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第2章 北の領土ノースジブル
9.アリアの陰謀
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「もうなんでこんなにやることが多いのかしら!」
私は侍女に身支度をさせながら王宮でやらなければいけないことの多さに愚痴を漏らしていた。その間も侍女は私の身支度を黙って進めていた。
「お姉様はもっと余裕に見えたのに…これでは遊ぶ暇もないじゃない!」
私は自分の近くに置いてあったヘアブラシを地面に投げつけた。
「ひっ」
「なによ」
一人の侍女が情けない声を上げた。
―ちょうどいい、今日はこの侍女で遊ぼう
私は悲鳴を上げた侍女のやることに全てケチをつけた。お茶がまずい、ドレスを着せる時の手際が悪い、歩き方が醜い、そう言うと侍女は泣きそうになりながら「申し訳ございません」と下を俯いた。ああ、この顔たまらない。侍女いじめを息抜きにしないと日頃の鬱憤を晴らせない。
「そういえば今日はサナはいないの?」
「アリアお嬢様、サナでしたら本日は非番でして…」
「そう?あの娘がいないと私の話し相手もいなくてつまらないわ」
サナは私の一番のお気に入りの侍女だ。私の専属でどんな私の言う事も否定せず、言いなりになってくれる。つまらなさを感じながら自室の窓から外を見た。
「あら?今日は何かあったかしら?」
私は屋敷の入口に貴族の馬車としては質素な馬車が止まっていることに気づいた。あのような馬車であれば爵位も高くないだろう。
「…あの、本日はアリスお嬢様が遊学に向かわれるとかで」
「お姉様がですって!私は聞いてないけど」
「私たちも詳しいことは知りませんが、なんでもノースジブル領から誘いがあったとかで…」
「ノースジブル領ですって」
ノースジブル領といえばラティア王国の自治領だが極寒の土地で国内といえどもほぼ外国のような場所だ。
―お姉様がノースジブル領に行く。ほぼ国外追加じゃない
「あはは!あはっ!」
突然笑いだした私に侍女達は驚いていた。
「可笑しいわ。お姉様は遂にラティア王国からも見捨てられたのね!あー、面白いわ!」
私は不意に冷静になって考えた。待って。ノースジブル領と言えばここからならあそこを通るはず。もしそこに『あの方』に頼んでお姉様を事故に見せかけて消すことが出来れば。私は侍女に紙とペンを持ってくように伝えた。
侍女が走って帰ると私を部屋に一人にするように伝え、侍女達を部屋の外に追い出した。
―お姉様、私から旅立ちの餞です
私は文字を書き終わると紙を折りたたみ息を吹きかけた。すると紙は黒い小鳥となり部屋の窓から飛び立った。きっとすぐに『あの方』に届くはず。『あの方』は私の望んだものを全て与えてくれる素晴らしい方だから。
私は高鳴る胸を抑えながら朗報を待つことにした。
私は侍女に身支度をさせながら王宮でやらなければいけないことの多さに愚痴を漏らしていた。その間も侍女は私の身支度を黙って進めていた。
「お姉様はもっと余裕に見えたのに…これでは遊ぶ暇もないじゃない!」
私は自分の近くに置いてあったヘアブラシを地面に投げつけた。
「ひっ」
「なによ」
一人の侍女が情けない声を上げた。
―ちょうどいい、今日はこの侍女で遊ぼう
私は悲鳴を上げた侍女のやることに全てケチをつけた。お茶がまずい、ドレスを着せる時の手際が悪い、歩き方が醜い、そう言うと侍女は泣きそうになりながら「申し訳ございません」と下を俯いた。ああ、この顔たまらない。侍女いじめを息抜きにしないと日頃の鬱憤を晴らせない。
「そういえば今日はサナはいないの?」
「アリアお嬢様、サナでしたら本日は非番でして…」
「そう?あの娘がいないと私の話し相手もいなくてつまらないわ」
サナは私の一番のお気に入りの侍女だ。私の専属でどんな私の言う事も否定せず、言いなりになってくれる。つまらなさを感じながら自室の窓から外を見た。
「あら?今日は何かあったかしら?」
私は屋敷の入口に貴族の馬車としては質素な馬車が止まっていることに気づいた。あのような馬車であれば爵位も高くないだろう。
「…あの、本日はアリスお嬢様が遊学に向かわれるとかで」
「お姉様がですって!私は聞いてないけど」
「私たちも詳しいことは知りませんが、なんでもノースジブル領から誘いがあったとかで…」
「ノースジブル領ですって」
ノースジブル領といえばラティア王国の自治領だが極寒の土地で国内といえどもほぼ外国のような場所だ。
―お姉様がノースジブル領に行く。ほぼ国外追加じゃない
「あはは!あはっ!」
突然笑いだした私に侍女達は驚いていた。
「可笑しいわ。お姉様は遂にラティア王国からも見捨てられたのね!あー、面白いわ!」
私は不意に冷静になって考えた。待って。ノースジブル領と言えばここからならあそこを通るはず。もしそこに『あの方』に頼んでお姉様を事故に見せかけて消すことが出来れば。私は侍女に紙とペンを持ってくように伝えた。
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―お姉様、私から旅立ちの餞です
私は文字を書き終わると紙を折りたたみ息を吹きかけた。すると紙は黒い小鳥となり部屋の窓から飛び立った。きっとすぐに『あの方』に届くはず。『あの方』は私の望んだものを全て与えてくれる素晴らしい方だから。
私は高鳴る胸を抑えながら朗報を待つことにした。
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