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1章 レックスの道
6話 魔法を覚えて
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ウェスをメイドにしてから、しばらく経った。魔法の研究をしながら、アリアやウェスと仲を深める日々は楽しい。だが、刺激が不足していたのも事実だった。ほんの少し、退屈だったんだよな。
「レックス様、お父上がお呼びです」
「ご、ご主人さま、今日はわたしが連れていきますねっ」
何か、良いことがあれば嬉しい。ブラック家だから期待薄だが。そう考えながら、ウェスについて行った。
父は外で待っており、隣にエルフを連れてきていた。青髪金目で、肩のあたりでまっすぐ切られた髪を持つ女。目立っている長い耳もある。もしかしたら。外見の特徴で、俺は期待を抑えられなくなっていた。
「よく来たな、レックス。お前が闇魔法に目覚めた事実は、とてもめでたいことだ。お前の才能を伸ばすために、最高の教師を連れてきたぞ。あのフィリス・アクエリアスだ」
フィリス・アクエリアス。『デスティニーブラッド』で最強クラスの魔法使いだ。主人公であるジュリオが無属性であることに興味を持って、師として色々と教えていた存在でもある。特に印象深いのが、魔物の軍勢を一度の魔法で皆殺しにしていたことだな。五曜超魔と呼ばれていて、その名にふさわしい存在感があった。
ありがたい。本当にありがたい。父が貴族であることに、心から感謝したい気分だ。まさか、こんなに早く最高の師匠を手に入れられるなんてな。まあ、ブラック家のことを考えれば、感謝ばかりとはいかないだろうが。
「本当に有名人ですね。ありがとうございます、父上」
「……質問。あなたは闇属性に目覚めたと聞いた。本当?」
とても平坦な声だ。原作のイメージ通りで、少し興奮する。完全に原作キャラなんだよな。前世ではファンだった。今でも、好感度は高い。まあ、ブラック家にも原作キャラは居るんだけどな。ちょっと、悪役と味方キャラでは違うよな。
「なら、見せますよ。これが、闇の魔力です」
黒い魔力を、手のひらに集めていく。これが、闇魔法であることの最も簡単な証明だ。
「……本物。確かに闇属性。なら、あなたの教師になることに、異存はない」
闇魔法使いだから、俺に興味を持ったのだろうか。まあ、何でも良い。魔法をもっと使いこなせるようになるのなら、それで十分だ。
父は去っていき、俺とフィリスの2人が残された。何から会話を始めたものか、少し悩むな。
「どうして、エルフからすればつまらない人間に教えようと思ったんだ?」
「……単純。闇属性は、ほとんど見たことがない。エルフの長い人生の中でも」
「なら、存分に見せてやるよ。俺が最強だってところをな」
「……楽しみ。魔法を見ることは、知ることは、どれだけ経験しても良い」
なるほどな。原作では、エルフは闇属性を使えなかった。光と無も。だから、興味深いのだろう。ちょうどいいな。闇魔法を使えるだけで、最高峰の魔法使いに教われるのだから。
「俺は特別なんだ。お前だって、簡単に超えてみせるさ」
「……期待。私は五属性。それを超える魔法なら、どれだけでも見たい」
五属性。火、水、風、土、雷の五属性を同時に扱える、最高峰の魔法使いの証。原作では、数えるほどしかいなかった存在だ。
それにしても、フィリスは興味津々といった様子だな。無表情にしか見えないのに、声も棒読みなのに、よく伝わってくる。分かりやすいことだ。
「闇魔法が複数属性を重ねられないと、軽んじているのか?」
「……否定。闇属性は、特別。重ねられないから特別なのか、特別だから重ねられないのか。興味は尽きない」
原作では、光、闇、無の属性は他の属性と同時には目覚めなかった。だから、その三属性は特別扱いされていた。光は主に王族が、闇は主に悪役が、無は主人公の特権だったんだ。どれも、作中で重要な働きを見せていた。
フィリスが闇属性に興味を持ってくれたのも、特別性のおかげ。そう思うと、俺が闇属性に目覚めたことが、より幸運だと思えるな。ウェスの右腕を治せたのは、闇魔法のおかげ。それだけでも、十分だったんだが。
「まずは、俺の魔法を見せてやる。これが、闇の衣だ」
以前開発した、俺の体を闇の魔力で包む防御技を見せていく。フィリスは感心した様子だ。少し、気分が良くなるな。
「……なるほど。闇の魔力で体を守る。単純だけど、強力」
「どれだけ耐久性があるのか、試したかったところだ。最終的には、お前の全力に耐えてみせる」
フィリスは俺の言葉を受けて、闇の衣に向けて魔法を放ってくる。最初は弱く、だんだん強く。それでも、俺の防御はびくともしない。最強格の魔法使いの攻撃を受けても耐えられる。最高の気分だ。
「……驚嘆。これほど強力な防御なら、それは強いと言われる。なら、受けてみて。私の、五曜剣を」
五曜剣。原作での、フィリスの必殺技だ。五属性を収束した、魔力の刃。切れ味も最高だが、意図的に制御を失わせることで、大爆発を起こせる魔法でもある。だが、今までの手応えからすると、受けられるという自信がある。
まずは、フィリスは刃をそのまま俺の防御に向けて放つ。これは楽に受けられた。もう一度放たれる。今度は、俺に直撃する直前に、制御を手放したようだ。だが、俺の考えていた爆発と違い、指向性を持っている。俺にだけ向けられた、強力な爆発。
それでも、気合を入れて防御をすれば、なんとか耐えることができた。まあ、俺が死なない程度には手加減されていたのだろうが。
正直に言えば、結構ギリギリだった。だが、余裕なふりをする。普段から演技をしていないと、崩れてしまいそうな気がするからな。
「どうだ、受けきったぞ。お前の切り札より、俺の方が強い」
「……同意。攻撃は、まだ分からない。それでも、あなたは天才」
「じゃあ、俺の攻撃を見せてやるよ!」
さっき闇の衣で五曜剣を受けたことで、どういう構成の魔法か分かった。それを参考に、魔力で刃を生み出していく。相手の防御に使われる魔力を侵食するイメージと、収束した魔力を解放させるイメージとで。
一度放てば、キレイな刃として飛んでいった。フィリスが魔法で的を作ると、そこに向けてもう一度撃つ。魔力を突き抜ける感覚があって、これなら魔法による防御を防げるだろうという感覚があった。
そして、もう一度放っていく。今度は、爆発を真似した形で。狙った方向に爆発させることができて、フィリスの作った的は跡形も残っていなかった。
おそらく、今の俺にできる最高の攻撃だ。そして、フィリスを超える可能性が十分にあるものだ。名付けて、闇の刃だな。
「……感激。私の五曜剣を参考にした?」
「そうだな。この技で、俺はお前を完全に超えてやる」
「……楽しみ。レックス。あなたがどれほど強くなるのか、この目で確かめる」
表情も声も変わらないのに、目には力がこもっているのが一目で分かった。やはり、闇魔法に興味が尽きないのだろう。つまり、これからもフィリスに教えを受けることができる。最高だな。
それからもしばらく訓練を続けていると、メイドであるアリアたちが近づいてくる感覚があった。食事の用意だろうな。
「お食事ですよ、レックス様」
「ご、ご主人さまの師匠も食べてください」
「……レックスの魔力は、もう少し細かく制御できる」
フィリスは、アリアとウェスの言葉に全く反応していなかった。いくら闇魔法が面白いとは言っても、極端すぎる。周りが目に入っていないのか?
「おい、食事だぞ、フィリス」
言葉だけでは反応が帰ってこず、仕方なく肩を揺する。そうすることで、ようやくアリアとウェスを認識したみたいだ。俺は呆れたが、フィリスが本気である証でもある。感情としては、嬉しさもあった。
「……仕方ない。まずはご飯」
それから、フィリスたちと食事を進めていった。夕飯の時間まで、再び訓練をして、家族との食事に移る。
「流石は我が息子。フィリスですら驚嘆するほどの魔法が使えるらしいじゃないか」
「レックスちゃんの成長は素晴らしいですね。母として、誇りに思います」
「だからって、調子に乗らないことね」
「まあまあ、カミラ。弟の活躍を、喜んでやろうじゃないか」
「お兄様、私も魔法が使えるようになりたいな」
「兄さん、流石です。僕も、負けてはいられませんね」
家族での団欒の時間なのだろうが、俺としては心が休まらなかった。アリアやウェスと食べる時間が恋しくなってしまったほどだ。
まあ、それはいい。魔法はある程度形になった。これからも訓練を続けるが、どうせなら剣も覚えたいな。せっかく剣と魔法の世界に生まれたのだから。そんな思いが、俺の中で浮かび上がってきた。
「レックス様、お父上がお呼びです」
「ご、ご主人さま、今日はわたしが連れていきますねっ」
何か、良いことがあれば嬉しい。ブラック家だから期待薄だが。そう考えながら、ウェスについて行った。
父は外で待っており、隣にエルフを連れてきていた。青髪金目で、肩のあたりでまっすぐ切られた髪を持つ女。目立っている長い耳もある。もしかしたら。外見の特徴で、俺は期待を抑えられなくなっていた。
「よく来たな、レックス。お前が闇魔法に目覚めた事実は、とてもめでたいことだ。お前の才能を伸ばすために、最高の教師を連れてきたぞ。あのフィリス・アクエリアスだ」
フィリス・アクエリアス。『デスティニーブラッド』で最強クラスの魔法使いだ。主人公であるジュリオが無属性であることに興味を持って、師として色々と教えていた存在でもある。特に印象深いのが、魔物の軍勢を一度の魔法で皆殺しにしていたことだな。五曜超魔と呼ばれていて、その名にふさわしい存在感があった。
ありがたい。本当にありがたい。父が貴族であることに、心から感謝したい気分だ。まさか、こんなに早く最高の師匠を手に入れられるなんてな。まあ、ブラック家のことを考えれば、感謝ばかりとはいかないだろうが。
「本当に有名人ですね。ありがとうございます、父上」
「……質問。あなたは闇属性に目覚めたと聞いた。本当?」
とても平坦な声だ。原作のイメージ通りで、少し興奮する。完全に原作キャラなんだよな。前世ではファンだった。今でも、好感度は高い。まあ、ブラック家にも原作キャラは居るんだけどな。ちょっと、悪役と味方キャラでは違うよな。
「なら、見せますよ。これが、闇の魔力です」
黒い魔力を、手のひらに集めていく。これが、闇魔法であることの最も簡単な証明だ。
「……本物。確かに闇属性。なら、あなたの教師になることに、異存はない」
闇魔法使いだから、俺に興味を持ったのだろうか。まあ、何でも良い。魔法をもっと使いこなせるようになるのなら、それで十分だ。
父は去っていき、俺とフィリスの2人が残された。何から会話を始めたものか、少し悩むな。
「どうして、エルフからすればつまらない人間に教えようと思ったんだ?」
「……単純。闇属性は、ほとんど見たことがない。エルフの長い人生の中でも」
「なら、存分に見せてやるよ。俺が最強だってところをな」
「……楽しみ。魔法を見ることは、知ることは、どれだけ経験しても良い」
なるほどな。原作では、エルフは闇属性を使えなかった。光と無も。だから、興味深いのだろう。ちょうどいいな。闇魔法を使えるだけで、最高峰の魔法使いに教われるのだから。
「俺は特別なんだ。お前だって、簡単に超えてみせるさ」
「……期待。私は五属性。それを超える魔法なら、どれだけでも見たい」
五属性。火、水、風、土、雷の五属性を同時に扱える、最高峰の魔法使いの証。原作では、数えるほどしかいなかった存在だ。
それにしても、フィリスは興味津々といった様子だな。無表情にしか見えないのに、声も棒読みなのに、よく伝わってくる。分かりやすいことだ。
「闇魔法が複数属性を重ねられないと、軽んじているのか?」
「……否定。闇属性は、特別。重ねられないから特別なのか、特別だから重ねられないのか。興味は尽きない」
原作では、光、闇、無の属性は他の属性と同時には目覚めなかった。だから、その三属性は特別扱いされていた。光は主に王族が、闇は主に悪役が、無は主人公の特権だったんだ。どれも、作中で重要な働きを見せていた。
フィリスが闇属性に興味を持ってくれたのも、特別性のおかげ。そう思うと、俺が闇属性に目覚めたことが、より幸運だと思えるな。ウェスの右腕を治せたのは、闇魔法のおかげ。それだけでも、十分だったんだが。
「まずは、俺の魔法を見せてやる。これが、闇の衣だ」
以前開発した、俺の体を闇の魔力で包む防御技を見せていく。フィリスは感心した様子だ。少し、気分が良くなるな。
「……なるほど。闇の魔力で体を守る。単純だけど、強力」
「どれだけ耐久性があるのか、試したかったところだ。最終的には、お前の全力に耐えてみせる」
フィリスは俺の言葉を受けて、闇の衣に向けて魔法を放ってくる。最初は弱く、だんだん強く。それでも、俺の防御はびくともしない。最強格の魔法使いの攻撃を受けても耐えられる。最高の気分だ。
「……驚嘆。これほど強力な防御なら、それは強いと言われる。なら、受けてみて。私の、五曜剣を」
五曜剣。原作での、フィリスの必殺技だ。五属性を収束した、魔力の刃。切れ味も最高だが、意図的に制御を失わせることで、大爆発を起こせる魔法でもある。だが、今までの手応えからすると、受けられるという自信がある。
まずは、フィリスは刃をそのまま俺の防御に向けて放つ。これは楽に受けられた。もう一度放たれる。今度は、俺に直撃する直前に、制御を手放したようだ。だが、俺の考えていた爆発と違い、指向性を持っている。俺にだけ向けられた、強力な爆発。
それでも、気合を入れて防御をすれば、なんとか耐えることができた。まあ、俺が死なない程度には手加減されていたのだろうが。
正直に言えば、結構ギリギリだった。だが、余裕なふりをする。普段から演技をしていないと、崩れてしまいそうな気がするからな。
「どうだ、受けきったぞ。お前の切り札より、俺の方が強い」
「……同意。攻撃は、まだ分からない。それでも、あなたは天才」
「じゃあ、俺の攻撃を見せてやるよ!」
さっき闇の衣で五曜剣を受けたことで、どういう構成の魔法か分かった。それを参考に、魔力で刃を生み出していく。相手の防御に使われる魔力を侵食するイメージと、収束した魔力を解放させるイメージとで。
一度放てば、キレイな刃として飛んでいった。フィリスが魔法で的を作ると、そこに向けてもう一度撃つ。魔力を突き抜ける感覚があって、これなら魔法による防御を防げるだろうという感覚があった。
そして、もう一度放っていく。今度は、爆発を真似した形で。狙った方向に爆発させることができて、フィリスの作った的は跡形も残っていなかった。
おそらく、今の俺にできる最高の攻撃だ。そして、フィリスを超える可能性が十分にあるものだ。名付けて、闇の刃だな。
「……感激。私の五曜剣を参考にした?」
「そうだな。この技で、俺はお前を完全に超えてやる」
「……楽しみ。レックス。あなたがどれほど強くなるのか、この目で確かめる」
表情も声も変わらないのに、目には力がこもっているのが一目で分かった。やはり、闇魔法に興味が尽きないのだろう。つまり、これからもフィリスに教えを受けることができる。最高だな。
それからもしばらく訓練を続けていると、メイドであるアリアたちが近づいてくる感覚があった。食事の用意だろうな。
「お食事ですよ、レックス様」
「ご、ご主人さまの師匠も食べてください」
「……レックスの魔力は、もう少し細かく制御できる」
フィリスは、アリアとウェスの言葉に全く反応していなかった。いくら闇魔法が面白いとは言っても、極端すぎる。周りが目に入っていないのか?
「おい、食事だぞ、フィリス」
言葉だけでは反応が帰ってこず、仕方なく肩を揺する。そうすることで、ようやくアリアとウェスを認識したみたいだ。俺は呆れたが、フィリスが本気である証でもある。感情としては、嬉しさもあった。
「……仕方ない。まずはご飯」
それから、フィリスたちと食事を進めていった。夕飯の時間まで、再び訓練をして、家族との食事に移る。
「流石は我が息子。フィリスですら驚嘆するほどの魔法が使えるらしいじゃないか」
「レックスちゃんの成長は素晴らしいですね。母として、誇りに思います」
「だからって、調子に乗らないことね」
「まあまあ、カミラ。弟の活躍を、喜んでやろうじゃないか」
「お兄様、私も魔法が使えるようになりたいな」
「兄さん、流石です。僕も、負けてはいられませんね」
家族での団欒の時間なのだろうが、俺としては心が休まらなかった。アリアやウェスと食べる時間が恋しくなってしまったほどだ。
まあ、それはいい。魔法はある程度形になった。これからも訓練を続けるが、どうせなら剣も覚えたいな。せっかく剣と魔法の世界に生まれたのだから。そんな思いが、俺の中で浮かび上がってきた。
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