わたくしの真価が問われるのです。

「なら、話は単純ですわよね。ヴァイオレット家の勢力を広げる。それが近道でしょう」

 そのためには、他の家から領地を奪い取る。あるいは、他の家を支配下に置く。その道を進むことになるでしょう。幸い、わたくしは強い。単なる魔法使い程度なら、軽く殺せる程度には。

 だからこそ、力を利用するのが、手っ取り早い手段でしょう。わたくしの流儀にも、合っていますわよね。

「とはいえ、理由もなく攻め込んでしまえば、レックスさんは悲しみますわよね」

 レックスさんは、争いを嫌う方ですもの。わたくしが戦火を広めたと聞けば、苦しむのでしょう。嘆くのでしょう。それでも、わたくしから離れられないのでしょう。

 その道を選ぶことも、きっと楽しいのだと思います。レックスさんを苦しめながら、わたくしの手で慰めるのは。

 ですが、わたくしは誓ったのです。レックスさんのパートナーとなると。それなら、彼の意志を尊重することだって、大切ですわよね。

「それなら、相手の方から手出しをさせればよいのです」

 わたくしが自ら望んで戦いに挑むのならば、レックスさんは悲しむ。ですが、自衛でまで悲哀を抱く方ではありませんから。その言い訳を用意してしまえば、彼だって乗り気になる可能性はありますわ。

 やはり、わたくしこそがふさわしいのです。レックスさんの一番にはね。だって、こんなに理解できているんですもの。彼の心の奥底まで。何を望むのか、何を嫌がるのか。そのすべてを。

 そのわたくしの感覚は、レックスさんはわたくしが襲われている事実を重視すると告げているのです。

「ええ、良い案ですわね。これなら、レックスさんと会うための口実にもなりますもの」

 困ったことがあるから、手伝ってほしい。そういえば、まず断らないでしょう。その程度には、大切にされていますもの。

 だから、レックスさんの手を借りる必要があると思わせる程度の強敵を用意するのが、理想ではありますわね。

「そうと決まれば、どの家を狙うべきか……。やはり、挑発に乗ってくる相手、ですわよね」

 適切な理性を持った相手を選んでしまえば、時間がかかりますもの。適度に愚かで、自らの実力を過信している。そんな人を選ぶのは、当然の判断ですわよ。

「ネイビー家は、わたくしを軽んじている。ペール家は、自領の拡大を狙っている」

 わたくしを軽く見るのなら、別に構いません。ただ、攻撃に移るのなら、反撃されても仕方のないことですわよね?

 そうと決めたからには、あらゆる手段を用いて挑発していきましょう。流言飛語、兵士の演習、賊徒の誘導。それこそ、何でも。

 きっと、我慢できないですわよね。そして、弱い相手を葬ろうとしますわよね。なんて、都合のいい相手なのでしょうか。

「そしてシアン家は、あのエトランゼが居る。方針は、明らかですわね」

 自らの力を示すために、強者を打ち破ろうとする。なら、わたくしが力を示せば、それだけでいい。単純なこと。そして、とても簡単なことですわ。

「よし、目標は決まりましたわ。早速、行動に移りましょうか」

 実現のために、人員を選ぶところから。そして、相手の動きを調査することも。レックスさんに、真実味を感じさせるようにね。

 きっと、誰もがわたくしを敵だと思うでしょう。ですが、突き進むだけですわ。

「わたくしは、全てをねじ伏せるまで。それが、わたくしの流儀ですもの」

 そう。力なきものには、選択する自由なんてない。わたくしは、わたくしの力の許す範囲で、最高の道を選ぶまで。わたくしより弱いのなら、その儚さを恨めばよいのです。だって、私は単なる一属性モノデカ。それに負けるなんて、研鑽が足りないだけですもの。

「レックスさん、待っていてくださいね」

 わたくし達の未来は、すぐそばにありますからね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

The Outsider ~規矩行い尽くすべからず~

藤原丹後
ファンタジー
子供の頃から「お前は違う」と周囲から言われ続けてきた壮年後期男性の物語。 序盤は現代ダンジョンものです。 作中日本の元号順は、明治・大正・光文・平成・令和となっています。 現実世界の地球と政党や法制度や歴史が必ずしも同一とは限りません。 ダンジョン騒動の為、ロシアはウクライナ侵略戦争をはじめていませんし、 日本は万国郵便条約を改めていない等、現実の世界とは少し異なる設定となっています。 特に、現実日本に存在する政党と、作中日本で描かれる政党は、全く関係がありません。 仮に何らかの政党を想起させたのであれば、それは作者の力が足りなかったことの証左であり、読者様には深く陳謝いたします。 カクヨム様、 小説家になろう様にても公開しております。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...