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第4章 婚約の行方
44.アリアとクロードの話合い 後編
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彼女を見ると怒りを露わにしてこちらを見ていた。
「私はクロリが縁談で得ようとしている利益よりもはるかに上の条件を出しているのよ!それを断るだなんて身の程知らずよ!」
「…失礼ながらアリア様、私のメイナード家は確かに裕福な貴族ではありません。今回の話も十分に魅力的な話です」
「それなら!」
「ですが」
私はアリアの瞳を真っ直ぐに見た。
「クロリは物ではありません。…いくら逆らえぬ話が有ろうとも彼女の意思と関係ない所で勝手に決めたくはありません。それに仕える者は自分で主を決めますので」
「それって…」
私はアリアに向かって微笑むといつもの調子で話を続けた。
「ですので今回はクロリも縁談について前向きではあります。それに彼女が拒めばこちらも無理には進めません。」
そう言うとアリアは黙り込んで揺らめいているティーカップの水面を見ていた。
ーさすがに諦めただろうか
そう思い部屋を出ようとした時だった。
「分かりました。…クロリのことは諦めました。ですがメイナード卿、少しばかりお時間頂けますか?」
不気味なほどにアリアは私に微笑みかけると私を向かいに座らせるように促してきた。先ほどとは態度も貴族に対する物で非常に不気味だ。ここで断っては怪しまれる可能性もあり、私は大人しく彼女に付き合うことにした。
「それでもうお話しは終わったかと思いますが」
「まあ、クロリの件はそうですわね。ですが私、メイナード卿に是非ご覧になって頂きたいものがありますの」
彼女は再び紅茶を飲むと私にも紅茶を出すように侍女に指示した。しかし、これほど近くにクロリ・メイナードだった人物がいるというのに周りの侍女もアリアでさえも気付かないというのは鈍臭いのか、侍女達が仕事以外気が向かないのか真相は謎である。
そんなことを思いながらアリアの次の行動に目を光らせていた。アリアは席を立つと私の前にあの箱を持ってきた。箱を持ってくると周りの侍女達は外に待機するように命じていた。私とアリアの2人になった部屋は実に不気味そのものだった。静まり返った部屋でアリアは嬉しそうに話しかけてきた。
「こちら中に何が入ってるとお思いですか?」
「さあ、私には想像出来ないほど高価な宝かクリス王太子からの贈り物かでしょうか?」
「いいえ」
アリアはまた笑いながら話しを続けた。
「これは本物の宝が入った。宝箱ですわ。…私は気に入った相手にしかお見せしていないんです」
「それはそれは…」
「是非ご覧下さい」
アリアは宝箱を開けた。中には私がすり替えたあの黒い宝石が光っていた。
「これは美しい漆黒の宝石ですね」
「ええ、是非よく見て」
アリアはやたらと宝石を見るように促してきたが疑問を感じた。
ーまさかこれが闇魔法をかける際の手筈なのか
そんな考えが巡り、私は闇魔法のことなど知らないが正気ではない振りをした。勿論、頭の中は冴えているがアリアに勘づかれてはいけない。その為、黒い宝石を覗き込むとそのまま瞳の焦点を合わせず座り続けた。暫くするとアリアの口が開いた。
「今回も上手くいったかしら?…それでは、クロード・メイナード、今から言うことを…」
アリアは私の顔を自身の手で引き寄せ、瞳を離さなかった。
ーこれが闇魔法の命令なのか
そう思った瞬間、アリアの部屋の扉は勢いよく開かれた。
「アリア!メイナード卿に会う件、私は聞いていないぞ!」
そこに現れたのはクリス王太子だった。アリアは一つ溜息をつくとクリスの元へ歩いていった。私はその間に立ち上がり、彼等を見た。彼等の元に向かうと「私の要件は終わりましたので失礼します」とだけ告げた。アリアは私を引き止めたそうにしていたがクリスの手前、身動きが取れないようで黙ってこちらを見ていた。
ー早くリヒト様とアリス様の元へ
私は王宮を出ると急いで馬車を走らせた。
「私はクロリが縁談で得ようとしている利益よりもはるかに上の条件を出しているのよ!それを断るだなんて身の程知らずよ!」
「…失礼ながらアリア様、私のメイナード家は確かに裕福な貴族ではありません。今回の話も十分に魅力的な話です」
「それなら!」
「ですが」
私はアリアの瞳を真っ直ぐに見た。
「クロリは物ではありません。…いくら逆らえぬ話が有ろうとも彼女の意思と関係ない所で勝手に決めたくはありません。それに仕える者は自分で主を決めますので」
「それって…」
私はアリアに向かって微笑むといつもの調子で話を続けた。
「ですので今回はクロリも縁談について前向きではあります。それに彼女が拒めばこちらも無理には進めません。」
そう言うとアリアは黙り込んで揺らめいているティーカップの水面を見ていた。
ーさすがに諦めただろうか
そう思い部屋を出ようとした時だった。
「分かりました。…クロリのことは諦めました。ですがメイナード卿、少しばかりお時間頂けますか?」
不気味なほどにアリアは私に微笑みかけると私を向かいに座らせるように促してきた。先ほどとは態度も貴族に対する物で非常に不気味だ。ここで断っては怪しまれる可能性もあり、私は大人しく彼女に付き合うことにした。
「それでもうお話しは終わったかと思いますが」
「まあ、クロリの件はそうですわね。ですが私、メイナード卿に是非ご覧になって頂きたいものがありますの」
彼女は再び紅茶を飲むと私にも紅茶を出すように侍女に指示した。しかし、これほど近くにクロリ・メイナードだった人物がいるというのに周りの侍女もアリアでさえも気付かないというのは鈍臭いのか、侍女達が仕事以外気が向かないのか真相は謎である。
そんなことを思いながらアリアの次の行動に目を光らせていた。アリアは席を立つと私の前にあの箱を持ってきた。箱を持ってくると周りの侍女達は外に待機するように命じていた。私とアリアの2人になった部屋は実に不気味そのものだった。静まり返った部屋でアリアは嬉しそうに話しかけてきた。
「こちら中に何が入ってるとお思いですか?」
「さあ、私には想像出来ないほど高価な宝かクリス王太子からの贈り物かでしょうか?」
「いいえ」
アリアはまた笑いながら話しを続けた。
「これは本物の宝が入った。宝箱ですわ。…私は気に入った相手にしかお見せしていないんです」
「それはそれは…」
「是非ご覧下さい」
アリアは宝箱を開けた。中には私がすり替えたあの黒い宝石が光っていた。
「これは美しい漆黒の宝石ですね」
「ええ、是非よく見て」
アリアはやたらと宝石を見るように促してきたが疑問を感じた。
ーまさかこれが闇魔法をかける際の手筈なのか
そんな考えが巡り、私は闇魔法のことなど知らないが正気ではない振りをした。勿論、頭の中は冴えているがアリアに勘づかれてはいけない。その為、黒い宝石を覗き込むとそのまま瞳の焦点を合わせず座り続けた。暫くするとアリアの口が開いた。
「今回も上手くいったかしら?…それでは、クロード・メイナード、今から言うことを…」
アリアは私の顔を自身の手で引き寄せ、瞳を離さなかった。
ーこれが闇魔法の命令なのか
そう思った瞬間、アリアの部屋の扉は勢いよく開かれた。
「アリア!メイナード卿に会う件、私は聞いていないぞ!」
そこに現れたのはクリス王太子だった。アリアは一つ溜息をつくとクリスの元へ歩いていった。私はその間に立ち上がり、彼等を見た。彼等の元に向かうと「私の要件は終わりましたので失礼します」とだけ告げた。アリアは私を引き止めたそうにしていたがクリスの手前、身動きが取れないようで黙ってこちらを見ていた。
ー早くリヒト様とアリス様の元へ
私は王宮を出ると急いで馬車を走らせた。
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